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見たこともないものを買いたいって思うなんてね

引っ越しも落ち着いた。
仕事の大きなピークをなんとか通過し(まだ途中だけれど)、すこーしだけ未来の事を考えるようになってきた。

とっても、とってもつらかったね。去年、今年と。
一時支援金、月次支援金に該当するくらい売上が減った。「7月も該当しますね」と税理士さんに言われて、「やったー20万円もらえる!」なんて思うことはなく、「そんなひどい……」という感じだった。
20万円はうちにとっては大きな金額だけど、それにしたって。
(そして大きなお店にとってはもう大打撃どころじゃないだろう)

つらかったー。
と、過去形にしていいものかよくわからない。
でも、今は少し、未来の事を考えている。

絶対必要なもの以外の家の中のものを買った。
お掃除ロボットと、ロッキングチェア。どちらも、それなりのお値段。
そして、なくても生きていけるものだ。

でも、買ってよかった……としみじみ思う。
ロッキングチェアには毎日座る。
お掃除ロボットルーロミニちゃんは、ベッドの下をきれいにしてくれる。自分で掃除できないわけじゃないけど、本当に楽だし、とはいえ見守りも必要な程度の不器用さなので、掃除を手伝ってくれるという感じ。
高かったけど、部屋の清潔を保つのがこんなに簡単になるなんて。

ルーロミニは、お店に見に行くことをせずに、大きさと値段でバクチのように取り寄せた。

さすがにロッキングチェアはお店を探して試してみた。
試してから購入まで2か月程度はかかったけれど、いろいろ考えて、でも考えたところで実際に部屋に置いてみるのとは違うので、結局座り心地はわかるけど色をどうするか、実際にどのくらい部屋を圧迫するのかわからないから、ここもバクチのようなものだった。

さらに、そろそろさすがにお洋服をそろえないとね、という状況になってきている。
今年の夏はなんとGUのキャミワンピ1枚のみで過ごしました!わたしの辞書に着回しという言葉はない、というか、むしろ100%着まわしているというべきか。
寝起きにずぼっとかぶるだけで、荷物の受け取りができる。
キャミワンピのあまりの高機能ぶりに、これはアップデートしたやつを買わなくてはいけないなと思っている。着たきりスズメでございます。

しかし、その前に「ちゃんとしたお打ち合わせ」「インスタライブ(しかもかなり大手の)にゲスト登場予定」などの予定がどんどん入ってきて、本当に真面目に服を買わないといけないし、髪を切らないといけない。

昨年から服装ももう少し真面目に考えようと思って、高級な靴を買って、今後いろいろとそろえていこうと思っていたんだけど、ステイホームだし引っ越ししなきゃだし、売上ガタ落ちだし、デパートも閉まっているし。
とてもお買い物なんて感じではなかった。

とはいえ、隙を見てはご試着。
高価なブランドのバッグを試着し検討していたら「シーズナルカラーなので」「値上げで」と状況は刻々と変わる。
そしてウキウキと今まで考えたこともなかったお値段の腕時計を見に銀座の旗艦店に行ったら「もうない(というのを非常に丁寧な言い回しで)」といわれる始末だ。

結局、洋服に関する最初に考えていたあれこれは、なんとなく全部根底から考え直しになってしまった。
所詮、浅はかな、知恵のない考えの理想だったのだ。

そうなったらなったで、今度は試着の旅が混迷していく。
洋服は試着がハードルが高いので、バッグのほうが簡単にお試しできるという事もあって、ちょこちょことバッグを見た。
「ブルガリのきんちゃくバッグにいい色があったのに、もうない」
「ロエベのパズルバッグか?ハンモックは何かフィットしなかった。そしてやっぱり私がいいなと思った派手色がもうない」
「意外とGucciのお上品ライン、日本限定モデルがはまる。しかしトートバッグよりショルダータイプで毎日身に着けるやつが先に欲しい」
「サンローランのバッグ、オールブラックパターンはすごいよかった!真っ黒!黒すぎて悩む!服も黒が多いので!」

ここまできて「マルジェラでは??」という候補が出てきた。
マルジェラ。ピスタチオ味のジェラートを想像する。全然違うらしい。

サンローランの真っ黒バッグが今まで見てきた中で「今買うなら」に一番近かったのだけど、黒すぎるというそのアイデンティティそのものが何となくネックになっている。
大きなロゴタイプはあんまりフィットしない(モノグラムも微妙)けど、真っ黒だとロゴタイプも「あら珍しいわね、あなたにしては」という感じになるので、チャレンジとしてはすごくありなんだけど、全体のバランスをもうちょっと持ち上げていかないと、という感じがある。それはそれで課題となっていいのかもしれないなあ、と思いつつ、全力でGOサインが出せる状態ではない。
微妙にドレッシーすぎる。私は毎日ずっと持ちたい。バッグをとっかえひっかえするのは面倒なので。肉のハナマサ(※業務用スーパーの一種)でも帝国ホテルでも同じものを持つ。

そう考えると、ほんとにお高い靴はよかった。
ハナマサでも帝国ホテルでもどっちにも行ける。帝国ホテルは「あら素敵」となるし、ハナマサでは誰も見ない。

そんなことを考えていたら、マルジェラ5ACというバッグが出てきた。

ネットやファッション雑誌、おしゃれ本、インスタグラムなどで見る程度の事で、いきなり検討候補に入ってくる。ピスタチオ味のジェラート。
「あの地下足袋のとこでしょ」
「そうらしいよ、なんかしつけ糸の」
「最近は数字に〇がついているよ、しつけ糸はちょっと前の感じ」
「あっそうなの?」

なぜ、私は実際に見たこともないバッグを、それも今までの自分の最も高かった1カ月の給料よりずっと高いものを、「買おうかな」という気持ちで調べたりしているのだろう。

これはすごく不思議なことだ。

今ここにないものを、見たこともないものを、「ある」と信じて疑わない。
そりゃあ画像があって、おしゃれな格好をして持っている美男美女の様子などをスマホでサクサクとみることができる、でも本物のバッグは見たことがない。
なのに、「買おうかな」という気持ちで検討している。

私は、いつもここに違和感を持つし、同時にそこにどれだけ人が引き寄せられるかもよくわかっている。

そして、その「今ここにないものへの憧れ」だけで実体のない生き方をしている人たちと、彼らの不必要な悩みなども、ものすごくたくさん見ることになった。
私自身もそういうものに振り回され、諦める必要がないのに諦めたりというのを繰り返した20代だった気がする。そもそも親の押し付けた理想像だって、実体のないものだった。
実体がないからこそ、強烈に憧れ、それが完璧に正しいものだと信じてしまうのはたやすい事だった。否定する材料が見つからないから。

幻の中に生きている。

ワクチンデマなどを見ると、本当に幻を強く信じている人をあちこちで見かけて、いろんなことを思った。

ハイブランド製品というのは、その幻を共通して持つ人がすごく多い、または非常にお金や権力がある人たちがその幻想を共有してより強く広めている、という側面がある。それを楽しむようなところが、「ハイブランドをたしなむ」ってことなんだろうとも思う。

共有された幻は、人間にとって欠かせないもののようなのだ。
子供は親の持つ幻を共有できないので、親の幻が苦痛になる事がある、という事だ。ブランドというものも、共有された幻なので、共有できない人間には「バッグに30万円出さなくても3万円でいいのが買えるでしょう、残りの27万円は別の事に使いなさいよ」という事になる。

幻を共有するか、しないか。
どの幻を、どのような形で共有するか。(そして共有していると思っていること自体、何の根拠もないものだ)

しつけ糸のジェラートというとぼしい知識によって間違った幻を持っている私が、そのうちマルジェラにいき、5ACをご試着するわけです。
その時、幻が破られるのか、あるいはその強烈な幻に取り込まれるのか、それとももっと違う経験があるのか、少し楽しみでもある。


今後のお買い物&ご試着計画案
・マルジェラ5AC、白っぽい色の。サイズは要ご試着
・エルメス ケープコッド二重巻きのやつ(二重ベルトはいわゆるマルジェラ期に発表されたというのでしつけ糸の呪いでもあるのかもしれない)
・ジャケット、硬くなりすぎず、就活生に見えず、体型に合うもの
・SLOANEのニット&Tシャツ
・sacaiはコートを試着したけど、はじめて買うならスカートでは??となってきている
・sacaiがあるならヒールのある靴。グッと底上げできるやつ。パンプスなのか、ブーツなのか…
・ピアスホールがふさがってしまったので開け直す
・iPhoneを新しくする
・クロコのお財布はタイミングを見て。バッグで買うかどうかを決める
・ピアスホールが安定したらがっつりブリーチしたい(金髪にするのは大変なので普通のブラウンになると思う)

ファッションに100万円はつぎ込もうと思っていて、すでに10万円の靴などで20万円くらいは消化済み、失敗したものや普通の消耗品なども入れたらここまで30万円くらいは消化していると思う。
そこにバッグと腕時計で大体60万円越え、ニット、ジャケットなどを買ったら100万円はあっというまに達成です。

でも1つ30万円のお買い物って、そこそこだなあと思う。
今まで自分のビジネスなどでもう少し大きなお金を口座の残高が限りなくゼロに近い状態になるまで使うという事は何度もやってきて、そのストレスには何回もさらされているのだけど、自分のために使うというのは、また全然違う重さがある。
そして、不思議と、今はそのことがそんなに怖くもないし、「購入のタイミングだけは見誤らないようにしなくちゃね」みたいな気持ちでいる。

仕事のピークは秋なので、冬にいろいろ整理して年を越えて……そろそろかなって感じでいくのが、どっちかというと守りに入ったやり方。
まだ経済的に先が見えないので、守りの状態でやっていこうと思います。それでも、「マルジェラ!」とか思い始めているので、少し未来が明るいような気がしています。

ありがとう、しつけ糸!みたことないけど!

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つよく生きていきたい。