ASKAニューアルバム「Breath of Bless」感想~其之二

それではASKAニューアルバム「Breath of Bless」の全曲感想其之二です。

(文中『』内の引用の歌詞は全て作詞・ASKA)

※本文中、現在開催中のツアー「higher ground」の内容にふれる部分があります。

⑥「百花繚乱」(新曲)

今ツアー「higher ground」で先行披露された楽曲。この曲を聴いて多くの人が本作への期待が一気に膨らんだのではないか。タイトルのごとく、色とりどりの花が咲き・舞い・散る、そんなことを感じさせる音。前に見た「teamLab」の光の洪水を思い出す。

(イメージ)

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お城の中、光の氾濫、咲き誇る花、その中で剣を構えるASKA。そんな映像が目に浮かぶ。

『入れ替わる 蘇る
夜に舞う そして未来に咲く

なぜに誰に伝えたいのか 忙しい夢幻
流れ消える景色の向こう 百花繚乱』

幻想的で妖しげな世界。この曲にはすごく「相方」のコーラスが欲しくなるのは、ここにも「ひとりチャゲアス」を感じるからだろう。どこか懐かしく、それでいて新しい、名曲がまた一つ誕生した。ライブで聴き続けたい曲。

⑦「イイ天気」(2018年6月配信曲)

スリリングな「百花繚乱」の次には穏やかな空気を感じるイントロで始まる「イイ天気」

『コテ・メン・ドウ そして好き
誰よりも君が好き』

音楽と共に進むべき道と決めた「剣道」。それを結び付ける歌詞。この歌詞はASKAにしか浮かばないだろう。「どうしたの?」が大人の恋愛ならば、こちらは青空がよく似合う爽やかな恋愛。アルバムも中盤に差し掛かり、ほっと一息、リラックスして聞ける曲。

⑧「虹の花」(2018年3月配信曲)

先行配信の中で一番初めに配信された曲。「平成」を飛び越えて「昭和」を感じさせるような曲。突き抜けて明るくポップな曲。

『空を飛べないことは仕方がない
だから僕らには 飛行機がある

立ち向かっても儚く散ってしまう
けれど心には剣がある』

『海の彼方に 虹の花が咲く島があるのは本当さ
コップですくった海の水に 命があるのは本当さ』

これぞASKA流POPともいうべきか、多くのアイドルに曲を提供してきたソングライターとしてのASKAの本領発揮。いきなり『空を飛べないことは仕方ない』と言った後で、『飛行機がある』と希望を述べ、『儚く散ってしまう』と言いながらも『心には剣がある』と歌う。現実を見てこそ、『海の彼方に 虹の花が咲く島があるのは本当さ』とファンタジーを歌う。そのバランス感覚がASKAたるゆえんなんだろう。

⑨「じゃんがじゃんがりん」(新曲)

タイトルのインパクトが凄いが、皮肉なことにこのリリースのタイミングでまさに「旬な曲」となってしまった。

『痛い 痛い 人がツンと痛い
危ない 危ない すぐ隣が危ない

ニュース番組は大騒ぎで 残忍な話をしてる
知らない人が怖い』

今のこの世相(2020年3月)の事を歌ったとしか思えない歌詞。パニックにより、人が人に対する優しさを無くし、自分の事しか考えられない、言葉の刃を振りかざし、疑心暗鬼に囚われる。ASKAは預言者か?ともいうべき歌詞に背筋が寒くなる

『どこへ行くのか じゃんがじゃんがりん
僕らにはわからない

どんな思いで じゃんがじゃんがりん
未来に向かえばいいのか いいのか』

『じゃんがじゃんがりん』というどこか怪しげな響きが、今の世の危うさを表している。意図せぬ所で現実と歌の世界がリンクするASKAの不思議な力を感じる。

⑩「歌になりたい」(2019年11月Sg)

昨年10年ぶりのシングルとしてリリースされ、リリース前のシンフォニックの追加公演で初披露され、バンドツアー、そして今ツアーでも核となっている曲。楳図かずお氏の漫画「漂流教室」が映画化されたとしたら、その主題歌をイメージして書かれた曲で、今のASKAのテーマ曲ともなっているであろう曲。MVの影響もあるのだろうが、荒廃した未来の大地に一筋の光、そして聴こえてくるメロディ。目を細めて光を見ると、「音楽の化身」となったASKAがいる。。。そんな光景が浮かんでくる。「じゃんがじゃんがりん」から続けて聞くと終末からの再生をも感じさせる。

『もし僕に もし君に役目があるのなら
この地上の この星のこの宇宙の歌になりたい

どうして僕らは 愛を求めながら
寂しい方へと 歩いてゆくんだろう

ずっと僕らは 命の中にいる
時を超えても 命の中にいる』

音楽を伝え届けつづけ、音楽そのもの、歌そのものになること、それこそが自分の使命と歌うASKA。大きな時の流れの中で、命を繰り返しながら、音楽となること。様々な苦難を乗り越え、辿り着いた一つの答え。それこそが「歌になりたい」という事なのだろう。

このアルバム、最初にも書いたけど本当にいろんなものが詰まってるよな。。。先行配信曲6曲、シングル曲2曲、そしてライブで先行披露された曲2曲が収録されているので、ある意味では「BEST盤」的な感じもするからか、とにかく幅広い。『あえてテーマは決めない』と語っていたASKA。良い意味で統一感がないが、それでいて1枚のアルバムとして通して聴くと、世界観が確立されている。なんかすごいアルバムです。

さあ、其之三に続きます!

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