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新橋のサラリーマンは蒸留家になれるでしょうか -はじめての税務署相談-

サラリーマンが醸造家になる(なれるかわからないけど)までの道のり。次は税務署に聞いてみました。

最も思いつきやすい醸造家へのハードル、それは「免許」。酒類製造免許と呼ばれるもので、醸造や蒸留によってアルコール分を有するものを製造する行為はこの国では免許制で、国税庁の管轄になります。

遡ると、ほんの100年前はこの国の税収の多くを酒税が占めていました。日清戦争・日露戦争の戦費も酒税で賄われたなんて話も関係者の方々からよく聞きますよね。税収のために酒税率をコントロールし、一方で製造を免許制にして既存産業の保護をするという図式でしょうか。時代は流れて、税収に占める酒税の割合も限定的になりましたが、それでも酒類製造は免許制ということは変わっていません。

というわけで、拠点とするエリアを管轄する国税局の酒税担当の方に電話で相談してみました。

取得したいのは果実の蒸留酒製造免許

電話で酒税担当の方につないでいただき、自己紹介もそこそこに単刀直入に(アホな感じで)

「果実のブランデーをつくりたいのですが」

と切り出してみました。何言ってんだこいつ的にフリーズするのかと思いきや、冷静かつ分かりやすく基本の"き"から教えてくれました。ハードルが下がったわけではないのに、私も少し安心したのか、頭を整理しながらこの場で必要なことを順を追って話せるようになった気がします。

なぜ果実のブランデー?

突然ながら、今まで一度も出てこなかった「何を蒸留するの?」の答えが半分ここで登場しました。そう、果実を使った蒸留酒がやってみたいのです。果実酒の蒸留。そこに至った経緯や思考回路はまた別の記事で書いてみたいと思いますが、「果実を使う」「蒸留する」この2点を押さえながら酒税担当の方との会話の続きです。

免許取得に必要な3つのもの

筆力に乏しく冗長な文章ほど時間とサーバーの無駄遣いなことはありませんので、酒税担当さんとの初回相談で得られた結論は「酒類製造免許取得に必要なものは3つ」であるということです。

その3つとは「計画」「設備」「技術」。

裏を返せば、この3つにおいて国税局のお墨付きを得られれば、免許取得に大きく前進するよという話と私は認識しています。

3つの各項目を細分化していけばいくらでも細かくなりますし、「免許を取得すること」と「蒸留で事業を始めること」は全く別物ではありますが、この3軸を持つことで今後の具体的なステップが描きやすくなる確信があります。なぜかというと、おそらく私がそういう人間だからでしょう。ゴール設定もプロセスの要素分解も半々で考える。両者双方が影響しあって、走りながら徐々に解像度が上がっていく、そういうプロジェクトマネジメントのやり方が自分の性に合っていることを知っています。

「将来の夢はお姫様!」だけで祈って過ごす、というスタイルも世の中に存在するのでしょうが、プロセスを細分化して「なぜ?」「どうやって?」を自分の内外に探しながら、時にゴール設定にも懐疑的な視点を持ちながら、少しずつ絵のサイズと構成と色彩と明暗が同時的に立ち上がる、そんなやり方をこの1年も意識していきたいと思います。

必要なものその1:「計画」

酒税担当さんが、これを読むのが早いと教えてくださいました。

「構造改革特区における製造免許の手引③特産酒類(果実酒)製造用」

名前としてはそのものズバリですね。国税庁のウェブサイトの中にいろいろ手引書があるのは知っていましたが、ここまで具体的に載っていたなんて知らず、先に読んでなくてすみませんという気持ちになります。

これによると、

どんな原材料を使って

どんな方法で

どれだけの量を

製造するのかという「事業プラン」を作成して、申請書類とともに税務署の審査を受けるということのようです。実際には何往復も差し戻されて、あちこち根回しして、地道な交渉して、担当者が変わるたびに振り出しに戻っての繰り返しなので、手引書を文字通りに受け止め過ぎないようにしながら、つくっていきたいと思います。

幸か不幸か「プランの資料化」は辞書数冊分やってきていますので、できるだけ事務的にならないよう、自分と対話しながら、モチベーションの高い日を選んで作成します。1枚目で担当者の笑いを取りくらいのつもりで。

必要なものその2:「設備」

これは当然ですね。

蒸留酒を製造するための機械・インフラはもちろん、用地・建物まで含んでの「設備」です。もちろんまだ影も形も無いので、蒸留に必要な設備を設置し、酒づくりが営める"場所"からまずは探さないといけません。つまり不動産探しからです。

そうなると不動産屋にアプローチして、となりそうなものですが、あまりイメージが浮かびません。不動産屋の売りたい「物件」と私の思い描く「環境」には全く異なる原理が働いているはずで、脈絡もなく与えられた場所でこれからの長い時間に渡ってものづくりをすることがどうしても腑に落ちないのです。

どうやら場所ありきの事業プラン作成はやめたほうが良さそうです。これこそ事務的になります。

必要なものその3:「技術」

3つ目に必要なことは蒸留技術です。技術があると認められないと製造免許がおりないのです。考えてみたら当然ですが、素人同然に「蒸留してみた」動画を撮りながらお酒造りはできません。現状のままでは、どんな設備を用意していいかも分からないですし、どんなお酒をつくりたいのか自分の考えを深めていくことも行き止まりになってしまいます。

さてどうやって技術を習得するか。

一般的にこの技術を獲得するには「研修」をします。蒸留所で実際に働いて教えてもらいながら必要なことを体得するわけです。実際に体を動かしてみることで、きっと今まで想像していなかった難しさや面白さ・発見に出会うはずで、蒸留家になりたいなと思った時から「あの蒸留所ではどのようにつくっているのかな」などと思いを馳せることも数多くありました。

チャンスがあるのであれば、蒸留の現場に身を投じてみたい。教科書的な技術が身につくということももちろんですが、自分の中からどんなインスピレーションやモチベーションが湧いてくるか、のめり込んで夢中になる自分をいかに発見できるか、それをまず試したいというのが本音です。

これからの1年、多くの造り手さんを訪ね、出会いを重ねながら研修できる縁を見つけてみたいと思います。焦りたいところですが、ここもまた「働ければいいや」の事務的ムードになってはつまらないですからね。まずはアンテナから始動ということで。


途中から酒税担当さんはどっかいってしまいましたね。でもちゃんと相談できました。指針はつかめました。次にアポイントを取るときは、現地まで飛んで行って、粗くても作成したプランを持参しようと思います。夏に訪れた際によくしていただいた、飲食店やホテルやワイナリーの方々に加えて、役所や不動産屋にも行ってみないと。具体的な答えを求めるというよりは、その土地を五感で確かめながら、無防備になって耳を傾けてみる、そんな時間から生まれる次の気づきや偶然の出会いを期待してみます。

こんなペースで来年に間に合うのでしょうか。

でも、それでいいんです。どんなプランを描くときも、関係あるか分からない情報を集めて塾考して煮詰まって、いったん置いておこうって寝ているうちに、何日か経ったらピースが勝手に噛み合うように集まっているってことがよくあります。自分の内側から湧いてくる小さなものを意識しながら、事務的に考えずに情報を蒐集する。その小さな火が大きくなって、いつの間にか夢中になって、寝ていても頭がワクワクモードになっていく、手を動かして決め事を進めていくのはそこからでいいはず。秋以降でしょうか。

とうことで次はどんな情報を蒐集しようか。

いや、ちょっと別のことを考えてみたいと思います。

蒸留酒、というかお酒と私の歴史。そんなたいそうなストーリーじゃ無いですね。原点、まさにその最初の点について思い出して文字にしてみたいと思います。

#39歳の転職活動


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