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スタイルを作る・スタイルができる

自分のスタイルができてくるというのは、必ず試行錯誤と紆余曲折の後なのだなと思う。
なにもチャレンジしないでミニマリストになった人は本当にただの貧乏でつまらない人でしかないし(そういう状況でもそれっぽく取り繕おうというのがそもそもミニマリズムが好まれる理由でもある)、質より量を体験しないとできないことがたくさんある。

コロナ期に入ってからずっと睡眠薬を飲んでいたけれど、耐性がつくどころか逆に体内に薬が溜まって起きられないことが増えたので、ついに「薬でだるいより睡眠不足で眠い方がマシだ」と思って飲むのをやめた。
医者も「飲むのやめた方がだるくない?それは薬が影響してたかも」と言い出すので、最初の頃はあんなに強い薬を飲んでも割と平気だったのに、今はちょっと飲むだけで脳が働かない感じになるから、何かが変わったのだろう。

そして、なんとなく、ひとつのスタイルが固まってきた手応えが出てきた。

2020年頃、東京オリンピックがお流れになり、みんながステイホームしていたあたりから、トンネルを掘るようにまず自分が苦手だと思っていたファッションに取り組んだ。
プチプラで高見えコーデとか、おばさんに見えない垢抜けコーデとかじゃなくて、もうハイブランドやドメスティックブランド、モード系などなど、ザ・ファッション!という分野にチャレンジした。
ハイブランド、というにはあれだけ安くないブランドも実際買ってみたし、着てみた。

そこから、アートに幅を広げ、都内での大型展覧会で壁打ちしまくり、YouTubeでざっくり美術史から有名作品を押さえ、自分が楽しむコツをつかんでいき(これが結構大事で、有名だから観ておこうというのは楽しくないが、時代背景と画題を読めるようになるといきなり画面がリアルに動き出すのが絵画鑑賞の楽しさだと思う)、貯金をはたいてスイスのバーゼルまで見に行った。

で、次は手薄だったインテリアのほうに意識が向いた。
美術品を買って家に置くなら、置く場所のことを考えなくてはいけない。
ただの整理整頓収納というだけではどうしても追い付かない壁のようなものが存在していることはわかっていたけど、その透明な壁がどうしても見えなかった。
ところが、ひょんなことから、その壁が見え、その壁を越えることになった。

インテリアは、お仕着せのテイストをハリボテのように部屋の中に再現するのではなく、自分の生活に合わせて考えるべきであるが、テイストについてある程度理解しておかないとインテリアの買い物が迷走して金が減るし、部屋は惨めになるので、理解しないといけないというややこしい事がわかってきた。

インテリアは、大雑把にクラシックとモダンに分けられ、現代はモダンであり、モダンの建築にモダンの家具を入れるのが安くて早い。
クラシックは1920年代あたりが大きな節目になっていて(主にヨーロッパ主導で)、古い建物には古い時代の家具が合っている。が、それを持って世界中に移民したり植民地化していったりというスタイルによって各地にそれぞれの風土と文化が混じったスタイルができていった。
もちろん時代は現代モダンなわけだから、モダンから逃げることはできない。なので、文化文脈、風土、時代という背景があっての、今の私の住んでいる場所と建物と私の金の量でいろいろ決まっていくのだという、アウトラインがパーッと見えたわけです。

じゃあ、「私の」部屋の文化ってなんだろう。私が好きな文化芸術。
ここでお仕着せのテイストや種類から入るとコケる。インダストリアルだとか北欧風だとか、考えない方がいい。
だいたい北欧風って言って写真をあげている人たちはたいしてモノがない部屋に北欧メーカーの家具、大体椅子か照明を置いているだけ。金もないし部屋も広くないからそういう選択肢になってしまうし、口をそろえて月10万円でも豊かな暮らしとか言ってて、在宅で自由に働くとか言っている。オリジナリティはない。

が、逆にアンティーク家具に走ると、これはこれで重くて高くて困るので北欧系のブランドで10万円も出せば買える方がよっぽどお手頃価格になる。

ということで、いろいろおさまりが悪い中、上海アールデコという分野を見つけ、アジアンリゾートではないアジアとヨーロッパ文化の接点にあるひとつの様式が見つかった。

かといってそれをコピーすることはむずかしいし、コピーでは私の文化にはならない。部屋のコスプレはできるかもしれないけれど。
そんな中で、方向性を探っていく。

で、見つけたのは、北欧系ブランド家具のエントリーモデルともいえるアアルトのスツール60、の別注品で、濃い色に塗ったハニーという色にぐっと抑えた色のリノリウムを貼ったもの。色は黒とスモーキーブルーとで迷ったけど、ブルーに。通販なので現物が見れないし、特に色はむずかしいのだけど、ほかに購入した人がインスタにあげているものなどを探して全体の雰囲気をつかんで、選んだ。

stool60とWedgwood

同時に、すごく欲しかったのが、ウェッジウッドのシリーズ。旅行熱wanderlustという名前の、ヨーロッパがアジアなどの異国に憧れた思いをベースに作った柄で、強い色と派手なデザインがすごく欲しくてずっと見ていた。
が、とてつもなく気取ったティーセットに1.2万円だせるかというと、ちょっとなと思って。
でも、部屋のテーマというか、私が好きなもののテーマが「ヨーロッパの文化がアジアに入ってきた時」という場所にあるのだとしたら、ヨーロッパからの憧れ視線を具現化したものは羅針盤のように必要じゃないかと思って、セット割でお得なやつを買った。

それはそれでやはりすごかった。
皿の中に天地と東西南北がある。
絵皿がなぜ人気なのか、よくわかった。配膳の仕事をしていた時から皿の向きには厳しく言われていたけれど、絵皿で見るとほんとにそうだ。ランダムな絵柄に見えて、圧倒的に向きがある。絵の中に重力がある。

この力はすごくて、この2つがそろった時に部屋の方向性というか、私の中のスタイルの方向性がすとんと座りがよくなったような気がする。

IKEAの花瓶にミニ胡蝶蘭。これは濃い紫系の花

もうひとつ、部屋に小さい植物が一気に増えた。
もともと育てていた胡蝶蘭に加え、小さめのものを通販や花屋でぽつぽつと買い集めてしまった。100均出身のやつもいる。

中でもずっと育てている胡蝶蘭は、いろいろ考えてIKEAの花瓶に移動させた。口がすぼまっていておさまりがよく、迷ったけど大きさもぴったりだった。水栽培と空中栽培の中間みたいな感じで胡蝶蘭を育てる。
これもひとつの私のスタイルとして落ち着いてきた。
壁付けできるものもいくつかあるけど、それは今育て中。

胡蝶蘭も、なかなかアジアっぽいというかシノワズリというかなので、テーマに沿って考えると「花瓶をよくある青い染付の壺にしたらピッタリでは?」となって、ちょうど大きめの胡蝶蘭が葉っぱの重さで倒れることが増えたので、低くて口が少し広めの壺に入れなくてはという流れもあって、シノワズリかつモダンな胡蝶蘭が仕立てられるのではないかと思っている。
(ちょうどよさそうな古物の壺をヤフオクで落とした)

租界
上海アールデコ
アジアに憧れるヨーロッパ
ヨーロッパを格好よく取り入れるアジア
新しい価値観が生まれて混沌としつつ、新しいカッコよさや美しさで圧倒する存在が出てくる

そういう空気感。
そういう文化文脈と芸術。


そういうことを考えていて、やっと部屋のテーマカラーやテイストが決まるわけだから、パッとお好みでフレンチシック(といいつつ英国アンティークを置く)だの北欧ナチュラル(といいつつ無印しかない)だのというのは、そもそもが滑っちゃっている。
やっと根っこが定まってきて、そこから色や雰囲気へ。

ということでまだまだ全然です。
片付けも終わってないし。
でも、いいインテリアにするにはどうしても掃除が必須なので、お掃除ロボットがしょっちゅう走っている。前はこんなに頻繁に走らせなかったのだから、変化は大きいです。

着るもの、身につけるもの、髪型や化粧、アクセサリー。
好みのアートやエンタメ。
そして部屋を再構成する力。
知識、選択眼、金!実際にレイアウトしたり、スタイリングするセンス。
そういうのが、徐々に我が身に出てきている。

結果として、部屋ができる。
まだまだだなって思う。

つよく生きていきたい。