お金と商売と誠意

さて、地震が起きたので、これはいかんと思って、チャリティー商品を作って販売した。
そのことで、ものすごくお金について考える事になった。

まずなぜチャリティー商品を作ったのかというと、寄付をしたいというよりもショックを受けて落ち着かなくなっているお客さんを落ち着かせるために販売したという感じ。いいから、落ち着いて、という意味合いが強かった。

でも、売れました。ほんと、ものすっごく売れた。

そこでいろんなことが分かったんです。

ずっと購入に二の足を踏んでいたお客さんたち(見込み客??)がこんなにたくさんいた事にも驚きましたが、しかし今まで散々渋っていた彼らは何が理由であっさり買ったのか。

もちろん、寄付になるならという善意が働いたことは第一にあるとして、問題はその裏にあるものです。

「お店が儲からないなら、お金を払ってもいい」

無意識に、こんなことを考えていませんか。

「モノを売っている人は、消費者を騙して少しでも多くのお金を奪おうとしている。だからお金を使う時はなるべく少なく使って悪い業者を太らせずに商品を手に入れるのが賢い消費者だ」

いつも思っている訳ではないけれど、どこか、そう思っていませんか。
心の奥で。

好きなお店が儲からないのを心配しながら、安心している。ああ、わたしは騙されてないぞ、あのお店はギリギリ経営だからいい買い物ができたな、って。

そういう意識、ありませんか。

わたしにはあるし、みんなそう思っていると思ってギリギリなことが誠意だと思っていた時期もありました。

が、そうじゃなくても、いくらでも誠意は持てるんですよね。というか、ちゃんと稼いでそのお金を使ってより良い事をしたほうがよほど誠意のある行動です。

でも、お金でいい事をするって知らないまま大人になったから、お金の使い方をわかってない。誠意っていうのは儲けを出さないという事一辺倒な思想しかなかった。そういう両親だったからというのも大きい。

確かに、過剰な利益は疲労物質のように商売を蝕む。
だからちゃんと適切にお金をこぼしていかないといけない。
だけどそれはものすごく儲かった場合であって、全然儲かってない時にはそんな事よりキャッシュフローを安定させる方が正義ですし、ある程度の内部留保はなくっちゃ困るわけですし。

でもそれが怖くてできない。
儲かるのは悪徳業者だって刷り込まれているから。買い手にも、売り手にも。
ちゃんと利益を追求することが、売り手は怖いのだ。買い手が利益を追求することを嫌うって知っている、だって自分も消費者立場でもあるから。
そして「お客様は神様」みたいなへりくだりすぎてすり減るような事をしてしまう。恐怖のせいで。

買う人たちは、モノを売る人は不当に儲けている悪徳業者をすごく嫌っている。嫌っている割に、大手安売り業者に無駄買いで利益を提供してしまっている……。でも、安かったからいいの!という切り札をつかって、矛盾を抑え込んでいる。だってお金がないんだもの、お給料が少ないし、そういう会社だし、転職とか厳しいし、税金高いし、そういう社会が悪い…そのくらい原因を転嫁することさえある。

お店を儲からせてはいけない、という感覚が、多くの人の心にある。

それを、このチャリティー商品を通じて、衝撃的なまでにはっきりと教えられました。

お金があると悪い事をするとか、お金を欲しがって悪い事をするという感覚がびっしり我々の中には張り付いている。張り付いて根を張って、引っこ抜くことがむずかしい。
だからこそGoogleでさえ「6.悪事を働かなくてもお金は稼げる。」とか社是に掲げている。掲げないといけないくらい、無意識にはお金は悪事をしないと手に入れられないって多くの人が思っていることの表れだ。
そしてその裏返しで、多くの消費者はお金を支払う先は悪事を働いているに違いないと無意識に思っている。

ギリギリ経営でいるという事は、誠実さの表れではない。本当はね。
ギリギリ経営でいられるくらい甘やかされた環境でいられるという事でもあるので、まあいいけど。

わたしはそういう思想の両親が大借金を作って倒産しかけて悲惨な目にあったので、それじゃダメだという事を身をもって知りました。
知ったけど、じゃあどうしたらいいのかはすぐにはわからなくて、十数年かけて実践しながら答えを探し、見つけつつあります。日々修行。

誠意をもって商売をしたい。そうありたい。

が、だからってギリギリ経営で儲けを出さないというのがいいわけじゃない。
ちゃんと儲けを出しても誠意はなくならない。
儲かったら誠意はなくなると思うから、誠意がなくなるだけだ。
考えを変えるしかない。それがすごく難しいんだけど。(人肉を食べるなんておぞましいと思っている人が、人肉を食べる事は非常に名誉なことと言われてもそうそう納得できない、みたいなことかも)

売り手だけじゃなくて、買い手にもその考えがちゃんと浸透していかないと、結局お店をやっている人たちは買い手に悪徳業者かもしれないと蔑まれて事業が失敗してしまう。
これじゃダメだ。
売り手もそうだけど、買い手も意識を変えていかなくちゃ。
それには、売り手の意識が変わることが何より重要なのだと思う。

そして、それじゃダメなんですよお互いに、という事を発信していくのも、売り手の仕事でもあると思う。

それがインターネットがあると低コストでできる。いい時代になったと思う。

売り手、買い手の区別なく、お金を儲けてはいけないという感覚でモノを見るのをやめよう。お金が儲かったかどうかではなく、それは社会を少しでもプラスにすることかどうか、という事を考える視点を持とう。
多分これはわたしがソーシャルワーカーの勉強をしていたので、余計社会全体への影響という事を考えながら自分のビジネスを組み上げているんだろうけれど、ソーシャルワーカーの視点は商売の視点とも通じていると思う。
関わる全員が問題を解決するために手を差し伸べ合う事。それはお金を出す人、モノを作る人、買えるように場を整え金銭授受をする人、すべてが是となる状態を目指していくということでもある。
その時、売り手、つまりお店はとても重要な役割を果たせると思う。

だから、その役割を果たせるように、ありたいのです。

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