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普通のアイカラーが一番よくて、つまらないなっていつも思う

目が大きく見えるということが、アイメイクの至上命題だった時代にメイクをはじめた。
それが90年代。
マスカラはヴィセが強かった。資生堂がマスカラ下地を出し、ディグニータというブランドでコームマスカラを発明し、KATEはアナスイのラメをより使いやすくしたフラッシュクラッシュを出し、ピエヌがシルバーのぬらぬらした色を出し、ヘレナルビンスタイン様のマスカラが神と崇められていた。
ブルジョワのチークはもうなくなってしまったが、エクセルは当時からあった。アットコスメはまだ個人のサイトだった。

そういう時代を経て、令和になったら『目が大きい』こととはちょっと違うメイクになってきた。
目が大きいことに命をかけてきた世代は、もったりとした最近のアイメイクをなんとなく野暮ったいなと思ってしまう。
かといって、今さら目元を黒くしても、浮く!浮きまくる!
目が大きい人じゃなくて、目の周りの黒い人にしかならない。

そしてマスク着用が普通の日々がやってきて、アイメイクはもっと特殊な立場になっていった。
なんというか、目元ですべてを表現しなくてはいけなくなってしまった。

チークも見えないから血色のよさを、肌が見えないから肌のきれいさも匂わせつつ、顔の立体感を出し、目の潤みや輝きも出す……
背負わせすぎだ。

だけど、そういうの一挙に解決するのが、私の場合、オレンジ系のゴールドっぽいパールが程よく入ったアイカラーです。
少し影を作り、オレンジの赤みで血色のよさがあり、ゴールドパール系の艶で肌艶のよさを出す。
一石三鳥くらい。
コツと言えば、これを使う時はもうこれだけをパッと塗る。
他のマットでほわほわなオレンジやピンク(韓国コスメに多い)は先に少し影を付けた方がいいんだけど、オレンジ系ゴールドベージュというかブラウンというかは、あれこれ小細工をしない方がいいです。

マットなピンクだとホントにぼんやりと甘ったるい顔になるし、マットなパステルオレンジだと「化粧してるゥ!」という感じがする。
むしろ小さすぎないラメをバシッとのせてしまったほうが、なにかパッと晴れる感じさえある。その昔はラメこそ厚化粧の象徴とされていたのに。

そして、もはや「目が大きい」ことはそこまで重要じゃなくなってしまったんだなって、痛感する。

たったひとつの美しさの指針に振り回されるより、ずっといい時代になった気もするし、同時に平均値を全部高くしなくてはいけないような圧力も感じるようになって、いいのかどうか分からんなって気持ちになる。

アイカラーもひとつだけをパッと塗るのがきれいなのに、個人的にはあれもこれも塗って組み立てる工程を楽しみたい気持ちの時もあり、無駄に厚化粧というか、釣り合わない化粧をすることもある。
きれいになる、という命題を踏みにじる行為ですね、でもその方が楽しい時ってあるし。楽しいあまりにたくさん塗ってしまう!

オレンジ系は大体間違いのない仕上がりになるから、まあいいんですけども。

私の鉄板色が大体わかったのは、よかったかなと思っている。
赤すぎず、茶色過ぎず、オレンジベージュでちょいラメ感、塗りつぶし感がなく(韓国コスメは真逆でほんと塗りつぶしてくる)、非常に日本的な中庸なオレンジベージュブラウン。
普通。

面白みはないけど、確実。

面白みはほかで出せばいいのかもしれないけど、やっぱり面白くない。
自分が面白いのは塗っている時の一瞬だけだし。
面白みのなさよりも平均値を徹底的に上げる「失敗しない」ことを目指す方がいいのか。人生の大門未知子ドクターX。大門未知子は普通失敗しそうなところを失敗しないから決め台詞になるのだけど、誰もが失敗しないところを失敗しないやり方で行くとどうにもならない。

つまらないなーって思いながら、間違ったアイカラーと正解のアイカラーを眺めている。
そしてたまに、青や緑のアイカラー、特にミントグリーン系に手を出してしまう。ミントグリーンで、透明感を出したい。
でもミントグリーンで透明感を出す時に髪の毛をおろしていると、すっごいこってり濃いメイクに見える。髪をまとめて女っぽさを減らす方が似合う。デコ度を常にバランスとらないといけないらしい。
ああ、ケバいメイクがカッコよく決まるという夢よ……。


しかし、プロのメイクアップアーティストのYouTubeなどを見ていると、メイクそのもの自体より「ライティング次第だね!」「強い光の時は、絶対絶対マット」「ツヤ肌っていうけど、撮影の時はマットにしても飛んじゃうもんね」「アラはならして均一にしたいけど、塗ったところだけ反射率違うと余計バレる」など、化粧そのものよりも光の種類、光の反射の事ばかりいっているから、化粧品の色の差異なんて、ほんとどうでもいいんだろうなって思います。
「どうせ大差ないから、自分がかわいいって思うもの使えばいいじゃん、その方が気分いいんでしょ」という実も蓋もない結論なので、なにか突き放されたような気持ちになっちゃうけど、プロの視点ってそういうもんだなって思います………。

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