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新橋のサラリーマンは蒸留家になれるでしょうか -蒸留所を巡る(嘉之助蒸溜所/日置)-

蒸留を巡る旅。
次は鹿児島県日置市の嘉之助蒸溜所へ。

分かります?

そういうことなんですよね。

蒸留家であることは、化学者であり栽培家でありエンジニアであること以前に表現者であることでした。

もちろん蒸留所の中をくまなく案内いただき、製造工程をかなり定量的なレベルで説明いただきましたし、各工程へのこだわり・深い知識に裏打ちされていることは前提なのですが、あくまで前提でしかないのかもしれません。

技術やレシピは、文字化することができればコピーも容易で、表面上はいくらでも再現性があるものです。

じゃあなんで世の中には、"服"や"カバン"みたいに単一製品ではなく無数にブランドが存在するかというと、ただの服・ただのカバン・ただのクルマ・ただのウィスキーを超えてそのプロダクトの「らしさ」があるからだと思っています。
その「らしさ」は、文字化できる情報の背後にある美意識やビジョンや思想が基盤となって構築されます。

1883年に米焼酎蔵として天文館で創業した小正醸造は、2代目嘉之助さんがこの地に拠点を移すにあたって、初めにビジョンを描きました。
その構想は具体的なイメージとして描かれていて、蔵見学の最初のエリアで見ることができます。

半地下の貯蔵庫、焼酎の樽熟成、テニスコートに体育館。
焼酎の可能性だけでなく、蒸留所が社会にとってどのような存在なのかまでを問い、1つの答えとして大きく描ききっています。しかも明治の時代に。

この高い視座がビジョンに跳躍力を生むんですね。

嘉之助蒸溜所がウィスキーの蒸留所として始動したのは2018年ですが、脈々と息づいていきたビジョン・理念があったからこそ、数あるスタートアップ蒸留所とは明らかに一線を画した存在感を放っているのではないでしょうか。

敢えて蒸留の教科書的なお話はナシとしました。手書きノートには10ページくらい書いてありますが。

知識や技術が「らしさ」ある表現に昇華するかは、ビジョンと理念の視座をどこまで上げられるかというお話でした。

#39歳の転職活動
#蒸留家
#calvados

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