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オンライン写真展『赤赤と佇む街』のお知らせ

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noteアカウント開始第一弾として、写真家・溝口良夫氏のオンライン写真展を企画しました。

構想3年、溝口氏が所有する膨大なフィルム・アーカイブからセレクト

以前からカストリ書房でも、溝口さんの写真集『草匂う日々』(2017年、日本カメラ社)、『くるおしい都』(2022年、蒼穹舎)を取り扱っていました。両写真集には、遊廓や赤線をはじめとする娼街や歓楽街が多く収録されていましたが、かねてから未発表作品も多くお持ちであることも、伺っていました。

であれば、娼街ばかりを集めた作品集をつくりたいという旨を、私から溝口さんへ打診したのが3年前。以来、溝口さんは膨大な数のフィルム・アーカイブからセレクトし、そしてプリントしてもらい、今回のオンライン写真展が実現する運びとなりました。この作業だけでも相当な手間暇が掛かったものと思慮します。

海外からもみて貰いたい

膨大な作品点数にのぼったため、そのまま紙の写真集とすると、紙代の値上がりが続く昨今、販売価格は相当なものになってしまうことが予想されました。オンライン写真展とすれば、物理的なコストもかからず、低廉な価格で提供でき、より多くの関心ある人に見て貰えます。オンライン写真展の入館料(閲覧料)は1,500円です。紙の写真集であれば10,000円前後の価格設定としていたはずです。加えて、溝口さんが海外からもみてもらいたい旨を希望されていましたので、なおのことwebを選択しました。

今回のオンライン写真展に収録した作品群は、早いものでは昭和55(1980)年からあり、およそ40年以上にわたって、フィルムカメラで収められてきたものです。31府県173地点、329枚を展示しています。

無論、撮影時期が早ければ良い、というものではありませんが、被写体が歴史的建造物やその町並みである以上、被写体ありきで撮影し得るものです。手前味噌ですが、私も全国500箇所ほどの娼街を訪ね歩いてきたので、溝口さんの苦労は誰よりも理解できます。失われた建物は二度と戻らない、という当たり前でいて、多くの人が見逃してきました。偉大な先達のお一人として、溝口さんのオンラインを企図しました。

溝口さんから掲載の許可を頂戴したので、いくつか作品をご紹介したいと思います。

引用元:吉原遊廓跡に残るトルコ大華〈昭和55年〉(撮影・溝口良夫、無断転載禁止)

吉原遊廓は昭和20年3月10日のいわゆる下町空襲によって、一部の鉄筋コンクリート製の娼家を除いてすべて灰燼に帰したため、写真中のトルコ大華もおそらくは戦後の建築ではありますが、トルコ風呂でありながら純和風建築という極めて珍しいもので、ソープランドと名を変える前の姿を留めています。

滋賀県大津市、柴屋町遊廓〈平成22年〉(撮影・溝口良夫、無断転載禁止)

大津市の柴屋町遊廓跡に残されていた娼家を平成22年の姿をとらえたものです。当娼家は令和2年に土地が売却に出されて地元の某企業が買い取り、何らかの活用を目指していましたが、結果は実らず、取り壊しとなりました。プロジェクトのメンバーから私にも相談があり、カストリ書房に併設された資料室の資料を提供したりしたので、大変残念な結末でした。

私が初めて当娼家を見たのは確か平成24年頃だったと記憶しますが、この頃にはすでにかなり傷んでおり、無人と見受けられましたが、溝口さんが撮影にのぞんたタイミングではまだ住人がいたようです。住む人がいない家は、すぐに取り壊されてしまうことを改めて感じさせてくれます。

神奈川県横浜市・野毛〈平成元年)(撮影・溝口良夫、無断転載禁止)
山梨県笛吹市・石和温泉〈平成2年〉(撮影・溝口良夫、無断転載禁止)
秋田県秋田市・川反〈平成4年〉(撮影・溝口良夫、無断転載禁止)
神奈川県横浜市・黄金町〈平成20年〉(撮影・溝口良夫、無断転載禁止)

この他にも31府県173地点329枚の写真を展示しています。失われて二度と戻らない街景──。是非ご覧になって下さい。


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