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とある披露宴のゲスト席側顛末書

かつて働いていた会社で目の前の席に座っていた方が結婚披露宴を開かれました。

まさかお招き頂くとは思っていなかったので、驚きました。

誰もがうらやむ華々しいキャリア(東大法学部→新卒マッキンゼー)と、誰もが口をそろえて「彼は頭がいい、良すぎるくらいだ」という明晰な頭脳、それでいて誰にでも解禁を開かせるフレンドリーさと優しさ。
運動もできて、ピアノも弾き……
しかし、絵に描いたような派手好きな新郎(今までの華々しいほめ言葉が全部が無に返るほどのパンチが効いた派手好き)。

これがひな壇↑。ひな壇と言っていいのだろうか。
写真には写ってませんが、スモークでもわもわです。
ゲスト席はもう乾杯をはじめる前からちょろちょろと飲み始めていて、白いピアノを眺めながら
「ディナーショーかな?」
「むしろプロレスかも」
「あのバンドステージはなんなの」
と言いたい放題。

会場は熱気満ちる太古の森みたいなイメージのディスプレーで、もう受付の時点でかなりお腹いっぱい、帰りたい。

そして先付の前菜がこの苔玉……
同じテーブルの人と「まさか食べられるとか?」「いやいや味見してみてくださいよ」「またまたw」なんて言っていたら、ほんとに食べられた。
中はオマール海老、まわりに生ハムとジャガイモで、あおさ海苔をまぶして苔玉仕上げ。

苔玉食う人。
「この木の枝は……食えないか…」
「お試しになります?」
「遠慮しておきます」

新郎は先頃、高級男性用下着メーカーの社長に就任されたので、パンツのファッションショー。もうパンツっていうか、男裸祭り。ヒュー!

ガッチリ派からソフト体型まで幅広いモデルのチョイスをしたとのことで、やたらテンション上がる私ほか女子の皆さん。

引き出物にも男性用下着が入っておりまして、ベスポジ保証の立体裁断だそうで、残念ながら持たざるものの私には自慢の立体裁断部分は虚しいだけですが、「女性も肌触りのよさから履いてる人もいるんですよ」と新郎の談。

なんかもうね、300人着席の披露宴なんていまどき少ないです。
とりあえず飲んでおけみたいな感じで思った以上に飲んでしまい、目の前の人(何度かパーティであったことがある)と「あなたと私にはなにもなかったですけど、なにもなかったことを証明するのは難しいです。ご記憶にないでしょうけども」という、すでに彼との間では定番のやり取りをする。
(一年くらい前に「飲むと記憶なくすんですね」と私が言ったら「僕なにかしましたか」と言ってきたのは彼である。そもそもなにもないですし、あったらこんな話はしませんよ。ただあちらはすぐ手をつなごうとしてくる帰国子女なので身に覚えがある経験でもあるんでしょうな…)

かなり知っている方も多い会場でしたが、ご友人の多さは本当に彼のお人柄と慕われていることがよくわかる披露宴でした。

そして、その中で私がかなりイロモノキャラポジションとして認識されていることを知り、それなりにショックでした……。
「彼女はすごい、天才」
「なかなかいない」
「メンヘラでFacebookに死にたいって3日に一度は書いてる」

安心してください、生きてますよ。まだ。

派手好きな新郎なので、ゲストの皆さんもさぞやと思っていたけど、赤の総レースワンピースの私が一番派手な部類だったのも納得いきません。

とてもよいご披露宴でした。
おめでとうございます。どうぞこれからもお幸せに。
幸せであることに多くの努力を必要とするとしても、その努力こそが幸せなんじゃないかなと思うのです。

彼は私の持っていないもののほとんどを持っている。
本当に神様は不公平だ。どうして家族に愛され、すべての人に祝福され、望めば手に入るものばかりの世界に生きている人が平気で「あなたは僕と同じ側の人間だと思っている」なんていうのだろう。

私は何も持っていない。あなたの持っているものの半分どころか1/10も持っているかどうか。

「でも、もし私が才能だけで、あなたに勝てたら、私の人生は結構最高だと思わない?」

二次会で上半身裸の新郎に、そう伝えらたのは、私のわがままだったと思う。ただおめでとうございますって言えばよかったのかもしれない。

「不安定なほうが突き抜けると思うんです。そういう意味では僕は弱い。でも彼女はきっとそばにいてくれると思います」

違う、条件に頼って突き抜けようとする事自体間違っている。
不安定な天才という漠然としたものに憧れているだけなんだよ。

結局自分を支えてくれるものがどれほどあるのか、という事のほうが、突き抜けるという事にプラスに働く。
家庭を持ったことで、あなたはもっとその先にいく足掛かりを得たんだよ。
もっといえば捨てられる錘(おもり)さえ持った。
でも錘は簡単に捨てるようなもんじゃない。それがなければ安定して動けないし、最悪の場合それを切り離すことで何かを生き残らせる事ができるというだけで、それはいい選択なんかじゃないんだ。
持てる力がある人にしか錘は持てない。その力をみすみす捨てるなんて事をしてはいけない。

不安定に憧れるなんて馬鹿なことをするな。
憧れるべきはそこじゃないんだ。

でも彼はそもそも頭がいいしとても優しい人なので、結局無難なところに落ち着くだろう。
そして、もし彼にウィークポイントがあるとしたら、その頭のよさゆえに無難にまとめてしまうという事なんじゃないだろうかと、何となく思っている。

ニセ札の凝りよう。この合衆国の正装はきっとパンツ一丁。

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つよく生きていきたい。