如月遁走曲（2月のフーガ）

梅が咲いた。

なぜか一日だけ24度を超える日があって、ヒキガエルが大発生。
びっくりしてヒキガエルを立ち止まって見つめていたら、向こうから歩いてきたご婦人に「こっちにもっといますよ」といわれ「ええっ！」と悲鳴っぽい声をあげるハメになった。
20匹くらい道にまで出てきて、踏まないように注意深く歩くしかなかった。
翌日の寒さで、寒締めになってしまったやつも何匹かいて、かわいそうに。

梅は、着実に開花した。
こいつだけは的確に二月を過ごしている。

諸事情あって、一着しかないコートをクリーニングに出すことになった。
でもまだ寒い。早く帰ってきてほしい。

2月～3月は、実は牡蠣の旬だ。
あまり知られていないようだけれど、春先の牡蠣は産卵に向けてよく太り、とても味がのっておいしくなっている。
生牡蠣よりも焼いたり蒸したりしたものがとても美味しい。（生が悪いわけでもないけれど、とにかくそれ以上に美味しい）
牡蠣の養殖をしている広島出身の友人からいい牡蠣を買う事ができて、オイル漬けを作ることにした。

「よその牡蠣は水を飲ませているから、安いけどあんまりね。真水につけて牡蠣を膨らませるの。グラムいくらで売るから、水でカサをますと高くうれるでしょ。だからそういうのは火を通すと小さくなっちゃう。
うちのはそういうことしてないから、値段もトップクラスに高いんだけどね」

確かに、500ｇで3000円ほどで、クール便の送料を入れると4500円程度になる。安くはない。
でも、実際に火を通してみると、身はコロコロと丸みがあって縮まないし、味はいいし、オイル漬けなら少々日持ちもするので、結局スーパーで買うよりお得なんじゃないかなと思う。

安くはないから、たまの贅沢とこれからもおいしい牡蠣を作ってほしいので、ささやかな応援だけど。

春物の洋服が店頭に並んでいる。
ああ、そうだ靴を買わなくては。
それにしても、日が伸びましたね。

梅の花は、ほのかに花びらを散らす。
暗闇に煌々と香りを漂わせる。

白いコート、早く帰ってこないかな。

如月遁走曲は、もう少し続く。