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ワークスタイルが似合わない

ファッションのテイストで似合わないやつがある。
ワークスタイルだ。

カーゴパンツ、ジーンズ、そして最も似合わないのがつなぎ(オールインワン)。
オールインワンをカッコよくセンシュアルに着てパーティーへ、みたいなのは、まず無理。完璧にバックヤードかパドック風味が出る。
小さいキラキラバッグじゃなくて、スパナとか、枝切りばさみとか、少なくとも3Mの重量用ガムテとかをバングルみたいに手首につけてそう。

似合うファッションのテイストは、意外とまあなんでも着れるっていう場合は、「これはまじで似合わない」から攻める方がとっかかりが得やすい。

ワークスタイルは、本気のワークマン(吉幾三時代)はファッションとしては間違っていて、カッコよくファッショナブルにならないとダメだ。本気でバックヤードの人になっちゃうと、ファッションにはならない。作業着。

逆に、スーツを着ると詐欺師に見えるタイプは、スーツみたいなフォーマル寄りのファッションが似合わないってことなんだろうなと思う。
でもこれもまた才能だと思う。役者さんがチンピラ役をやる時に、スーツを着ていてもアウトローの気配、見るからに信用できない気配を出すのを見ると、もちろんしぐさ表情もそうなんだけど、スーツのような固い服を着心地わるそうに振る舞ったりしているのが伝わってくる。
スーパーエリート役も固くて厚みのあるスーツを着ているが、彼らはその固さで背骨を支えるような、そのおかげでしゃんと立ってますみたいな、スーツへの信頼感みたいなものがにじむので、硬い服そのものがどうこうじゃなくて、その固さ・硬さを自分がどう扱うのかなんだろうなと思う。

で、なぜ私がワークスタイルが似合わないのか。

体型や顔立ちという表面的なことは大きい。小柄で女性の体型というだけで、大きな服は扱いずらい。
小さいからだというのは、面積が小さいということだ。
そこに、全面同じ素材で覆うと、その狭さが際立ってしまう。ちんまり見える。手足はさらに短く見え、寸胴でちまちま見える。

そういうせいか、私はワンピースもいまいち好きじゃない。
着物は帯がいい仕事をするのでいいんだけど。

そして何より、ワークスタイルがおしゃれにならないのだ。
仕事は仕事、裏方は顔を出さないのが最上の仕事、みたいな、そういう感じ。
表に出る時は表に出る服を着る。
受付の仕事の時は制服があって、その現場ごとに雰囲気に合わせた制服がチョイスされていて、それさえきちゃえば誰でも完璧に仕事ができるもんだと思っていたが、私は中でも制服がめちゃくちゃ似合うタイプだった。制服さえきちゃえばみんなニコニコ。お客さんもクライアントも本社の人も。そのくらい威力があったが、それは私が制服的制度が高い人間だったからというは、あとから気が付いた。

それは体型だけの問題ではない。

板につく、という表現があるけど、それ。
適性と、板につくというのは、微妙に違う話らしい。
適性があって板についていたのが受付の制服。

モード系はどうなのかというと、制服のもつ「作られた」感じがあるので、私はモード系の服とは相性がいいっぽい気がする。
逆にワーク系がベースだったり思想に入っていると、ちょっとむずかしい。

マルジェラのタビブーツはモードの結晶みたいな感じで扱われているけど、あれはさあ……日本の伝統的なワークシューズなんだよねガチの。
地下足袋。土方のおっさんたちが仕事してる時に履いてる。大工も。とにかく体を使うパワー系のワークシューズ。
モードでもワークが入ってくると、その割合にもよるけど、扱いが難しくなる。

ワークスタイルが似合わない。

ワークとスポーツも、身体を動かすという意味では似ているけど系統はかなり違う。ワークとスポーツとアウトドア、それも系統が違う。
どれもあんまり似合わない。ワーク、アウトドア、スポーツの順で似合わない。

かといってガチガチに真面目スタイルにすると、急に就活生みたいな貧相さが出てくる。ここもむずかしい。
華やかさがあった方がいい。質素はダメ。
が、盛り過ぎも厳しい。サンバカーニバルや成人式みたいなのは装飾が重くなり過ぎる。

なんというか、私は身に着けるものをそのまま表現できてしまう身体を持っているのかもしれない。

知人にどんだけ派手なものを身につけてもスルーッと馴染んで、どれだけ大きなピアスをしていても気づかれないという人がいるが、私はちょっと逆に位置する。
身に着けたものがそのまま存在する。
ワークスタイルは働く人になる。マジ服に対して素直。

そういうタイプはTPOから入るのが向いているのかもなと思う。
服を着るのではなく、その場面の小道具としての衣装を取る。

どういう空間でどういう生き方をしたいか、どういうドラマなのかを考えて、それに合わせて選ぶ。

でもこれはまた人生経験と適切な服選びができなければ無理な話で。
こういうのをそつなくやろうとしている人は、そういうのが専門のスタイリストに作ってもらう方がいいし、スタイリストに頼む金がないならその分自分で服を買って出かけるしかない。
金がある人の買い物の仕方と金のない人の買い物の仕方は違うんだよね。

(ちなみに大富豪のお金の使い方を真似ようというのが貧乏人にも人気だけど、あいつらの金の使い方に学べるものなんてないです!あいつらは、金なんか使っても減らない世界にいるので……。自動車買っても貯金が減らないんだよ……家賃払うので悲鳴を上げている人が真似したらダメだ)

(貧乏人には貧乏人の正しい金の使い方があるし、それをしたら確実に上がれる)

服を選ぶことは、どう生きるかを選ぶこと。
その意味が、やっと分かり始めている。
服を選ぶなんて余裕もなかった日々から、ここまで。

ワークスタイルが似合わなくても、働く。

いきる。
それがむずかしい事でも。
いい服を着ていれば、生きるのは結構いいものだとおもうから。

つよく生きていきたい。