H30/10/14 秋季東北大会2回戦「羽黒-横手」試合レポート
どうもこんばんは遊撃です。
秋田で観戦した東北大会のレポートを上げていきたいと思います。今日は2回戦「羽黒-横手」の試合になります。
今夏、久しぶりに甲子園の舞台に帰ってきた山形県の羽黒高校。その原動力となったのは、2年生エースの篠田怜汰だ。甲子園では初戦で奈良大附に敗れたものの、彼のポテンシャルの高さは存分に発揮された。この日も彼の投球を楽しみにしていたが、2季連続の甲子園を目指す東北大会の初戦は課題の残る投球となった。
平成30年度秋季東北大会2回戦(さきがけ八橋球場)
羽黒(山形②)14-6横手(秋田②)
羽黒 313 200 302 計14 H21 E1
横手 020 101 200 計6 H11 E6
羽黒スタメン
1中 中島⑧
2左 北原⑦△
3遊 日下部⑥△
4三 鈴木⑤△
5投 篠田①
6右 浅石⑨
7一 伊藤⑯△
8二 齋藤④
9捕 本田(旭)②
横手スタメン
1三 高橋(秀)⑤
2二 佐々木⑭
3中 戸田⑧
4捕 細川②
5一 戸沢③
6左 藤井⑦
7右 小原⑨
8遊 高山⑥
9投 原①
(〇数字は背番号、△は左打者)
【試合の振り返り】
羽黒の先発①篠田は178cm,70kg。手足が長く、公称よりも高く見える。スラっとしており、いかにも投手らしい体型だ。オーバースローの右腕から繰り出されるストレートの最速は145キロだが、この日は140キロ出ていたかな、という具合。若干シュート回転していたのも気になった。変化球はスライダー、チェンジアップ、スローカーブか。この日はストレートとスローカーブを中心に投球を組み立てていた。基本的には直球の球威で押していたが、ボールは終始高かった。その高めの直球を横手打線に狙い打ちされた。
横手の先発は①原。序盤から制球に苦しみ、甘く入ったボールは羽黒打線に捉えられ、自分の投球ができなかった。先頭の中島に甘い球をいきなりセンターへ運ばれ、そこからガタガタと崩れていった。ガッチリとした体形で、ボールも悪くなかっただけに、中島に対してもう少し丁寧に入っていれば、また違った展開になっていたかもしれない。
羽黒打線が初回から横手に襲い掛かる。先頭の中島がセンターへの二塁打を放つと、それを皮切りに敵失と5番篠田の右翼線2点適時二塁打でいきなり3点を先制。試合の主導権を握った。
2回にも、1番中島と4番鈴木の2本の二塁打で1点を追加。ここで横手は①原を諦め⑩渡辺がマウンドへ上がる。後続は抑えて、この回は1点でしのぐ。
その裏、横手は四球で出た走者をバントで送り、6番藤井の右前適時打、7番小原の右中間への適時二塁打で2点を返す。いずれも「ファーストストライク、高めの直球」を狙った見事な打撃だった。
羽黒は攻撃の手を緩めない。3回は1番中島の早くもこの日3本目となる右越2点適時二塁打と、3番日下部の右前適時打でさらに3点を追加。7-2とした。
4回には8番齋藤の左前適時打、1番中島の4打席連続安打となる中前適時打で2点を追加。9-2とし、コールドが視野に入る点差になった。4回途中から横手は⑩渡辺に替わり⑪高橋(藍)が登板。後続をしっかりと切った。
横手の⑪高橋(藍)は左のオーバースロー。身長は163cmと小柄だが、カーブをうまく使い、羽黒打線をうまく打たせて取った。直球は120キロ前後。コントロールもまずまずで、全体的に低めに集まっており、右打者のインコースに直球を投げ込むこともできていた。もう少し直球に球威が出てくれば、カーブがさらに生きるはず。冬場に走り込みと投げ込みを頑張ってほしい。期待したい投手の一人。
その裏、横手は反撃に出る。この回先頭の4番細川が右前安打で出塁すると、1死後、6番藤井がセンターオーバーの適時二塁打を放ち、1点を返す。これも「ファーストストライク、高めの直球」。その高めに振り負けない、見事なスイングだった。しかし、後続は続かず1点どまり。
5回、6回と、羽黒打線は横手の⑪高橋(藍)の前に、走者は出すもののあと一本が出ない展開が続いた。緩いカーブをうまくとらえることができず、泳いだ結果の凡打が目立った。
6回裏、横手は1死1塁から、再び6番の藤井が中越適時二塁打を放つ。これもまた「ファーストストライク、高めの直球」だった。横手が1点を返し、9-4とする。
流れが徐々に横手に傾きつつあった7回、羽黒は1死後、5番篠田、6番途中出場の加藤の連打でチャンスを作る。打席には代打の山田。ここまで丁寧に投げてきた横手の⑪高橋(藍)の高めに浮いた失投を逃さなかった。打球はレフトスタンドへ飛び込むスリーランホームラン。山田にとってはこれが公式戦初本塁打となった。3点を追加して12-4とし、コールドに向けた7回裏の守備を迎える。
7回裏、横手はここまで好投を見せていた⑪高橋(藍)に代打古村を送るも、三振に倒れる。1死後、1番高橋(秀)が2ストライクから粘りを見せ四球を奪う。続く代打の小田嶋は、追い込まれながらも、アウトコースの直球に食らいつき、しぶとくライト前へ運ぶ。続く3番戸田は四球で1死満塁とすると、4番細川がライトへ犠牲フライを放ち1点を返す。12-5。しかしこれで2死1,3塁。あとアウト1つでコールドゲームが成立する。この場面で5番の戸沢が勝負強く右前へ運び12-6に。この回でのコールドを回避した。
8回表、⑪高橋(藍)に替わってマウンドへ上がったのは先ほど代打で出た⑮古村。この⑮古村は先頭から2者連続で四球を出す苦しいピッチング。しかし、続く4番の鈴木は初球を打って遊ゴロ併殺。5番の篠田も打ち取り、無失点で切り抜けた。
だが、横手にこれ以上反撃する力は残っていなかった。9回表には2死2,3塁から、羽黒の1番中島に、この日5本目の安打となる右前適時打を許す。ライトが打球の処理を誤る間に2塁走者も生還した。横手は随所で粘りを見せたが、羽黒の前に力負け。
試合終了
羽黒14-6横手
21安打を放ち14得点を挙げた羽黒が横手に打ち勝ち、準々決勝に進出した。
【投手成績】
〇羽黒
・①篠田 投球回9 球数156 被安打11
与四球5 与死球0 奪三振7 失点・自責点6
〇横手
・①原 投球回1と1/3 球数51 被安打5
与四球4 与死球0 奪三振1 失点・自責点4
・⑩渡辺 投球回2 球数42 被安打7
与四死球0 奪三振0 失点5 自責点2
・⑪高橋(藍)△ 投球回3と2/3 球数59 被安打5
与四球1 与死球1 奪三振1 失点・自責点3
・⑮古村 投球回2 球数34 被安打4
与四球3 与死球0 奪三振1 失点・自責点2
【雑感】
羽黒が打ち勝った印象だが、はっきり言えば「コールドにしなければならない」ゲームだったのは間違いない。21安打で14得点を挙げてはいるが、残塁の数は17。実際、1イニングにおける最多得点は3であり、集中打が見られたわけではなかった。得点を取った後のチャンスで「もうひと押し」が出来ていれば、早い段階でコールドにできていたはず。そうすれば、エースの篠田を少しでも良い状態で翌日に登板させられたはずだ。
篠田は結局この日156球を投じた。元々コースにビタビタと決まるタイプの投手ではないものの、四球が多い印象はなかった。しかしこの日は与四球5。思い通りに投げることができない場面が多く、打者有利のカウントになることが多かった。
バッテリーにも1つ課題を与えたい。この日横手の6番藤井は3安打を放ち、うち2本はセンターオーバーの二塁打。3打点を挙げる活躍だった。この3本の安打は、いずれも「ファーストストライク、高めの直球」。1,2打席目はまだ分かるが、それを打たれた上で3打席目に直球から入るのは安易すぎる。案の定その直球が高めに浮き、藤井に捉えられ、センターの頭上へ運ばれた。それまでの打席結果から考えても、仮に低めを狙っていたとしても、初球を直球から入るのはあまりにも安直すぎる。その後はスローカーブを使ってカウントを整えていたが、もう少し打者や場面も考えながらの配球をしてもらいたい。痛打される前に出来ることはあるはずだ。リードしているのが「篠田怜汰」という好投手だからこそ。
逆に勇気をもってファーストストライクから狙っていった横手の藤井は見事だったと思う。球威のある篠田の直球にも振り負けておらず、何度もチームを救った。
横手は力負けではあったが、チームとしてもよく粘った。7回の執念の2点には心を打たれた。失策は6個出て、結局最後は大差がついてしまったが、コールドにせず9回まで戦えたことは大きな収穫になるはずだ。特に「無かったはず」の8,9回に出場した選手にとっては。この2イニングで1人の投手、1人の野手が「東北大会」を経験した。ましてや相手は夏の甲子園に出場した強豪校。エースは後にプロに行くかもしれないような好投手だ。試合に出るのと出ないのとでは大違い。この経験を大きく生かしてほしい。
【まとめ】
羽黒の1番中島と4番鈴木は、今夏の甲子園でもレギュラーとして出場していた。この日は中島が5安打、鈴木が3安打と活躍を見せた。
特に中島のファーストストライクを積極的に打っていく打撃は見事だった。若干トップを作るのが遅い印象があるが、その形が綺麗なので、よくボールが見えているのだろう。
中心選手である彼らがもっともっと打線を引っ張っていく必要がある。そして、もう一つ非力さの見えた下位打線のパワーアップも、今後山形県内だけでなく、東北、そして全国で勝つ上では重要になってくる。
エースの篠田も好投手であることは間違いないが、やはり下半身にまだ弱さを感じる。それ故に粘り切れず、低めを狙った球が高く浮くことにつながっている。この冬はしっかりと下半身強化に努めてもらいたい。
横手は、東北大会の舞台で羽黒と9回まで戦えたことをどこまで糧に出来るか。この夏は金足農業が準優勝したことも大きな刺激になっているはずだ。公立ながら、まだまだ伸びしろを感じたチーム。春以降の活躍にも期待したい。
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