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新橋のサラリーマンは蒸留家になれるでしょうか -役所にあれこれ聞いてみた-

2023年春に家族で新たな拠点で冒険しよう。蒸留家として生きてみよう。

そんな想いからはじまって、拠点を構える場所は(ほぼ)決まりました。どの都道府県のどこかというのはまだ明示しないようにして、以降「街」「この街」として書いていくことにします。

今後繰り返すことになるかもしれませんが、場所を書かないのはこのnoteが移住日記ではないからです。「移住したら●●だった」系の体験談はたくさん見つかると思うので、ここでの主題とすることはやめます。そもそもまだ住んでないわけですし、思い描く新生活が始められるかも分かりませんので。

まずは役所と話してみよう

あと1年強のタイムリミットに向けての無数のステップのうち、文明人であれば無視できないことがまだまだあります。とは言っても、その街のプロフィールも、農地の所有の仕方も、蒸留酒を作るための基本要件も、補助制度も特区制度も何も知りません。一度行ったことがあるとはいえ、「いいところしか見ていない」「非日常バイアスで美化されているだけ」「旅行と住むのは別次元の話」と、叩くのが趣味の方々の格好のエサとなっていることを再自覚するために、まずは街の役所にいろいろ聞いてみることにしました。

すぐに行ける距離ではないので、街のHPから担当窓口を探してフォームから相談メールを送ってみます。ありがたいことにすぐに返事が来て早速オンライン面談をすることに。面談というか、一方的に押しかけて私が質問する場ですね。

面談当日、"多いだろうな移住相談"と思いながら、送られたzoomURLをクリック。

するとなんということでしょう、画面の向こうにたくさん人が。。

焦るほどの手厚さ

まさかの1対多のzoom会議。リアルの場だったら、きっとその窓口に座ってる担当者ひとりに突撃相談となっていたと思うと、リモート推奨ムードと情報技術には一定の感謝をしないといけません。

その瞬間まで視覚情報が得られないリモートならではの"あけてビックリ"ではありますが、嬉しい誤算だと思って淡々と自己紹介からはじめ、考えていること・やりたいことを無邪気に伝えてみました。

こういう思いつきや淡い理想での移住相談が増えているからなのか、東京の会社員から藪から棒に「そちらの街で蒸留家やりたいの」って言われても、突っ込みどころが分からずフリーズする様子もなく、むしろ親身に頷きながら聞いてくださいました。

役場の方にいろいろと回答いただくターンになってはじめて知ったのですが、どうやら画面の向こうには7人もの方が聞いてくださっているようです。7人て、今勤めている会社であれば未オリエンの初回打ち合わせで動員する人数ではないです。偉い人の挨拶かトラブル時にしか出動できない規模です。

聞いてみると、農林水産、移住制度、政策・企画立案などそれぞれの部署から集まってくださっているとのことで、ちょっと知りたいくらいの気分で打ち合わせ依頼した自分に心の中で喝を入れます。こんな小さな洗礼もまた、新たな環境を求めて行く上で積極的に受け入れるべき儀式です。

聞けたこと

で、どんなことが分かったのか。部署横断的に集結いただいたおかげもあり、驚くほどの情報量を得ることができました。と同時に、予期していた通り、外野の格好の餌食になるほどに今まで情報量が足りなかったことを自覚したのも事実です。

1.新興住宅地への購入補助がある

2.新規就農のためには農業研修が必要(2年推奨)

3.指定果実の醸造であれば特区制度があり年間2000L以上の製造で免許取得可能

4.指定果実以外にも手を出すならその時に免許は切り替え可能

5.酒造免許を交付するのは国税局

6.国税局がチェックするのは「設備」と「技術」があるか

7.商店街の中に軒を構えるなら空き店舗補助や家賃補助がある

8.タンクなどの資材購入補助は最大100万円

9.リキュール免許であれば年間1000リットルから免許取得できる

10.農業経験者しか農地は買えない

11.この街にある農家で研修するのがおすすめ

12.2年の農業研修中は国から年間150万円の補助が出る(就労時間等の規定あり)

13.役場で持っている空き家情報は少ないので有力な地元不動産屋を紹介してもらう

14.原則は居住地がある学区内の小学校に通うことになるが、しかるべき理由を認定されれば変更手続という方法がある

15.中学生まで医療費無料

16.数年以内に郊外の観光都市からの高速道路が開通

17.2030年までに高速鉄道も開通し、隣町に駅ができる

以上、話に出た順。

前向きな情報もあれば、やっぱそれ課題だよねってことも見えてきます。家とか農業研修とか免許とか教育環境とか医療体制とか税制とか初期投資とか初期投資とか初期投資。でもやると決めたので進路は変えません。まっすぐひとつづつトライあるのみです。ただし重要度・喫緊度を冷静にラベリングすることは必要で、初期投資を含む全てを来年春までに完了しなければいけないかというと、それは走りながら調整する領域です。

今回の打ち合わせではあえて触れませんでしたが、この街を拠点に事業活動するのであれば、まず法人化して開業しないといけません。個人事業主の蒸留家とか聞いたことないしちょっと無理そうです。事業者としてやらなきゃいけないこと、やっておいた方がいいこと、知らないと損する税制や補助制度の知識、家族を路頭に迷わせないための会計・財務・最低限の経営センス。持っていないことばかりで、今の自分が持っていることで何が逆に使えるのって疑問が湧くほどです。冷静に考えるとその疑問は当然であり、今気づいて焦るなって話なんですけどね。資本主義や経済合理を基本思想として活動する会社組織に全身浸かることで、職を求めて社会に出た私(たち?)は"職人"ではなく"労働力"にあっけなく成り下がっているんだな、的な感想文はここで書くべき主題じゃないので、関連書籍や言説を各自探すということとします。はい次。

気づいてはいけない気づき

役所の方々からたくさんのことが聞けました。100までは聞けないにせよ、全方位的な課題提起につながるとても有意義な時間であったことは間違いありません。

しかしここで1つの罠に陥っていることに気づきます。得た情報量が多いことに慢心し、最も肝心なことがぼんやりしたままであることに。よくありますよね。網羅的に作業をこなすと、地図が広がっただけで解像度がむしろ下がる、みたいなこと。「たくさん聞けました/いろいろ分かりました」という報告は半信半疑で聞いた方がお互いのためになる、という都内会社員の数少ない学びのひとつです。

何がぼんやりしたままか。

そう、蒸留酒の免許取れるの?って話。

この前提が崩れる(免許取れない)とさすがに厳しいです。主人公が登場する前に打ち切りになる漫画さながらです。役所の方々とのzoom会議では醸造酒のことは度々話に出たのだが、もしかして蒸留となると前例がない?特区でもないし補助制度もないから役所といえど門外漢?そもそも新規に取得できないもの?そんな一抹の不安が瞬時に百花繚乱する私の悪い癖が出始めますが、気を取り直しましょう。

「指定果実を使って蒸留酒をつくる」までの具体的ステップを聞くことはできなかったので、それなりのハードルであったり制度上の参入障壁があることは推察できます。となれば酒造免許取得に関していえば詳しく聞く相手が違います。国税局の酒税担当の方に聞かないとですね。餅は餅屋。

次回、「教えて酒税担当者さん(仮)」です。

#39歳の転職活動

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