平成30年度秋季近畿大会決勝「龍谷大平安-明石商業」の展望

こんにちは遊撃です。

3週間に渡って開催された近畿大会も、いよいよ残すところは決勝戦のみとなった。並み居る強豪を倒して決勝に進出したのは、京都3位の龍谷大平安と、兵庫1位の明石商業だ。今回は、両校のここまでの試合や選手の成績を振り返りながら、試合の展望を書いていく。

まずは両校の勝ち上がりと個人成績を見ていく(1回戦と準々決勝の戦評は準決勝の展望記事に載せたのと同じものです)。

○龍谷大平安(京都③)
1回戦 4-3天理(奈良①)
龍谷大平安は初回、天理のエース桂田の立ち上がりを攻め、北村・多田・水谷の3連打で2点を先制。4回には豊田の内野安打、6回は中島の二塁打で効果的に追加点を挙げ、終始試合を有利に進めた。先発の豊田は9回に天理の4番川端に2点本塁打を浴びたが、9回途中を散発の5安打3失点と好投。低めにボールが集まっていたのが印象的だった。

準々決勝 5x-4市立和歌山(和歌山②)(9回サヨナラ)
龍谷大平安は2点をリードされた4回裏、2死2塁から8番羽切の左越2点本塁打で同点に追いつく。8回表に市立和歌山にリードを許すも、5番奥村のライトへの犠牲フライで再び同点に。そのまま迎えた9回裏、2死2,3塁から奥村が左越に安打を放ち、龍谷大平安がサヨナラ勝ち。2度リードを奪われる苦しい展開だったが、見事な粘りを見せた。3回途中からリリーフした野澤は6回2/3をわずか2安打に抑え込んだ。

準決勝 7-0履正社(大阪①)(7回コールド)
龍谷大平安は3回、2番北村の中前適時打で先制すると、その後2死1,2塁から5番奥村が左越3点本塁打を放ち、一気に4点を挙げた。5回には4番水谷にも左越2点本塁打が生まれて履正社を突き放すと、最後は制球の定まらない清水から押し出し四球を選び、コールドを決めた。先発した野澤は、履正社の強力打線を相手にわずか3安打で完封。凄みが出てきた。

個人成績(△は左打者、スタメンは準決勝のもの)
1中△中島⑧ 13-3(二塁打1) 打点1
2二 北村④ 7-3(二塁打1) 打点1 四球2 死球2 犠打2 盗塁4
3捕 多田② 8-1 四球4 犠打1 盗塁1 
4右 水谷⑨ 12-7(本塁打1,三塁打2,二塁打1) 打点5 四球1
5三 奥村⑤ 10-4(本塁打1) 打点5 四球2 犠飛1
6一△三尾③ 8-3 打点1 四球3 死球1
7遊 羽切⑥ 9-1(本塁打1) 打点2 四球2
8左 半保⑦ 11-3(二塁打1)
9投△野澤⑪  5-1(三塁打1) 犠打1
 投△豊田①  5-1 打点1
 
投手成績(△は左腕)
・⑪野澤△ 投球回14 球数168 被安打5
与四球1 与死球1 奪三振9 失点1 自責点1
・①豊田△ 投球回11 球数162 被安打12
与四球5 与死球1 奪三振4 失点6 自責点6

チーム成績(3試合)
得点:16 失点:7 安打:27 本塁打:3
三塁打:3 二塁打:4 四球:14 死球:3
犠打:4 犠飛:1 盗塁:5 三振:9

初戦、準々決勝は痺れるような接戦をモノにし、準決勝では履正社を投打に圧倒した。戦うごとにチームの完成度が上がり、投打がかみ合ってきた。

○明石商業(兵庫①)
1回戦 6-4京都国際(京都②)
明石商業は序盤からリードを許す苦しい展開だったが、2-4で迎えた8回にチャンスが訪れる。1死1,3塁から、9番宮口のスクイズは野選となり1点を返す。なおも2死1,2塁から、2番水上がレフト前へヒットを放つ。これを京都国際のレフト早が後逸。打者の水上も一気に生還し、6-4と逆転に成功。苦しみながらも、初戦を突破した。

準々決勝 4-0報徳学園(兵庫③)
中盤までは宮口と報徳学園の林の息詰まる投手戦が展開された。均衡が破れたのは7回。明石商業は1死1,2塁から8番岡田のライトへの二塁打で先制すると、続く9番宮口の右前2点適時打でこの回一気に3点を挙げた。8回にも追加点を挙げて報徳学園を突き放すと、投げては宮口が4安打で完封。県勢同士の選抜を懸けたサバイバルは、明石商業が1位校の貫録を見せつけた。

準決勝 12-0智辯和歌山(和歌山①)(5回コールド)
明石商業は1点リードの2回に、1番来田と2番水上二者連続本塁打を含む6連打の猛攻を見せ、一気に7点を挙げた。その後も来田の2点適時三塁打などで着実にリードを広げ、5回で12得点を挙げてコールド勝ちを収めた。先発した中森は、相手打線に助けられた部分はあったものの、3安打で完封。今日はいい感じで力が抜けていた。

個人成績(△は左打者、スタメンは準決勝のもの)
1中△来田⑧ 12-4(本塁打1,三塁打1,二塁打1) 打点5 四球1
2捕 水上② 12-5(本塁打1) 打点1 四球1
3三 重宮⑤ 11-7 打点3 犠打2
4右△安藤⑨ 12-3 打点1 四球1
5左 溝尾⑦ 10-3(二塁打1) 打点3 死球1 犠打1
6遊△河野⑥ 10-6(三塁打1,二塁打2) 打点2 四球1 犠打1
7二 岡田⑱ 10-4(二塁打1) 打点1 犠打1
8一 清水④ 5-1 四球1 犠打1
9投△中森① 1-0 四球3
 一 水田③ 5-2
 投 宮口⑩ 4-1 打点3 犠打1
 打 横山⑭ 1-0

投手成績
・⑩宮口 投球回15 球数251 被安打8
与四球5 与死球1 奪三振17 失点1 自責点1
・①中森 投球回8 球数147 被安打9
与四球5 与死球0 奪三振8 失点3 自責点3

チーム成績(3試合)
得点:22 失点:4 安打:36 本塁打:2
三塁打:2 二塁打:5 四球:8 死球:1
犠打:7 犠飛:0 盗塁:0 三振:3

初戦は終盤まで苦しむも、準々決勝、準決勝では強さを見せつけた。多彩な攻撃のバリエーションに加え、畳み掛けることの出来る打力も兼ね備えている。

【試合の展望】
両校ともに「単純なミス(=ただの失策)」は見られるが、守りの完成度は高く、JK(準備・確認)もしっかりと出来ているので、勝負所ではミスが出ない。投手も平安の①豊田・⑪野澤の両左腕、明石商業の⑩宮口は制球力がよく、安定感もある。打線の状態は上向きではあるが、そうそう大量得点は望めない。3,4点を争う、締まった、レベルの高い試合になりそう。

龍谷大平安は、①豊田と⑪野澤の投手陣が大きな成長を見せている。特に野澤は、私が見に行った府大会2試合(2回戦対立命館宇治、準決勝対京都国際)ではいずれも制球を乱し、早いイニングでノックアウトされた。それが近畿大会に来てからは3試合、14イニングを投げて被安打は5、与えた四球が1つで1失点に抑えているのだから見違える。この好投のワケは左右問わず「インコースへの直球」をしっかりと投げ込めているからだ。追い込んでからの決め球としても、次のチェンジアップの布石としても有効なボールを、高い精度で投げることが出来ている。このボールなくして野澤の好投は語れない。

明石商業の打線はバットに当てるのがうまく、簡単には三振をしてくれない(3試合でわずかに3つ)。だからこそ、三振を狙うよりは、チェンジアップでタイミングを外してゴロを打たせる投球をしていきたい。その鍵を握るのは、やはりインコースの直球だ。

打線は、準決勝では4番の水谷と5番の奥村に本塁打が出た。徐々に水谷に「打席での雰囲気」が出て来たのを感じているので、今日も楽しみだ。奥村の勝負強さも光っている。準々決勝のサヨナラタイムリーは勿論、準決勝で放った本塁打も、カウント3-1から直球に張って狙い撃ちしたものだった。このあたりの鋭さは親譲りか。水谷奥村と、打つべき選手に当たりが出ているのは大きい。

その2人の前でチャンスを演出しているのが2番の北村。センター方向中心に、基本に忠実な打撃が持ち味だ。追い込まれてからは粘りを見せるなど、投手からしたら嫌な打者だろう。盗塁も4つ決めており、塁に出ると足も使える。チームに欠かせない存在だ。ただ、その脇を固める1番の中島と3番の多田に当たりがないのが不安材料。彼らが出塁できると、平安の得点力は一気に上がる。

チーム全体で4つの犠打を決めているが、決して犠打だけには頼らず、エンドランなども絡めてくる。中森にしろ、宮口にしろ、彼らからそこまでの連打が望めない分、この試合も足を使ってチャンスを広げたい。

守備は準決勝では4失策。確かにサード奥村の守備は不安定だが、それ以外はそこまで悪くない。きっちり修正できるはず。
平安の守りの素晴らしいところは確認の声掛けが徹底できている点だ。準決勝の履正社戦、無死1塁から⑪野澤が牽制球を投げたときに、打者が少しバントの素振りを見せた。その瞬間「バントあるぞ!」の声が響き、守備位置の確認を行った。副主将のセカンド北村だけが確認の声を出すのではなく、ショートの羽切やファースト三尾、1年生のサード奥村も含め、内野手全員が声を掛けていた。このあたりの徹底ぶりは流石。こういうJK(準備・確認)がしっかり出来る学校は、簡単には崩れない。平安の完成度の高さの理由の1つだ。

明石商業はここまでの3試合で失点はわずかに4。これは初戦の京都国際戦での失点で、準々決勝の報徳学園戦では⑩宮口が、準決勝の智辯和歌山戦では①中森がそれぞれ完封勝利を挙げている。中森がまだ本調子ではないものの、この2枚看板は近畿でも屈指の存在になりつつある。
ここまでは特に⑩宮口の好投が光っている。右のサイド気味のスリークォーター、スライダーとシンカー(左打者の外に逃げていくチェンジアップ)を軸に投球を組み立てる。最速140キロに迫る直球にも力がある。ここまで15イニングで17奪三振と、三振奪取能力も高い。

打線は3番の重宮と6番の河野が当たっている。当たりの無かった1番の来田にも、準決勝で本塁打を含む3安打が生まれ、全体的に上向きと言って良いだろう。初戦の京都国際戦でも、準々決勝の報徳学園戦でも、準決勝の智辯和歌山戦でも、いずれも1イニングに畳み掛ける攻撃を見せた。中でも、昨日の2本の本塁打を含む6連打で一挙7得点した攻撃は圧巻だった。打力も素晴らしいのだが、この攻撃にはいずれも犠打やエンドランが絡んでいる。自分達の攻撃を貫いた結果が、大量得点に繋がっているのだろう。

もう1つ、特筆すべきは簡単に三振をしない点だ。ここまでの3試合でわずかに3つ。早いカウントから打っていくことも理由の1つではあるが、追い込まれてからも粘り強い打撃を見せている。決勝でもそういう打撃を見せたい。

明石商業といえばバントのイメージがあるが、決して簡単に送ってくるわけではない。走者を3塁に置いた場面では、スクイズの構えを見せて揺さぶり、最後はエンドランを仕掛けるなど、多彩さと「嫌らしさ」も兼ね備えている。相手投手を揺さぶる攻撃を見せたい。

守備も堅い。こちらもイージーな失策はあるのだが、ここぞという場面ではミスが出ない。もう一点素晴らしいのはカバーリングだ。どんな場面でも、必ずカバーに入っている。あまり目立たないが、こういうプレーがあることで、ミスが出てもその影響は最小限に止めることが出来る。このあたりの準備は流石。多彩な攻撃と「嫌らしさ」や準備といったところは、明石商業の完成度の高さの理由の1つだ。

この試合のポイントは「先制点」だ。大量点や、打ち合いになることがあまり考えられない以上、先に点を奪って試合の主導権を握ること、そしてそのリードを最大限に生かした守備をすることが鍵を握りそう。「リードを生かした守備」というのは、先のアウト欲しさに無理なプレーをせず、ある程度の失点はOKなので、取れるアウトをしっかりと取る守備のことだ。1回戦の近江-報徳学園戦(試合レポートはコチラ)で、報徳学園が見せていたような守備が出来ると、楽になるだろう。

これらを踏まえて、試合の展開を予想する。
序盤は両投手の投げ合い。5回までは0-0かロースコアで1点差くらいだろう。試合が動くのは7,8回。明石商業がスクイズなど、小技を足掛かりに畳み掛けそう。平安は追い上げることができず、4-1で明石商業の勝利と予想します。

これはあくまで現時点での予想であり、試合前ノックや当日の雰囲気を見たらまた大きく変わる可能性もあります。なので、当日の私のツイートも楽しみにしておいてください!

激戦の近畿大会。その決勝に残ったのは、完成度の高い2チームだった。近畿の野球のレベルの高さを象徴するような決勝戦になることを期待している。

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