田中一村

奄美大島ひとり旅レンタカーなし(田中一村編)

奄美大島に行ったのは、一にアマミノクロウサギ、二に田中一村です。

近代の日本画家で、東山魁夷らと同じ世代。幼い頃から絵の巧さで神童と言われたけれど、一度は美術学校に入るも2カ月で中退。貧しさや病気のためだったようです。

彼の絵は、普通の日本画という感じだったのが、奄美に移住してきて雰囲気が一変している。

千葉や東京で暮らしていた時の作品と、奄美時代の作品は全く別物に感じられるくらい。
もちろん、圧倒的に奄美時代の作品が素晴らしいと思います。

南国花鳥画とでもいうような、植物と主に鳥を精密に描いていて、私は伊藤若冲みたいな展覧会待機列メーカーになり得ると思っている。
(作品数とか歴史的な意味合いでは若冲には負けちゃうけど…)

彼の作品を見ようと思ったら奄美に行くしかないみたいですね。
ほとんどの作品が集められているようです。

そして、千葉や東京時代の作品もあるのですが、なんというかあまりにオーラが違う。

幼い頃の絵と奄美時代の作品が私の中ではとても響いたのですが、千葉・東京時代の作品は、上手だけど上手なだけという感じだった。
奄美時代のものは、なにか、この世のものであることをきっぱりとあきらめたような暗がりに満ちている。

奄美は、暗い。
あんなに海も透明で南国の太陽の光に満ちているのに、暗い。
それは飢えとか貧しさ、古い時代からの圧政、戦争が、くっきりと人々の中にあるせいなのかもしれない。

奄美の海を見ながら私も「あー海しかない、ギンザシックスとかない」と最初に思いました。

ハブもいて、危険な地域。
海だって豊かだとは言え、荒れて人の命を奪うことなど造作もない。
土地も農業ができる地域は限られている。
生きていく事にとても厳しい面もとても大きい。


田中一村の描く奄美花鳥画は、どうやらいろんな季節の植物が一緒に描かれていて、季節的な正確さはけして写実的ではないらしい。
それはそれで私は大変好きなやり方で、たとえば千と千尋の神隠しの魔女湯婆々の館の庭は四季すべての花が一斉に咲く狂い咲きの庭で、その違和感が魔力の表現になっているけれど、おそらくそれと同じ、あり得ないあり方が幻想をより深めている。


アダンと飛行機

美術館の庭は、田中一村が描いた植物を植えこんでいて、絵の中の世界を再現するように仕立てられていた。冬に行ったからあれだけど、他の季節ならもっと趣きがあったと思います。
冬でも初めてみる南国の植物は大変面白かった。めずらしい小鳥も見れた。

田中一村美術館が併設されている奄美パークも超面白かった。
蝋人形や奄美の森のジオラマ模型、お祭りの様子の動画など、想像以上に面白いです。半日は余裕で潰せる。

レストランも美味しいです。
平日だったので、人がほんとに少なくて、ふと思いついて友人たちに向けてそこではがきを書きました(売店で切手も売ってる)。
バスも横付けされるし、空港も近いです。到着日か帰る日にたっぷり見る余裕があります。


惜しむらくは、田中一村の絵は細長いものが結構多くて、ポストカードにすると縮尺がおかしくなっちゃうので、お土産のポストカードはずいぶん雰囲気を損なってしまうということですかね。

かといって大きなものは荷物の関係上なかなか買えなくて……
ポストカードがもう少し何とかなれば……
とかいいつつ何枚も買いました。

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