地平線がある町

子供が「地平線が見たい」と言う。
ドラえもんのひみつ道具にそんな名前があったらしい。
そういえば会津の町は山に囲まれていて地平線に沈む夕日は見られないのだな、と改めて気がついた。

昔は北海道の石狩平野に住んでいて、その頃はまっすぐに続く国道の向こうに沈む夕日を何度も見た。

行く先が見えないくらい遠くて、トラックだけが行き交う大きな国道沿いの道をランドセルを鳴らして走っていた。

冬の晴れた日は夕日が雪原に反射してとても綺麗だったけれど、何処かへ連れ去られそうで、一人で帰る帰り道は少し怖かったことを覚えている。

住んでいる町の景色にいつから人は慣れるんだろう。
昔は押しつぶされるように感じた会津の山並みに、今は守られているように感じる。

東京から帰る最終電車の中で、建物が減って暗くなっていく窓の外を見てほっとした。
あぁ、自分の家に帰ってきたと感じたのだ。

登りと下りが交差する時、明るい街に帰るあなたも同じように感じているのだろうか。

住む場所に心を移すのはいつも私達。
街は変わらずそこにあるだけ。

いつか地平線のある町に住みたい、と子供が言った。

何処で暮らしても、家路を急ぐ時安らいだ気持ちになれるなら、きっとそれだけでいい。

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