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[本郷義志伝】

 ※私の夢で本郷義則と名乗る方があなたの過去世だよと夢でおっしゃって 
  た事がきっかけです。
 ※これより第一章の続きを書いていきたいと思います。
第一章:「父の討ち死にと玉川家の滅亡」
この一報が私達のいる玉川屋敷に届いたのは、この戦から七日ほど後の事であった。父上は自害する前に、たまたま通り掛かった飛脚に、戦が終わる直前に書いた文を渡していたのである。この飛脚は龍野勢の追手から辛くも逃れ、私達の元に文を持って来た。
「奥方様に文が届いております」
侍女が告げた。
「私宛に?」
母上は言った。
侍女は頭を下げて立ち去っていった。
文を読んだ母上は何も言わず、私達にそっと文を渡した。
「母上、何が書いてあるのですか」
私が尋ねた。
「ねえ、母上」
弟が母上の着物の袖を掴んだ。
母上は何も言わずに涙を流していた。
父上の戦死を伝える文であった。
私は唖然として、ただ一言、弟の助五郎に、父上が龍野で戦死したんだよと言うと、
「兄上、絶対に嘘ですよ!」
弟は大声で泣き、私も泣いた。
母上は侍女と屋敷に残っていた家臣達を集めた。
「龍野から追手が来るやもしれぬ」「我らの主が龍野で戦死した」
「皆の者、戦を覚悟されよ」
「はっ!早速、戦の準備をいたします」
母上の言葉に家臣一同、答えた。
「あなた達は侍女の者達の所に行っておきなさい」
母上は私と弟に向かって言った。
「戦は嫌じゃ!母上」
私と弟は叫んだ。
「今はそんなことを言っている場合ではありません」
母上は厳しい口調で言った。
「若君、私達と一緒に待っていましょう」
私と弟は侍女に連れられ、屋敷の奥まった場所にある寝室で、母上と留守居の者達の指示を待つ事となった。
そこへ、見張りに出ていた者が戻ってきた。
「申し上げます!」「龍野勢は我らが玉川勢を追って、玉川庄の西を通り、そのまま、龍野に兵を引き上げたようでございます」
「では、敵兵は我らが領地には来ぬのか!」
誰からともなく、声が上がった。
「敵兵が引き上げたとならば、屋敷に籠る必要はない」
母上は一同を見回しながら言った。
母上が、侍女達と退避していた私達の元へ来られたのは、そのすぐ後の事であった。
「戦は終わりましたよ」「怖い思いをさせてすまなかった」
母上は私達の頭を撫でながら言った。
「良かったです」「皆、心配しておりました」
侍女の一人が言った。
私と弟は大泣きして母上に抱きつき、戦に巻き込まれなかった事を安堵した。以上です。




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