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コメントいっぱいだぁ

雨がポツポツと降っている。
そんな中、いつもの日課である、SNSに投稿されたコメントを閲覧していた。
たくさんのコメント欄に、色々な言葉が書かれていて、いつまでも残り続け、忘れられないモノ。

雨のせいで、ジメジメする。
体にまとわりつく衣服が鬱陶しい。

でも、今日は、少しだけ違う。
ずっと前から天気予報を確認し、この日を待った。

傘を持たずに、目の前に続く道を歩く。
雨に濡れ、下着がうっすらと透ける。
視線を感じる。

この日のために、男性の目を引く下着を調べた。
私は、セクシーカラーと言われている、ビビットピンクを選んだ。
このどんよりとした天気に、ピンクは映える色。

行きかう人の、行きかう男達の視線を感じる。
だけど、私が欲しいのは、彼らではない。
私が欲しいのは、まだ見ぬ、あの人の瞳だけ。

どんな顔をしているのだろうか。
どんな色の目をしているのだろうか。
どんな言葉を話すのだろうか。

彼のことで頭の中がいっぱいだ。

時計の針を見る。

22時46分。

あの日も、この時間だったのだろうか。

スマホの画面を確かめる。

『やっぱり、この時間だ』

少しだけ、笑みを浮かべながら、

ポトリと雫のように呟いた。


「いやぁ~!やってられんねぇ~!!」

野太い声を出しながら、男が現れた。

『あの人だ』

一目で分かった。

私の想い人。

少し体をフラフラさせながら、彼に近づいていった。

「マジでねぇわ!!クソ!!シネ!!」

荒々しく言葉を吐き、眉間にしわを寄せていた。

スマホ画面をいじる彼の手元が気になる。

『何を打ち込んでいるのだろか。』

そんなことを思った。

彼との距離はあと5mぐらい。

少し顔を上げる。

彼の視線を感じた。
好色そうな目つきで、私の身体をじろじろ見ている。

『やった』

心の中で、そっと囁いた。

彼とすれ違う、次の瞬間。

私は、よろめいて、彼にぶつかった。

「オォッ」

彼は、驚いた表情とともに、私の体を抱きかかえた。

「大丈夫か。あんた。」

「えぇ。ごめんなさい。雨で足が滑ってしまって」

「びしょびしょだな。」

彼の体温を感じる。
私の腰に回された彼の手に、少しだけ力が入っている。
彼の舐めるような視線。

「ご迷惑をおかけしました。傘を忘れてしまったもので。」

「気にするな。」

頬がゆるんでいる。

「あの、この辺りに、泊まることが出来る場所はありますか?」

「泊まる場所かぁ。パッと思いつかねぇな。何?泊まる場所ないのか?」

「はい。少し用があって来たのですが、こんな時間になってしまい、どうしたものかと思っておりました。」

「そうか。大変だな」

「実を言うと、スマホの充電も切れてしまい、帰るにも道が分からず、この辺りをさまよってしまい・・・」

モジモジしながら、上目づかいで彼を見つめる。

「オレの家は、この近くだけどな」
彼はそう言った。

「そうなんですか?でも、いきなり、あなたの家に上がらせていただくなんて、お邪魔じゃないですか?」

「全然邪魔じゃないよ。」

「奥さんがいらしたら、誤解されませんか。」

「一人だから平気。平気。」

「お優しいですね。」

「あんたみたいな美しいヒトを、こんな夜道に置いていくわけにはいかねぇ」

「ありがとうございます。」

家の中に入る。

「それにしても。色っぽいな」

いきなり、肩を掴まれた。

「あなたも、男らしくて魅力的です」

「グハハ!そうか!」

「はい。」

「それにしても、きれいな顔してんなぁ」

「ありがとう。私ね、良く似てるって言われるの」

「似てる?」

「そう、有名人に似てるって」

「たしかに、言われてみれば、誰かに似ている気がするな。まぁ。そんなことはどうでもいいじゃないか」

「ねぇ。当ててみてよ」

「うぅ~ん」

「じゃあ、ヒントね」

私は、スマホを取り出して、彼の目の前に差し出した。

「スマホの充電、切れたんじゃ。。。これは。コメント欄か?」

「そう。よぉ~く見て。ある女性有名人へのコメント欄よ。3年前なんだけどね。」

男はゾッとした。

「思い出してくれた。」

ワタシは、満面の笑みを浮かべた。

「ね!似てるでしょ。たくさんのコメント貰ったんだ。うちのママ」

男は血の気が引いたように、青ざめている。

「このコメント見て!見て!すごいでしょ。こんなにたくさん書いてくれて!」

跳びはねながら言った。

バックの中から、固いものがぶつかり合う騒がしい音が聞こえる。

「あの日も、この時間に書いたのかな。。。こんな言葉を。」

モジモジしていた彼女は、もう、そこにはいない。

「コメントいっぱいで、遅くなっちゃった。ちゃんとしなきゃ。ママに代わって。。。







不気味な笑みに豹変していた。

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ピリカさんが企画して下さった「火サスどうでしょう」!!に参加しました!!

書いていくうちに、企画の趣旨と違うモノになってしまっているように感じがして仕方ないですが・・・(; ・`ω・´)

恥を忍んで、投稿させていただきます。

ピリカさん(*´꒳`*)

趣旨と違う場合は、スルーして下さい(´・_ゝ・`)



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