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私の魂がわたしを結婚させなかった

ディズニーシーでプロポーズされた事はありますか?

――――――私はあります。


結婚のチャンスは確かにあった。何度かあった。
それぞれに違う人だったけれども。

それでも、わたしは結局、そういう事に舵を切ることができなかった。

結婚はしたかった、人並みに。

と、表向きには思っていた。

実際のところ、わたしを動かしている私の魂は、わたしを結婚させる気はさらさらなかったらしい。
「結婚しよう」といわれて、それっきり私は言葉を発することができなくなって黙って帰った。

そんなに嫌だったらしい。

私の魂は、わたしのいう事なんて聞きやしない。
いくら「結婚したほうがいいよ、常識的に考えて」とか「正社員でどっかに就職したほうがさあ」とか、そういうことを全部断ってくる。
それで苦労するのは私なんだぞ、わたしの魂。
お前の乗り物が苦労する事になるんだぞ。
それなのに、どうしてそういう無理を言うんだ。

私は、誰の為に生きているんだこの野郎。

わたしの魂は言葉を発しない。
何も言わない。
コミュニケーションも取れない。
ただ、いる。いやがる。

たまに、恐ろしいほどの熱量でわたしを動かすことがあるが、大抵は何もしない。

YESともNOとも言わない。

気を付けろとか、そっちがいいぞ、とも言わない。

それなのに、「そこにいてはいけない場所」であるときはどんな手を使ってでも動かしてくるし、「そっちにいけ」という時は問答無用で突き落としにくる。

私と私の魂が一緒になった時は、とても数が少ないけれども、わたしにはいくべき道が全部見えていたし障害物も透明に見えたし、人の声も必要なものだけが聞こえて不要なものは本当に音量が小さくなった。
やる事の結果が最初からわかっていたし、自分が苦しむこともどうでもよかった。楽しむこともどうでもよかった。感動はなく、答えとルートだけがはっきりとわかっていて、それは「どの懸賞にあたるか」までピタッとわかるくらいに勘が冴えに冴えまくっていた。

だが、魂と一緒に生きるというのは、身体にはものすごい負担になる気がする。

その期間を過ぎた後、半年くらい動けなかった。

魂のやつは、わたしの事をどう思っているのだろうか。
私はとても厄介な存在だけど、やっぱり一番頼れるのはヤツだけだし、奴以上の存在は私にはないし、思えばそいつの望むように生きてやりたかった。

今は、魂の望むように生きているだろうか。
半分そうだし、半分は全然違っている気がする。まだこんなもんじゃない、みたいな感じ。

魂よ、結婚とかもうそういう事、いいから。
私そういうのなくても大丈夫になったし、今は会社に行かずに家でゴロゴロしているだけでもお金入ってくるようになったし、煩わしい家族も友達もいなくてすごく幸せになった。
あんたがずっと守って導いてくれたところに来ている。

だから、あんたのいきたいところにいこうじゃないか?

私の肉体という、ポンコツな乗り物がある。

わたし、今生はもうあんたと一緒にいく事にしたよ。
ただ私の魂の為にあろうじゃないか。
これってある意味すげーロックな在り方だと思うんだけど、どうだい。

答えはないが、いつものことだ。

すごい厄介で、てこずった私の魂とわたしが和解する日は、魂自身は望んでいないのかもしれない。
「好きにしていろ」とあいつは言っていそうだ。
その割に、結婚は全力で止めにくるのなんでだ。

魂のない生き方は、魂の死だ。
あいつはそれが嫌なんだろう。
肉体と意識だけがあるわたしと、わたしの魂。

分かり合えないが、永遠に共にあり、最もわたしを愛し、導こうとする。
こいつのおかげで、本当に私は大変だったんだよ!
ディズニーシーのプロポーズもパアだ!

それでも、結婚していたらどうなっていたのか、ほんのり想像はつく。いや、すごく幸せになった可能性もあるけど、私自身は静かに存在を失って肉体だけになっていった可能性は感じている。
(でもすごく幸せに暮らしていた可能性もやっぱりあると思うけど)

理屈とか、ほんとどうでもいいのだ、奴は。

わたしを結婚させないわたしの魂。
今になって思うのは、まあまあわたしもあんたの事を愛している。

絶対にわたしのいう事なんて聞かないけれども。

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つよく生きていきたい。