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救われない未来だと思った:「望み」雫井脩介

人はある日、被害者にも加害者にもなることがある。でもそれがもし、我が子だったら・・・息子(娘)が殺されているかもしれない。殺したかもしれない。どっちを選んでも辛い未来しか見えなくなったとき、親としてどうすればいいのだろう?ずっと考えているけれど、未だに答えは見出せない。

この本を読むまでは、自分の家庭に限ってそんなことに巻き込まれることはないだろうと思っていた。けれど、この小説に出てくる石川家だってごく一般的な家庭なのだ。

ある日1晩たっても帰ってこない息子と連絡がとれなくなる。いなくなる数日前、息子から取り上げた1本のナイフ。何かのトラブルか?心配になったときニュースが入る。息子と同じ年頃の子供が遺体で発見されたのだ。果たして息子はこの事件に関わっているのだろうか?

父の考え、母の考えは真逆だけど、その苦悩が伝わって同じように苦しくなった。「一生懸命育てたのに、犯罪者かもしれない。殺されたかもしれない」なんてとても受け入れられない。あれこれ過去を振り返り「あの時こうすれば」と後悔し、親としての役割を果たせなかったのではないか、と想像しただけで心をぎゅっと捕まれた気がする。

たとえ子供が罪を犯したとしても生きてさえいればいいと思えるのだろうか

誰かの未来を閉ざしたかもしれない。相手もだけど、兄弟、姉妹がいたら彼らの将来だって大きく変わる。それでも・・・て願うのだろうか。考え出したら眠れなくなってしまった。

事件が起きた後、警察・マスコミ・職場や学校など周囲の対応が息子さんの安否を気遣うよりも、疑いの目で見るばかりでそれが悲しかったし憤りでしかなかった。なぜそこまで心無いと浴びせられないといけないのか、真実以上にそのことが胸が痛かったです。

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