ドクトリーヌとロンリー・チャップリン
ローンリー・チャップリンのデュエットを覚えようとしていた時期があります。
23、4の頃。
なんでや、と思いますでしょ。
わたしに夜遊びを教えてくれた飲み友達にデュエットしたい!と言われて覚えようとしたんです。結局デュエットしないまま今に至るのだけど。
この曲を思い出すとその人のことも思い出します。
思い出しただけでは寂しいから書き残す。
そのお方は
お酒とタバコが大好きで、
歌がべらぼう上手くって、
わたしのバイト先の常連さんで、
(当時喫茶店でバイトしてた)
細身のパンツスタイルがカッコいいユニクロ店員さんで、
とにかく自由な
60歳オーバーの素敵な御婦人でした。
アラ還です。あれ?60過ぎってアラ還っていうのかしら?とにかく知り合った時点で結構なお年でした。
でもお婆ちゃん、という感じでなくて御婦人。
背筋ピシッと、顔にはシワがいっぱいなんだけど身につけるアクセサリーと相まってお洒落でカッコいい。
言うなれば漫画ONE PIECEのドクトリーヌ。
(チョッパーの医学の師匠ですね。涙なしには読めない)
性格はとても気さくで、いつもニコニコ。人が良く誰とでも友達になれるタイプ。たかったりはしない。 ツケはしてたけど笑
そんなドクトリーヌと飲みに行ったきっかけは全く覚えてないんだけれど、家が近所なのもあり自分の行きつけの店にたくさん連れてってくれた。
例えば、
近所の韓国料理屋に行った時は、韓国人の女将さんに「この子友達なの!今度来たらよくしてやったね!」と紹介してくれ、後日1人で行った時女将さんが「今日ひとり?座って!適当にご飯出す、ビールおいとくね。会計?千円でいい」と瓶ビール大を3本あけたわたしにありえないおまけしてくれた。
後でドクトリーヌに聞いたら仲良しな人、常連さんにはそういうフリーなスタイルで商売してるらしい。ゆるい店の空気が好きだった。
メニューあるのにちゃんと頼んだことないし、それでもお腹をいつも満たしてくれたし、ビールだけは体に悪いとご飯くれたり、ほんと良くしてくれたなぁ。お会計はいつもなんでか千円だったし。
というか1人でそんな飲むんじゃないよわたし。
またスナック通いもこのころ教わった。
といっても小さな町のおばちゃん1人で回してる、カラオケスナックだけど。
飲み屋ハシゴしてスナックで朝4時まで飲んで歌って帰り、仮眠して9時半からバイトの流れがお決まり。若かったな…今やったらしんじゃう…。
常連さんで持っているようなお店で、年齢層が以外と幅広かったのが意外だった。若いお兄ちゃんもいたし。
みんな好きにのんで歌って、歌良かったから酒おごるよなんて言葉交わして。
わたしも歌下手だけど、山口百恵とか歌ったらおじさま達が喜ぶので歌ってたな。
誰よりも元気に歌ってマイクを離さなかったのはドクトリーヌだったけど。体力半端ないよー。
ドクトリーヌの知り合い達が集まってバーベキューした時も、突然呼ばれていったことがある。よくわからんまま行き、お肉食べて、ビール飲んで。みんな知り合い?と聞いたらあたしもよくわっかんないのよ〜なんて飲みながら言うドクトリーヌ。ええぇぇ。
どうやらメンバーの1人とドクトリーヌが友達で、他みんな誰かの知り合いできてたらしい。不思議な集まりだけど、気を使いつつ心から楽しめたバーベキューだった。
ドクトリーヌと飲みに行く場所は全部楽しかった。集まる人お互いに素性よく知らないまま、知ったとしてもそうなんだと、いい意味で他人に無関心だった。
23、4のわたしはその無関心がとても心地よかった。
ずっと抱いていた夢を諦めて、フリーターをし舞台役者を始めた頃、誰にどう自分を語ってもなんかダメな人。
周りに説教なり、教えなりを説かれることに疲れてた。(そんなんじゃダメだよとか、人生甘くみてるよとかね。よく言われたなぁ)
そこではそんなこと無関心だったから、とても心地よかった。もしかしたら心の中で思われてたかもしれないけど。
無関心ってとても嫌な言葉だけど、この時は
下手に、過剰に他者に介入し、自己の価値観を押し付けない、という感じ。
あくまで、わたしはわたし。
あなたはあなた。それぞれ楽しいならいいね、みたいな。
その場に集まっていた大人がそういう人達が多かったからかもしれない。
各々の人生を好きに楽しんでる。
それをみて、迷惑かけなきゃ自由に生きててもいいか、と思えた。ドクトリーヌはそれまでの大人ってこうあるべきだよねっていう定義を変えてくれた人だった。大袈裟だけど。でも、だから憧れの大人だった。
あんな、60歳になりたいなと思っている。
今、ドクトリーヌとの交流はない。
このご時世だ。
知り合った時点で 高齢といってもおかしくない歳だった彼女が、今でも元気にお酒とタバコとカラオケを楽しんでたらいいな。
この先ロンリー・チャップリンを聞くたびに思い出してしまう人だから。
デュエットできたら、よかったのにな。
そんな思い出の人のお話。
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