AI時代で活躍するために

AIとは

そもそもAIとは何か。人工知能という言葉を知っている人は多いかもしれないが、説明できる人はそう多くはいないだろう。AIの定義は専門家の間でもまだ定まっていないのが現状である。様々な専門家がそれぞれの定義をしており、統一的な定義はない。
いくつかの定義があるが、その中で具体的には次のように様々な見解がある。(「人工知能は人間を超えるか/松尾豊」(KADOKAWA)42頁より)
・人工的につくられた、知能を持つ実態。あるいはそれをつくろうとすることによって知能自体を研究する分野である
・「知能を持つメカ」ないし「心を持つメカ」である
・人工的につくった知的な振る舞いをするためのもの(システム)である
・人間の頭脳活動を極限までシミュレートするシステムである
・人工的につくる新しい知能の世界である
・人の知的な振る舞いを模倣・支援・超越するための構成的システム
・人工的につくられた人間のような知能、ないしはそれをつくる技術
このように、解釈をする範囲からすでに曖昧な状態ですので、明確な定義づけができないのは仕方のないことだといえるだろう。簡潔に表すなら、「人工的につくられた知能」であり、その概念や技術そのもののことを指すと考えられる。
一般的にAIと呼ばれるものには「自律性」と「適応性」という2つの特徴が備わっている。
・自律性 …… 人が指示することなく自動的に作業を行う能力
・適応性 …… 経験や学習によって能力を向上させる(パフォーマンスを上げる)能力

コメント 2020-01-13 note表1

双方とも自立性については同様に備わっているが、強いAIのほうが適応性がある。アニメのキャラクターで例えると鉄腕アトムやドラえもんは強いAIといえるだろう。(強いAI、弱いAIという言葉は哲学者のジョン・サール氏によって作られた。)
特化型AIは将棋や囲碁のAIソフト、掃除ロボットや音声認識などは、特定の用途のために作られているため、弱いAIである。特徴としては、あらかじめ指示された作業しかできないが、学習することでその作業の精度を上げることができる。人の補助や能力の拡張に最適なAI で、現在実用化されているAIのほとんどを占めている。
汎用型AIは人の知能を代替えできる、人間と同じように考えるものに近い強いAIである。自分で考えて判断するAIが該当し、実現すれば、人を超える知能を持つものが生まれ、ジンギュラリティが訪れる日も遠くはないだろう。

AIの歴史

AIの始まり:もっとも古いと思われるものは、紀元前8世紀につくられた『イーリアス』というギリシャ神話を題材とした叙事詩にあった。
第一次AIブーム(1950年〜1960年代):コンピュータに人の機能を補完、拡張させることを目的に、コンピュータに推論と探索をさせる研究が進んだ。しかし、実際には事前に設定したことしかできないことが分かり、熱狂は急激に冷めていった。(開発者が設定したことしかできない)
第2次AIブーム(1980年代):「エキスパートシステム」という人の知識を補完するシステムが提案された。エキスパートシステムは専門家の知識を蓄積して、誰でも専門家同様の知識を得られるというものだ。しかし、コストと時間がかかるという弱点があった。
また、常識を理解できないという弱点もでてきた。一般常識的な表現の数は計り知れないほど存在し、文脈や背景による違いもあるので、それらも含めれば膨大な知識を定義しなければいけなくなる。第二次AIブームの問題点は、システムへ入力するデータを人間が集め、人間が成否判断することだった。必要となるデータを事前に準備し、すべて正しく成否判断することなど現実的ではなかったのだ。
このようなブームを経て、現在の第3次ブームが起きたのだ。
第3次AIブーム:機械学習はその名の通り機械に学習させる方法で、AIにデータを与えるだけで自動的に学習していくというものだ。それに加えて、インターネットによって莫大なデータを容易に入手することができるようになり、コストと時間を大幅に減少できるようになった。
ディープラーニング(深層学習)はニューラルネットワーク(脳細胞のネットワークを模した処理手順のこと。既存の記憶との関係性をもとに記憶に強弱をつけることで、効率よく学習することができる)を使ってデータの特徴を自ら抽出し、分類することができるしくみである。つまりAIにデータを与えるだけで、一般的な概念を手に入れて学習する仕組み「自動的に常識を教える方法」ができたのだ。

コメント 2020-01-13 noteグラフ1

現在のAIができること

画像認識
膨大な画像データから特徴を抽出して学習することで、人間と同じように写真を分類できるようになっている。また、蓄積された画像の特徴をもとに写真を作成することもできるようになっている。
音声認識
音声データについても画像データと同じく、AIが人の言葉を分類することができる。またAIが自然な抑揚で話をすることができるようになっているのは、音声認識の精度向上の賜物である。
言語識別
現在、インターネット上には無数の文字データがある。それらを使うことで、文章の特徴を学習することができる。文章を識別したり、書いたりすることができる人工知能(AI)も登場している。
制御
画像認識、音声認識、言語認識を組み合わせることで、ロボットや自動車などの機械を制御することも可能になっている。最近だと自動運転技術やGoogle homeなどが挙げられる。
カメラやマイクなど各種センサから得られた自分の状態と、その状態で動作した結果を関連付けて学習させることで、その時々に最適な動作をさせることができる。
予測
制御と同じく状態と結果を学習することで、特定の状態からまだ起きていない結果を予測することもできる。

AIが使われているサービス(一部)
Automatic Image Colorization:白黒画像をカラー化してくれるWebサービス
PaintsChainer:画像をアップロードするだけで、ラフを線画にしたり線画をフルカラーのイラストにしたりしてくれるAI
Traffic Jam Pilotシステム:自動運転システム。高速道路での渋滞中(時速60キロメートル以下)には、ハンドルやペダルから手足を離していても車を安全に運転してくれる画期的な人工知能(AI)システム
AIタクシー:人の流れを予測し、タクシーの配車を最適にするサービス(企業が持つ情報を積極的に活用した一例)

AIはどこまで進化するのか

AIが人間を超えるジンギラリティー(技術的特異点)の到来がくるかもしれないのだ。人工知能(AI)にもこの特異点が到来するといわれており、2005年に未来学者のレイ・カーツワイス氏が提唱した著書によると、その時期は2045年頃とされており、以下の2点が達成されることでシンギュラリティに到達すると言われています
・人類の全知能を合わせたよりもほんの少し優秀な知能を持つAIが誕生する
・AIが自分よりもほんの少し優秀なAIを作り出せるようになる
この2点が達成されると人工知能(AI)は加速度的に進化し、またたく間に人類の英知を超えてしまうかもしれない。

AIと仕事

シンギュラリティに到達することに懐疑的な研究者も多いが、AIがどんどん進化していくことを疑う研究者はほとんどいない。その一面として、「人工知能(AI)に仕事を奪われる」という話題がマスコミを賑わせている。2013年に英オックスフォードのオズボーン准教授らが「今後10年から20年以内に47%もの仕事が人工知能(AI)に奪われる」という内容の論文を発表したからです。

コメント 2020-01-13 note

これら以外にも、「ルーチン化できる仕事」や「知識があればできる仕事」がなくなるか給料が下がる傾向にある。
この論文は賛否が分かれていますが、それでも最低9%程度の仕事が人工知能(AI)に奪われると言われている。
ただし人工知能(AI)に奪われる職業がある一方、人工知能(AI)の登場によって必要となる職業もある。
・データサイエンティスト
・AIエンジニア(プランナー、プロデューサー)
・人工知能(AI)との協働作業者
・調達責任者
・対人ヘルスケアサービス従事者
人工知能(AI)によって奪われる仕事は、ある意味「人としての暖かさが不要な仕事」と言える。その逆の対人的なサービス、特に心の拠り所となるような仕事は、いまよりも重要視されることになる。また、人工知能(AI)をつくる、メンテナンスする技術者、AIが選び出したデータから最適な情報を得る仕事やAIの補助をする仕事も必要である。つまり、いまコンピュータに従事している数多くのエンジニアと同じように、AIに従事して使いこなすエンジニアが必要となるわけです。

AI時代を生き抜くためには

AIに何ができて何ができないのかをしっかり把握しておくことが重要であると考える。
人間の知能は部分的に見るとディープラーニング(深層学習)などのAI技術と比べて劣っている。しかし、あらゆる事象に臨機応変に対応することが可能である。一方で、人工知能のように、1つの知能で何もかも、全てを圧倒的なレベルでこなすには、大量の記憶容量や膨大な計算パワーが必要になる。あらゆることに柔軟な知能を実現するためには、逆にひとつひとつの性能を下げるしかないという考えにも至る。このようにAIには性能の限界があるため、AIが無限に進化していくのは考えづらい。
また、AIはメタファーの力があまりにも弱いのだ。人間は、経験が少なくても過去の経験から未知のことを想像して行動することが可能である。物事を抽象的に捉えて行動するメタファー(比喩・たとえ)の能力が人間にはある。
今、進化が進んでいるAIは大量の経験(データ)を基にして、帰納的に物事を判断していく。そのため、AIは少ない経験(データ)から物事を想像する能力がない。
人間は1を知って10を知ることができるが、AIは100のデータから1つのことを抽出する。人とAIは知能の方向が逆である。
ひとは身体(感覚器官)を通して常に現実世界を認識し、無意識でも常に予測と判断を繰り返している。数値としてのデータだけではできない、人の心に触れる仕事は人ならではだ。相手の立場に立って考え、相手のために行動できるか、そして信頼関係を築いていけるかは当たり前のようで難しく、AIにはない人としての魅力ではないだろうか。AIを使いこなすための情報収集を行いつつ、人としてのあたたかさを忘れないことが大切だと考える。

参考文献:https://ainow.ai/2019/10/03/179256/
     https://web-camp.io/magazine/archives/30134



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