サプライ・チェーンのマネジメント
マーケティングや販売をするにおいて、製品が大量に余ったり、足りなかったりする現象は、暮らしの中で頻繁に起こっている。しかし、企業はこのような現象を好んで発生させているわけではなく、企業はマーケティングの実施に合わせて製品を安定供給するべく、サプライチェーン・マネジメント(SCM)に取り組んでいる。
マーケティング論において、製品を見るときには、消費者に求められるものという意味で「価値」に注目したり、企業が持つ資産としての「ブランド」に着目したりする。しかし、SCMという観点から製品を見ようとする時は、「在庫」という面から捉える必要がある。
在庫とは、倉庫や店頭にある製品のことを指し、それが製品本来の役割(消費者への便益の提供」以外に重要な役割を果たす。製品の生産と販売は、異なる時点で行われる。生産は計画的に行われる活動であるが、販売は移り気な消費者の購買行動に合わせて行われるため、双方の活動に時間的なズレが生じる。その中で在庫は、生産活動と販売活動をする人の間に存在し、双方の時間的なズレを調整する役割がある。これが、在庫の第1の役割である。
また、生産と販売の段階に在庫があると、それぞれに良い影響が現れる。まず販売側をみると、在庫がいつも店舗に置いてあれば、消費者が必要とするときに必要な製品を買ってもらえる。つまり、店舗に在庫があると、消費者の需要を効率よく吸収することができ、小売業者は品切れを発生させずに利益を上げることができる。また、生産側からしても、在庫があることで安定的に低コストでの生産をすることが可能となる。こうしてみると、在庫は生産と販売の間にあって消費者の需要を吸収し、需要変動が生産に影響しないように、クッション(緩衝材)の役割を果たしている。これが在庫の第2の役割である。
このように、倉庫や店舗で多くの在庫を保有しておくことが好ましいように思えるが、企業レベルで見た時には、在庫を保有することのリスクが存在する。
リスクの1つ目は、製品の価値(鮮度)が低下することである。製品が物理的に腐敗、劣化してしまうと、在庫を廃棄せざるを得ない。
リスクの2つ目は、マーケティングや競争の影響である。これは、時間の変化とともに、消費者の知覚する価値が変化することを意味する。消費者の価値観やニーズが変化したり、競合がさらに魅了的な商品を導入していた場合、在庫は「不良在庫」となってしまう。
このような在庫のリスクを回避するために、「在庫を削減」する必要がある。在庫を削減することによって、鮮度の高い製品を販売することができる。また、製品の切り替えがスムーズに行われるようになるため、製品の切り替えが頻繁に行われる菓子業界や、季節ごとに新製品を投入する化粧品業界やファッション業界では、在庫削減のメリットが大きい。