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EEIC生によるEEIS受験録

なぜか知らないが、理物や情報理工は院試に関するブログがいっぱいあるのだが、EEIS(正式には、東京大学大学院工学系研究科電気系工学専攻)の院試に関するブログはあまり見つからないので書いておこうと思います。

前提として僕はEEIC生、つまり内部生なので外部から受験しようとしている人からしてみたら役に立たない情報が結構含まれているかもしれないです。あと僕はどっちかというと情報系に近いところで動いている人間なのでそういうバイアスも多分に含まれます。

EEISはどんな大学院か

所謂電気系と呼ばれる部類に入ります。大学院としては2つのコース電気電子工学コースと、融合情報学コースに分かれているらしいが、出願時にこれを意識する必要はまったくありません。

どんなことやっているのかとかは説明会とか、HPとかを見てもらったほうがわかりやすいです。

結構レイヤが広く、かたや高電圧を扱っているかと思ったらかたや制御をやったり、半導体を作ったりしているのでまじで広すぎて全分野の把握は難しい。特徴的なのはJAXAの研究室にEEIS経由で入ることが出来るという点かもしれない。(相模原キャンパスということで東大感はあんまりないと思うが、宇宙を志す人にとってはそんなのどうでもいいはずだと勝手に思っている)

院試の形式

院試の形式は近年迷走していたが、最近TOEFL iBT + 専門試験(6問中2問) + 面接(日本語)という形で落ち着いたみたいです。

過去問を見てもらうとわかるとおり、少し前には問題文が英語の年がありました。なんとその年には面接の一部も英語だったらしい…。それより前の年には、TOEFL iTP(教室で受けられるやつ)+数学+専門(150分で4問)だったので、今の形式はかなり受験生に取っては負担の少ない形になっています。特に数学がないのは個人的に大きいです。

ただし、財布の負担的には近年の円安とTOEFLを個人受験しないといけないという事情が相まってTOEFLを2回受けるだけで7万円飛んでいくのはかなり厳しいなぁと思っています。

試験問題の形式についてもかなり型がしっかりしていて、1. 電磁気 2. 電気回路 3. 情報工学Ⅰ 4. 情報工学Ⅱ5. 固体物性 6. 制御・電気エネルギー工学と分野が決まっている上に、HPでキーワードまで出してくれているため、勉強しやすいと思います。

実際の院試対策の流れ

TOEFL対策

TOEFLに関しては早めに対策しておいたほうが良いと思います。具体的には春休みに1回目を受けるつもりで、3年の1月くらいからそれを見据えた勉強(TOEFLは大学受験と単語の質が違う)をしておくのが定石なのかなと思います。

自分はそれで3月に受けて78点を取りました。一応目標は80点だったので、5月(出願に間に合わせるには6月末までに受ければよかったはず)に2回目を受けましたが、春休みと違って勉強する時間があまりなく、結局同じ点数を取って返ってきたので、3.5万円を捨ててしまってちょい鬱になりました。

専門対策をはじめる

専門科目についてはちゃんと問題を見て解いたのは7月末くらいが初めてで、対策しはじめたのは8月に入ってからです。数学が院試にあったら間に合わなかったと思います…。

志望研究室(今いる研究室と同じ)に近い分野を選んだほうが面接的にも有利なはずだし、自分の勉強量も少なくて済むということで、とりあえず本番で解く2問の候補として2番(アナログ回路)と4番(ディジタル回路とアルゴリズム)を選び、これらを勉強することにしました。

まず4番を解いてみて普通に解けたので、まぁこの科目はそこまで勉強しなくてもいけそうということで、2番の対策をメインで行うことにしました。

2番は2部構成で前半は線形回路(LR回路とか、過渡応答そういうの)、後半は電子回路(トランジスタを使った小信号等価回路)と決まっています。前半については結構忘れていることが多かったので、まず電気回路論問題演習詳解という難易度が易しめで解説がしっかりある問題集を研究室の同期と購入してこれの問題をやりながら、基本的な事項を思い出すことをしました。

その後、電気回路理論第一、電気回路理論第二(それぞれEEICの講義)のノートと定期考査を過去問と見比べながら、足りていない知識を埋めました。

電気回路は基本的にキルヒホッフとラプラス変換ができていれば困らないので覚えることが少なくて助かりました。あとは、ラプラス変換からボーデ線図を書いたりするのが出来れば大体問題ないと思います。

後半の電子回路パートについては小信号等価回路に慣れるまでが大変です。一応講義では電子回路Ⅰ及び電子回路Ⅱで小信号等価回路をやりましたが、理解できていなかったので電子回路Ⅰのノート(といっても自分のはなかったので、過去の先輩のもの)をみながら、基礎的な部分を勉強しました。EEIC生向けに言うと、電子回路Ⅰの2019年より前のノート及び期末試験がかなり参考になります。
また、その時代の電子回路Ⅰの教科書、MOSによる電子回路基礎が院試用の教科書としてかなりよかったです。(Amazonの評価は低いですが、よくまとまった教科書です)

これで小信号等価回路を大体勉強したあとはひたすら過去問もしくは期末試験の問題を解いて、小信号等価回路のコツをつかみました。コツさえつかめばなんとかなるのが小信号等価回路の良いところだと思います。

電磁気が解けない

そんなこんなで2番の対策をしながら4番をたまに解いていたら、試験2週間前になりました。ここで、この2問をコケたときのための保険の1問をどうするかということになり、1番の電磁気を選びました。本当は6番を選びたかったのですが、(制御は結構簡単で、回路の知識も使える)後半のパワエレの講義を一切取っていないため、確定で満点を捨てることになります。最初から満点を捨てるのも癪なので6番は泣く泣く捨てました。また、情報理論や信号処理よりは電磁気のほうが成績が良かったのもそれを後押ししました。

まず過去問を解き、普通に知識のヌケモレがひどかったために講義資料を見たり定期試験を見返したりして過去問に戻っては難しいなぁを繰り返し、残り1.5週間になっていました。流石にヤバイと思い、研究室の同期も同じ状況に陥っていたため、相談して、3番を今からやることにしました。

情報理論・信号処理をやる

普通に入試で1.5週間前から特定の科目を新しく勉強するのはアホとしか言いようがないのですが、過去問を見た結果、覚えることが限定されていてそれの運用方法だけしっかりしていればなんとかなりそうなので、こっちを対策しはじめました。

基本的には情報通信理論と言う講義のノートを見返したり、情報理論の教科書を見返し、信号解析基礎や信号処理工学のノートを見返し、過去問をぶん回しました。

情報理論パートはエントロピーと相互情報量が出せれば大体OKで、信号処理パートはフーリエ変換の式をうまく使えたら特に問題ないだろうという感じです。

当日の戦略を練る

まとまった時間を確保するのが面倒で本番形式で問題を解くことはしていなかったのですが、過去問解きながら自分の得意不得意も見て、本番の問題選択戦略を練りました。

  1. 試験を開始したら、2番と4番を見て大体解けるか見る。この時2番は面倒な計算や方程式がどの程度面倒かまで見ておく

  2. 2の電子回路でカレントミラーや差動増幅回路が来たときは、要注意

  3. Z変換が出たときはあんまり解かないほうがいいかも

  4. 4のアルゴリズムパートは面倒になるパターンとして、構造体を使用しないヒープの実装がある。また、ソートアルゴリズムは時間がかかったり難しかったりするので注意する。

筆記試験当日

オンライン院試に対する文句があったりするのですが、それは置いときます。※問題は消去する必要があったため、一部不正確かもしれません。過去問が公開されたら直すかも

試験が開始して当初の予定通り2を見に行きました。変圧器の回路問題と増幅回路と発振回路の問題でした。変圧器は過去問でやっていたので行けるだろうと思いました。発振回路の対策は全くしていなかったのですが、電子回路Ⅱという講義でやったのを思い出せば解けるだろうと思いました。2の問題は案の定方程式を立てるところで問題になっていたので、そこまでは簡単に解けそうなことを確認し、4番を見に行きました。

4番を見た所、ディジタル回路の最初の方の問題が証明問題でした。これは苦手やなぁと思いながらアルゴリズムを見た所ソートの問題だったため、4を捨てるという判断をしました。3を見て、標準的な問題であったこともこれを後押ししました。

結果3は情報理論に関しては大体解けたかなぁという感覚で、信号処理に関しても最後の問題以外は大体解けたと思っています。2に関しては発振回路の対策を何もしていなかったですが、なんとか問題を解きながら発振条件を思い出せたのでよかったです。

口述試験対策

口述試験対策は筆記試験が終わってから口述試験までの間でやりました。

まず記憶が新鮮なうちに筆記試験の出来についてメモしました(この記事の当日の流れがやたらと鮮明なのはそのメモがあったからです)。筆記試験の出来や、問題に関連する基礎的な内容が聞かれるためです。

次に、修士の志望動機、研究室の志望動機、修士後のプランを考えました。このときに、今いる研究室をただ卒論の延長線で選んでいるわけではないことを伝えることを意識しました(まぁ、該当する研究分野の研究室がないよ〜ってだけですが)。

あとは修士論文の提案を見返しながら想定される詰め所や、卒論との関連について説明出来るようにしておきました。

口述試験

当日の面接官の顔ぶれは偶然にも学部で講義を取っていた先生と学会で見たことのある先生(1人は司会、あと4人が専門と関係がある先生)で、あまり緊張することなく挑めました。大体以下の流れで進みました。

  1. 志望動機、修士後のキャリアプラン

  2. 研究室の選択について

  3. 研究について(4人の先生から大体1人1, 2問ずつ質問されました)

    1. 研究が職人芸的ないわゆる開発に終始しないか

      1. これから広く用いられるであろうものを題材にしているので、そうはならないみたいな話をしました。

    2. 今どれくらい進んでいるか

      1. 正直に答えました

    3. どんな言語でハードウェアを作っていて、その便利な点と不便な点はどこか

      1. verilogで書いていて便利な点も不便な点も他のHDLを書いたことがないのでわからないが、新しいプログラミング言語に比べるとコンパイラのエラーとか少ないので大変みたいな話はしました。

    4. 新規性はどこにあるのか

      1. 普通に先行研究と比べたときにこれがやられていないみたいな話をしました

    5. どういうアーキテクチャなのか

      1. 普通に答えました

  4. 院試の出来について

    1. 何故その問題を選んだか

      1. 素直に2,4を解くつもりだが、4の問題を見て3に変えたことをいいました

    2. パーセバルの等式を説明してください

      1. エネルギーが積分すると同じになります程度で問題なかったです。

もうちょい院試について聞かれると予想していたのですが、研究についての質問が多く、院試についてはそこまで聞かれませんでした。

終わってから思うこと

対策時期について

対策が遅く、全ての範囲を対策出来ていませんでした。今回はたまたま思い出すことの出来る発振回路でしたが、場合によっては2, 3, 4共倒れの可能性もありました。せめて、公式の言うキーワードについての基礎事項は過去問に出ていなくとも抑えておくべきだったと思います。

問題選択について

ぶっちゃけ言うと、6が1番簡単だと思います。早く対策出来るなら6番の範囲をしっかりと勉強しておけば点数的に安定すると思います。簡単な順に言うと、6<<< (2, 3, 4は回によって順番は異なるが、大体 3 < 4 = 2?) << 1 < 5だと思っています。


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