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【米国株】損切りできない症候群

2024年第一四半期の決算シーズンは終了しました。今回も注目銘柄の中で決算をしくじる銘柄が出てきました。

来期EPSガイダンスミス
来期EPSガイダンスミス
来期EPSガイダンスミス

DUOL・IOT・Sは売上高成長率+40%前後と高い数値を記録していた銘柄だけに決算ミスはショックでした。しかし、決算ミスはミスですので売却処分しました。

ここで投資初心者の多くが陥りがちな失敗は、銘柄への未練から損切りできず、ズルズルとホールドし続けるというものです。自分が期待して買っていた銘柄だけに、いざ損切りしなければならなくなった場合、躊躇してしまうのは自然です。しかし、そのまま決算ミスした銘柄をホールドし続けても利益が出る確率は極めて低いです。逆に損失を拡大し続ける可能性の方が高いです。ただ、現実では、頭では危険性を理解しているのに、なかなか損切りできないものです。

この損切りできない症状のメカニズムを明らかにすることで、その解消法も見えてきます。まず症状のメカニズムから説明します。

銘柄への未練の強さは、その銘柄への自身の期待の強さに正比例します。期待していた分、裏切られたときのショックも大きくなりますし、自身にとって不都合な現実を認めたくないという気持ちも強くなります。

すると、自身は「どうにかしてホールドし続けることを正当化できる理由」を強く欲します。長期的な成長ストーリーは崩れていない、ライバル企業よりも技術的に優れている、決算においてミスした項目以外の数字は良い、株価バリエーションは同業他社より安い、SNSでホールド意見の投稿がたくさんあった、、、などなど。

この時点で、思考は「ホールドをなんとか正当化できないか」ということでいっぱいになっています。そして、悪い決算なら即売りというルールを自分で歪め始めます。悪い決算を出しても株価が上がることがあるじゃないか、長期的には株価は上がってくる可能性は捨てきれない、有名インフルエンサーは問題ないと言っていた、、、とホールドを肯定するロジックを作り上げることによって。そして、損切りしないという判断を下すのです。

ここから先の展開は2パターンあります。

まず1つ目は、損切りしないでいた株が、その後に運良く株価が上がってしまった場合です。この場合、成功体験によって自身の中の投資ルールは完全に書き換わります。好決算の定義は「EPS・売上高・ガイダンスの項目が全て市場コンセンサス予想を上回る」→「数字を多少ミスしていても長期の成長ストーリーを崩す程でなければOK」になります。こうなると厄介です。誤った定義を他の銘柄にも当てはめるようになります。

元々、決算ミスした銘柄が株価がグダグダになる可能性は高いわけです。ですので、何回も繰り返すと必ずホールドし続けても株価が下がっていくという展開にぶち当たります。しかし、成功体験があるので、結局は株価は上がってくるはずだという認識ができてしまっています。こうなると、年単位で決算ミスした銘柄をホールドし続けることになります。そして、ある日気がつきます。やっぱり自分の考えは間違っていたのだと。その時には取り返しのつかない損失額、そして機会損失が発生しています。

営業支援ソフトを提供するセールスフォースは22年に大幅利上げを受けて暴落。23年は利上げ停止・AI期待で回復するも、好決算を出せず再び暴落。

CRMは23年株価が回復しました。ここで、「大型ハイテク株の成長ストーリーは崩れていない、だったら株価は戻ってくる」という認識が頭の中で出来上がってしまっていた場合、24年の株価下落を避けることはできませんでした。どうせ上がってくるだろうという認識のまま、悪い決算を出して暴落した株を持ち続けることになります。

2つ目のパターンは、損切りしなかった株がズルズルと下がっていく場合です。最初、存在していた、いずれ上がってくる、大丈夫だという認識も次第に揺らぎ始めます。投資家の心には自分が間違っていたのではないかという疑念が渦巻きます。しかし、損切りすべきタイミングよりも株価が下がっているので今更切るに切れません。自分の判断を肯定するためにSNSやネットなどでその銘柄を称賛するコメントを漁るようになります。その間も株価はズルズル下がっていきます。心が折れる頃には取り返しのつかない損失額になっています。

以上のようなメカニズムから、損切りできない症候群の解消法が見えてきます。

全ての発端は銘柄への未練です。未練が現状認識を歪め、投資ルールを歪め、大きな損失と機会損失を生むのです。未練を生むのは銘柄への期待です。ゆえに銘柄への期待など最初からしないことです。

今は、投資環境が良く、企業業績(決算)も良いのでホールドしているが、それらの買い理由が崩れればサヨナラする。そして、いつかはサヨナラしないといけない日が必ず来る。今はまだその日ではない、といういつでも切れるドライな認識でいることです。

また、銘柄への期待は視野を狭くしてしまいます。他にも儲けが期待できる銘柄はあるのに、それを探すことができなくなります。

例えば、

ダメになった銘柄に拘って他の投資チャンスを逃していては、何のために投資をしているのかわかりません。儲けを追求するために投資をしているのであって、自分が惚れた魅力的な投資ストーリーの銘柄に投資して悦に入ることが目的になってはいけないと思います。

①買った銘柄はいつかサヨナラする時が必ず来るという認識を持つこと。
②買い理由が崩れた場合は即サヨナラすること。
③魅力的な投資ストーリーの銘柄ではなく、その時その時で一番儲けが出やすい銘柄でPFを組むこと。
④ダメになった銘柄が出た場合、別の候補と入れ替えること。
⑤すぐに銘柄を入れ替えできるように、あらかじめ良い投資先を複数控えさせておくこと。

以上のポイントが損切りできない症候群には有効だと考えます。

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