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奄美大島ひとり旅レンタカーなし(アマミノクロウサギ編)

環境破壊とかに意識が向いていた母のせいで、絶滅危惧種についてやたら心配する変な子供時代でした。
人間とはかくのごとく愚かで罪深いものだというのが母の人間観で、それを子供にも何かとアピールする、大学ではインド哲学を専攻していた今で言えばこじらせ系です。自然に優しい人は人に厳しい。

時代も時代で環境破壊についてもっと学んで将来の為に!みたいな圧力が強い時代でしたね。大人になる頃には石油はもうそこを突いていると言われていました。まだあるっぽいけどね。
オゾンホールも拡大してみんな皮膚がんで死ぬって言われてました。ノストラダムスも信じられていました。

そんな子供時代のスターは絶滅危惧種のアマミノクロウサギです。
という歪んだ子供時代を回収するために!私はバニラエアに乗ったのです。

私が「アマミノクロウサギに会いたい」といっても友人たちは「ウサギ?」という反応が多かったのですが、私にとっては幻の動物!

アーケード街のスーパーで売ってたコップのふちアマミノクロウサギ。箱には
\絶滅なんてしないもん/
と書かれているんですが、そんなに露骨に生殖活動しなくてもいいんじゃないのかと思ったりしたんですけど。あまりの面白さに2個買っちゃった。会えますようにという祈願です。

アマミノクロウサギは夜行性なのでナイトツアーへの申し込みが必須です。一般人が山に行ったからって見れるわけないです。それと夜はハブのターン!
「噛まれるとどうなるんですか?」
「死にます」
何回かこの会話を聞きました。
「すぐ関節を縛って毒が回らないようにしないといけないです」
とにかくガイドなしで奄美の山に入るのはムリです。

今回のツアーは全部で3人だったので、軽自動車で山の方へ向かいました。

動物だけじゃなくて、植物もいろいろ見れます。これはモダマという世界最大の豆!

小学生の子供の背丈くらいの豆がぶら下がっています。
もっと大きいのもあるらしい。

新種の蘭を見つけて今度環境省の人ともう一度確認に行くみたいな事も聞いたのですが、生えているのはコンクリで固めた山肌で、「この種類はいつもは黄色い花が咲くキバナなのに、白いのが咲いてたんですよ」といわれても、そりゃあわかりません。

ヒカゲヘゴというゴジラのロケ地として有名な巨大なシダもわさわさ、観葉植物で売っているクワズイモもつやっつやの葉っぱでわさわさ生えてます。
「これ結構高く売ってるんでしょ?」
そうそう、1鉢1万円とかする。

この日はあまいたくさん種類が見れなかったのだけど、リュウキュウコノハズク↓↓ 画像の真ん中あたりにいます!小型のフクロウ。

「なんで後ろむいているの!」「こっちむいて」「こっちむいてー」とアイドルに手を振る人々のような感じです。動画のほうがよく録れました。

それからアマミヤマシギという飛ぶのがへたくそなシギも見れました。
土の中のミミズなどを食べるのでくちばしがストロー状なのだとか。
飛ぶのがへたくそすぎて、枝にとまるのかと思ったら届かずにばさばさと落ちていきました……
もうちょっと頑張ってほしい。


そして、ついに、アマミノクロウサギがでてきました!!!

動画でご覧ください。クワズイモの葉っぱの下から崖を上にのぼっていきます。

丸っこい黒いウサギです。

尻尾はとっても短く、爪が大きいそうです。光が当たると目が赤く光ります。
耳は短く、たまに鳴くらしいけど、そこまではムリでした。
ちょうど子育てシーズンらしく、もしかしたら子ウサギもいるかもしれないという事だったけど、目撃したのは大人のウサギ。
全部で3匹みました。

その日は見れなかったけど、カエルもたくさんいるそうです。ほかの場所で録音したカエルの鳴き声。録音したのは夜です。

星が落ちてきそうなほど大きく明るく、ちょうど新月の前の時期だったので大変よく見えました。
でもすぐに曇って雪っぽいのがチラついたりしていました。
「観測所で雪が降ったと認定されないと降雪にならないんだけど、山の上は奄美でも結構降るんだよ」
南の島まで来て雪に降られるのか。豪雪地帯生まれの業だろうか。

動物も満月だとあまり出てこないらしいので、いい時期です。

ただ草刈りされていて、いつものウサギルートがどうやら草がなかったり刈った草を捨てられてたりしてなかなか出てこなかったみたいです。
それでも会えたよ、ウサギ!

寒いのでカエルは見れませんでした。ガイドさんは「ヒメハブくらい出てくれてもいいのになあ」と何回も言っていましたが、ハブか……。でも見たら見たで感動すると思う。


そんなこんなで、わたしの子供時代からのアマミノクロウサギの幻は、実物の野生のアマミノクロウサギを見る事で回収されたのでした。

とても不思議な感じがします。

「本当にいるんだー!」というだけで、もう十分なのです。
本で読んでいただけではわからないというか、現実にいるかどうかを確かめる必要なんて全然なかったんだけど、それを見てみたいと思って見にいってみることができたというのは、本当に子供時代の幻の回収と決着という感じでした。

回収したからってどうってもんでもないんですが、幻だと思っていたものがけして幻ではなかったという事だけでも、自分の認知している世界がググッと重みを増すような感じがするのです。


さよなら私のファントムブラックラビット。

今夜も奄美の山の奥では真っ暗闇の中をウサギが崖を上っているのだろう。空には星が溢れんばかりに光っているのだろう。古代からほとんど進化をしていないアマミノクロウサギは、今日も穴を掘っているはずだ。

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つよく生きていきたい。