ASKAニューアルバム「Breath of Bless」感想~其之一

ASKAのニューアルバム「Breath of Bless」これは間違いなく、過去最高のアルバム!

積み重ねてきたキャリアの全てをすべて詰め込んでいるようなアルバム。

詰め込み過ぎて「えっ?これが一枚のアルバムなの?」ってくらい、バラエティーに富み、かつ、ボリュームいっぱいのアルバムに仕上がってる。

インタビューで『アルバム発売の時に「NEVER END」と比べられる事がしばしばあるが、作り手、聴き手が「NEVER END」を超えたと言い合える』と語っている。(個人的には既発のソロアルバムでは『ONE』が一番好き)「NEVER END」の時にASKAは「ひとりチャゲアス」といったことを言っていたが、まさに完全なソロになった今作では「ひとりチャゲアス」を感じさせるような楽曲もちらほらと。

そんなアルバムを1曲1曲見ていきたいと思う

(文中『』内の引用の歌詞は全て作詞・ASKA)

※本文中、現在開催中のツアー「higher ground」の内容にふれる部分があります。

①「憲兵も王様も居ない城」(2018年7月配信曲)

6か月配信楽曲の一つ、ライブではバンドツアー「Made in ASKA-40年のありったけ-」で歌われた曲。2009年にチャゲアスが無期限活動した際に「L&R」という曲で当時の心情を歌い、ファンに思いを伝えたってことがあったけど、この曲も会報等で今のチャゲアスに対する思いという事を伝えている。この曲の発表の約1年後に「チャゲアス脱退」という形の結論を出すのだが、この事はその1年前からASKAが望んでいた事なんだとこの曲を聴けばわかる。

ただそれは「CHAGE and ASKA」を動かすためのもの

『乗せ換えろよエンジンを 動かなくなるその前に
運命です 寿命ですって 誰にも言わせないように』

直球ドストレート、今の形では動けなくなる、エンジン変えて

『トランプで組み立てた お飾りのような城を出る
憲兵も王様も居ない城』

今の環境を脱出しようって呼び掛けている。自分は一足先に城を飛び出たからと。アルバム1曲目からASKAの決意が伝わってくる。

②「修羅を行く」(2018年5月配信曲)

2曲目も先行配信曲「修羅を行く」。ライブでは、シンフォニックツアー、そして今ツアーでも披露されている。「修羅」とは争いの絶えないと言われる「修羅道」の事。ここ数年のASKA自身が歩んできた道か。ライブではその道を前を見据え、堂々と歩く様なASKAの姿が強烈に焼き付いた曲。

『偉そうな言葉にゃ温度がない 戦車な勇気で修羅を行く
疑えば疑うほど 未来ってヤツは消えちまう
紛れ込む 滑り込む 危険で』

『優しい気持ちで祈っても 天から刃が刺してくる
組み立てても壊されても 繰り返すことが満足と言う
試されて 苦しんで 微笑んで』

これはまさにASKAが戦ってきた道を表しているような歌詞。自分を信じ、勇気をもって進むことで、切り開いてきた道。この曲が発表された当時を考えると、その自負であり、立ち向かっていくという決意の表れでもあるかのよう。

③「どうしたの?」(新曲)

1・2曲目とガラッと変わりASKAらしい優しい曲調のラブソング。以前に比べ直接的な表現が増えたと感じる近年のASKAのラブソングだが、歌詞を見てみると一筋縄ではいかない恋愛のようだ。

『君の眠る顔を見るのが好きだ 傍で遠くに居る人
大事なものと大切な人を守れてる そんな気持ちになる
試されているみたい』

『難しいことが世間にはいっぱい
そして何にもないこの部屋は
君と僕とでいっぱい』

『傍で遠くに居る人』・『難しいことが世間にはいっぱい』、それでも『君と僕でいっぱい』の部屋にいる二人の時間。大切な時間が流れているんだろうな。その瞬間を切り取ったようなラブソング。色々想像してしまうよね。

④「未来の人へ」(2018年4月配信曲)

こちらも配信曲で、ライブではシンフォニックで歌われている。『あれは僕が21歳のとき』の語りで始まる。その瞬間にノスタルジックな気持ちになるが

『人はよく昔を語るとき
「あの頃は、良かった」って言うよね

でもね、39年前に見た「あの日の空」と「今の空」は、
何にも変わっちゃいないんだ

もし、今の空が少しでもくすんで見えたとしたら
変わったのは自分なんだよ』

語りの部分のこの言葉は、単に「懐かしがること」を許してくれない

『未来の人よ ずっと僕たちは
今日まで緑に 囲まれてるよ 

今 僕たちは愛に気づいてる
あなたの元へ 届いてるか』

『好きな人は ここに居ます
生まれた愛は そこに行きます

未来の人よ 古の人よ
どちらに浪漫を 感じればいい』

温かい曲調ながら、過去から未来へつなぐ「今」を生きる自分たちが、次の世代にしっかりと「愛」をつないでいけるか、そんなことを突き付けられている様に感じる。

⑤「忘れ物はあったかい」(新曲)

本作の中で唯一提供曲として書かれた曲。ASKAのブログによると実現はしなかったけど、1年だけの再結成を考えていた「光GENJI」への提供曲だったようで

『あの頃の僕の毎日は かけ算のようだった
すぐに角が取れてしまう オセロみたいだった

止まらない 迷わない 崩れない

歩行者天国のような 囲いの中の自由
そんな窮屈さも無敵 笑えた』

まさに一時代を作った彼らの事を歌っている歌詞。と同時にやはり時代を作ってきた「CHAGE&ASKA」の事のようにも感じられる。

『それでもどこかで感じてた
それでもどこかで感じてた
夕暮れの目覚めが怖かった きっと僕はきっと

忘れ物はあったかい なくした物は見つかったかい
何も変わらずに Tシャツもジーンズもスニーカーも履いているよ』

頂点にいるからこそ感じる不安。そして、時とともに変わっていく事を感じながら、あの頃と変わらない自分を再確認する。「再結成」にふさわしい曲。それは「光GENJI」だけでなく、、、だからASKAが歌いたいと思ったのでは、と考えてしまう(考えたくなってしまう)

歌詞カードには記載されていないが『淡いブルーの』・『ガラスのパラダイス』と歌っているのは、間違いなく「STAR LIGHT」・「ガラスの十代」・「パラダイス銀河」から。そんな遊び心がまた良いよね。曲も大人になったメンバーが歌うのにふさわしい感じの大人のロック。そしてコーラスの掛け合いなんかは「光GENJI」でもあり、「ひとりチャゲアス」っぽい感じでもある。

ふと25周年の「熱風コンサート」での「パラダイス銀河」のセルフカバーを思い出してしまった。

思ったよりも長くなってしまった。。。全15曲なのでとりあえず最初の5曲まで。次は6曲目の「百花繚乱」~10曲目の「歌になりたい」まで書いてみようと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?