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「お客」と「価格」の方程式

とあるコスメ(化粧品)の公式インスタグラムを見ていたら、とんでもないお説教コメントがついていて、ひょえーーってなった。

長文だったけど、内容をまとめると、急に新色コスメを出します!という投稿に対して、たぶんそれが欲しかったんだけど別のを先に買ってしまって(ここは私の想像)、憎くて憎くて、「もっとちゃんと告知を順序だててすべきじゃないですか?」と激おこ。

その商品、2000円くらいなんですよね。
化粧品もプチプラといわれる価格帯。

これを見て、「たった2000円くらいの商品なんだからもう一個買えばいいのに!」という気持ちと「もう一個買うこともできない中で真剣に選んだ結果を裏切られたと感じる気持ちはわかるよ」という気持ちと「それはあなたの都合であって、お店の都合はパーフェクトにすべての人に対応できないんだよね、そこらへんわかってないよね」という気持ちが、三方向からぐわーっとやってきました。

ここでわかるのが、お客の層と価格帯の方程式。

特に最悪なのが「熱狂的なファン」「プチプラ」は、運営側に死人が出てもしょうがない地獄が形成されます。
安いという事は、どこかで搾取が起きているんですよ。
それは人件費かもしれないし、原料費かもしれない、製造工程かもしれない。が、とにかく搾取が起きがち。
(たまに高価格なのに原料も人件費もケチりまくって利益を大幅に上げようとする悪辣なケースもあるけど、プチプラ価格のほうが搾取の範囲が広いのは間違いない)

今回のケースは熱狂的なファンのいるヘアメイクアップアーティストのブランドで、プチプラコスメ。
プチプラといっても貧乏人には2000円も出せないのはよくわかる。
プチプラ価格は貧乏人を集めてしまいます。
これが高級品だと感じるほどの貧乏な状況の人も集まってしまうのです!

これが1個8000円もするアイシャドウを売っているなら、お客さんはある程度貧乏人をふるいにかけることができます。
金持ちは金持ちで気難しいのかというと、数千円ぐらいで揺らぐようなひとは金持ちといいません………。これは金銭感覚という事ではなくて、数千円を失ったことで大勢に異常はないという事です。無礼をされたら怒るけど、それは100円でも5万円でも同じこと……。金持ち喧嘩せずってほんとだな!って思います。
もちろんクレームはないわけないんだけど、母数がプチプラより圧倒的に少ないし、こちらに落ち度のないお怒りは実に少ないと思われます…。こっちが悪ければ謝ればいいけど、理由もなく(あるいはこちらの責任の範囲外のことまで)ケチをつけられ謝罪を要求されるのはちょっと違うんですけど、プチプラで熱狂的なファンがいるとそういう見当違いなことが起きまくります。

金のない熱狂的なファンの存在は、とってもひどい状況を作り出してしまいます。簡単にリスカするやつが2~3人は出ます。すぐに鬱になったり、躁状態で最初にあるような書き込みをしたりしちゃいます。

何を大げさなと思うかもしれませんが、最近SNSの誹謗中傷で落命した人のニュースは大きく報じられていますし、自営業でちょっとした商売をしている人たちは大体そういう地獄のひとつやふたつ、よくある話です。

ちゃんと資本があってある程度コントロールができる場合は、プチプラで熱狂的なファンがいるというのは大きく売上を跳ねさせるので、非常に成功しているといえます。
が、普通の、たいして金のない自営業レベルがそれをやるのは、そこそこ地獄。toCは基本的に地獄になりやすい。わかってやる覚悟は必要かもしれない。

ただ貧乏出身だと、貧乏の世界しか知らないし、貧乏人に対して誠実であろうとしちゃうんだよね!わかる!
貧乏人は自分が誰かを搾取していることに気が付かないんだよね。自分がずっと搾取されていることにも気が付かないことの裏返しでもあるんだけど…。

搾取しない・搾取されないというのを私はビジネスの課題として持っているけど、これはほんとにむずかしい。

価格をプチプラにすると簡単に地獄になるという事は、ビジネスをする人にはとにかく知っておいてほしいことです。
あとお客さんが全員正常な精神状態にあるとは限らないという事も。
特にクリエイター界隈というか、手作り作家界隈はもうすぐにリスカします。ファンもクリエイターも、どっちもです。
あと音楽まわりも多い!常に適切なケアが必要……。
(私はそういう界隈じゃないけど、お話はたくさん聞きます)
わたしは「別に生きている意味は特にない」という状態だからビジネスやれています。ビジネス以外に生きている意味は特にありません。けしてよい精神状態じゃないのは十分わかってますとも。

運営側に資金力がある場合、お客さんにもお金があることを想定していることが多いから、「金払いのいい客」と「程よくリーズナブル価格」というのはまあまあです。でも想定外の貧乏な客が来ることもあるから、そこら辺のケアとサービスが行き届くかどうかは、よく考えておかないといけない。

売り手もお客もお金持ち、という場合は、よほど変なことをしない限り安泰です。だからこそ老舗になれるわけです。
有名なジュエリーブランドなどは庶民もがんばれば買えますが(10万円は持っていこうね!)、それらはジュエラーからするとお情けです。本職はもっと攻めたデザインで、王侯貴族や石油王がメインのお客だからです。なのに一般庶民にも門戸を開けてくれている……それでちゃんと稼いでいるという面もあるのですが、気位の高いブランドは庶民に門戸を開けることさえしません。ガチの皇室御用達ブランドは絶対に名前を出さない!出すといろいろ差しさわりがあるのだそうです……。

こんなふうに、お客さんの金払いのよさと価格によって、見えてくる景色が全然ちがってしまうのは、実は長くビジネスやっていても気が付かないできちゃう人結構多いんじゃないかと思う。
自分の世界しか知らないから。

10万円くらいのものを扱うようになって、「それは最低価格ね」というクラスの先生方のお話を勉強として聞いたりしていると、どうやら貧乏人出身の私とはお金の感覚が全く違うんだなという事はよくわかります。
彼らにとって「お金が減る」って感覚がとても乏しいんですよね。「お金は減るようなものではない」「常にある」。
お金と商品を取り換えるんじゃなくて、商品をもらえるくらいの感覚。

なんというか、お金を払うのは、ちょっとした挨拶みたいな。
「ちゃんと挨拶のできない人間になってはいけません」みたいなレベル。
人間としてちゃんと挨拶ができるのは大事なことだから、くらいな感じでお金払っていく。
貧乏な時のケチってケチってなんとかあれこれ工面する感じは皆無です。
使ったら減るという感じも、こいつらが私の金を巻き上げる!という被害者感情も当然ながら全くありません。

そういうお金に不自由のない人なら健康で何の問題もないのかというとそんなことはなくて、自己顕示欲に縛られていたり、人生がつまらなくて他人にちょっかい出したり、自分で何か成し遂げた自信を持てなくて浮ついていたりと、普通に問題は起きています。

ただ、貧乏な状態よりはずっといいと思う。

自分に自信がない人ほど、それなりにちゃんとした価格の商売をしないといけないと思う。じゃないとお客さんに搾取され、思いもよらないビジネス以外の場面のプレッシャーが山ほど生み出されてしまう可能性はとても高い。
価格が高いビジネスはむずかしいけれど、安過ぎると地獄なことは知っていてほしいと思う。が、この地獄はなくなりません。なるべく早くそこから脱出する方法を見つけることを祈っています。

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つよく生きていきたい。