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微笑むだけで人を操る

イベントコンパニオンをしていた時期がある。
受付嬢とかイベント運営とかと兼用というか、現場に飛ばされては「ここはコンパニオン現場」みたいな感じで。

大抵、私はお堅いイベント(学会の受付とか)に回された。
大きな会場でにっこり笑って座席案内とか、受付でにっこり笑ってお名刺を頂くとか、そんな感じ。

その時に知ったのだけど、人間は目線とわずかなしぐさである程度操ることができる。

特に、何の意思もなく会場に入ってきた人を笑顔だけで右にいかせるか、左に行かせるか、なんて簡単なもんだ。

まず、相手の目を見て特上の笑顔を見せてにっこりとゆっくり笑う。
ここで相手に「笑っている」と理解してもらえるようゆっくり笑う。最初から笑顔で出迎えるより効く気がしている。
そうすると大抵一瞬相手はこっちを見る。一瞬目があったら、その人をいかせたい方向に視線をスッと動かす。同時に体の向きもわずかにそちらに傾ける。
それだけで、大体その人はそっちに行く。

人間は、相手の見ているものが何なのか確かめたくなる習性があるようだ。
そして方向をちょっと示すだけでそっちに注意が向く。
会場で席を探しているという状況になればそれが必然的にそっちにむいた方向で席を探す事になる。
「後ろの席に座らせないで」といわれたら、それより後ろに座ってほしくない席に立ちはだかるように立って、あとは入り口を向いて視線と身体の向きでキーマンを2,3人振り分けてしまえば、あとは勝手に人の流れが出来上がる。

チョロいもんである。

全員が絶対必ず思い通りに動く事はないので、まあやってみて損はないかなレベルだけど、けっこう簡単に思い通りにいってしまう。

人間は些細なサインで動いている。
そこをただよくみて、その流れの部分で自分が整えられるところがないか探すだけだ。

特に男性は、若くてセックスアピールの強い女性は「頭が悪いはずだ」と思い込んでいるふしがある。
SNSマーケティングがべらぼうに的確だったグラビアアイドルとか、新聞記者も務めたセクシー女優とか、そういう人がいると本当に目玉を落とさんばかりに驚く。本当に驚く。
それは「見た目の良さやセクシーな技術を持っている女は頭が悪い」と本気で思っているからだ。
だけど、現場に行ってよく働いているのは、頭のいい才能があるひとばっかりだった。(まあたまにはちょっとあの子どうなのって子もいたけど)

お飾りとしての美女を演じきっているきれいなコンパニオンちゃんも、現場に呼ばれる子は猛烈にセンスがいい。
それが頭の良さの場合も、身体的センスの場合も、コミュニケーション能力のずば抜けた高さや圧倒的な表現力という事もある。

そういうお飾りの美女やセクシーな女の子たちに思った以上にあっさりと自分がわかりもしないところでコロッと動かされてしまっているという事がよくあるのです。(別に美女とは限らないけども)

人はいつでも自分が選んだと思いたいし、特に男性はその傾向が強めに出る。
(女性は背中を押してほしがるアピールがちょっと強い傾向はある。自分が買ったもののいい口コミをあとから必死で集めたりして)

その自分が選んだというものは、実は巧妙に「選ばされた」ものである方が圧倒的に多い。あまり気づいていないけれど。

特に超能力のない私だって微笑みひとつで会場の人の流れをピタッと思い通りにできるのだから。


小さな力を侮ってはいけない。
意識にも残っていない、顔も名前も知らない女の笑顔だけで自分が思うように操られていた事なんて、意識にも上ってこない。そういうふうに、日々動かされているのだ。私たちは、誰かに。

そして、その操る側の意識に立った時、それをさっさと手放さないと、いきつくのは「操りたい」という気持ちに操られた抜け殻みたいなものになってしまう。

だが、微笑みひとつで人は操れる。
とても簡単なことだ。

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