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不安でいいじゃないか

俺は何事もネガティブに考える。いつも不安だ。

昔から指摘され続けてきた。
そんなの大丈夫だって、とか、考えすぎじゃない、とかなんだとか。

しかし、それを気にしすぎて生活に支障がある、ということではない。
老後が不安でタンス預金に走ったり個人年金に重課金したりはしない。

家を出たら鍵を閉めたか不安で落ち着かないなどということもない。

ガスの元栓など気にしたこともない。

だから、俺は不安が好きなんじゃないか、と思って書き始めている。
ここには好きなことを書くのが決まりなのだ。


果たしてどうなんだろうか。

気持ちが不安定であることによって安定を得ているのだろうか。

悲しきヤジロベーなのだろうか。

眉毛が繋がっていて、着物のようなものに帯刀した小太りの男なのだろうか。
しかし彼は不安を抱きそうにない。違うのかもしれない。

いや、もしかしたら違わないかもしれない。

不安である。

ゆらゆらと揺れ動かなければ存在価値のない、水族館あたりに売っている金属でできた置物なんだろうか。

イルカだろうか。

アシカだろうか。

イルカには眉毛がないだろう。だから眉毛は繋がらない。
ピッコロのようなものだ。

アシカはどうだ。ヒゲは生えていたように思う。
すると眉もあるいは、

繋がるかもしれない。


ところで、俺はさほどドラゴンボールに詳しくない。

幼稚園の頃にアニメが流行っており、記憶にはあるが漫画をきちんと読んではいない。
曖昧なのだ。例えとしてあっているか。

ヤジロベーの眉は繋がっていただろうか。

ピッコロは眉がないのではなく、毛が緑色だから見えていないだけではないか。
あるいは、高校球児くらい細く薄い眉だったのではないだろうか。
あの頃ナメック星では空前の安室奈美恵ブームだったという設定では?

ドラゴンボール有識者からの物言いが入りはしないだろうか。

不安である。


不安な状態というのは、やはり不愉快なものだ。
好き、ということがあり得るものか。

不快感を楽しむアクティビティなどあって許されるのか。

辛さ、はどうだろう。からさ、である。味の。

あれは味覚ではなく痛覚だ、と言われている。
激辛好きはお口がドMなのだ、と。

痛みは原則として不快感だ。
しかし、これが好きだという人が一定数以上存在する。
店が立つ。商売が成り立つ。

恐怖、というのもある。
恐怖も通常は不快感に他ならない。

だが、ホラー映画やお化け屋敷の類は恐怖を楽しむものだ。

怪談話などは世界各国で古くから親しまれている。
人類がもつ豊かな文化の一端といっても過言ではない。

痛みや恐怖。
これらが受け入れられるならば、不安も好まれる余地があるかもしれない。

不安好きに向けた、不安提供ビジネス。

ビッグビジネスの匂いがしてきた。

世界各国から不安になるニュースを収集しては広く知らしめ、地下シェルターや防護服を売りつける。

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なんだ。あるじゃないか。不安提供ビジネス。

みんな不安が好きだったんだ。

こうして俺の不安は一つ減り、安堵する。

そして次の瞬間には、楽しみの元である不安の枯渇に不安を抱き、なくなったらなくなったで不安になるなら不安は永久になくならないなとほくそ笑み、このループを閉じることにする。

一生不安に困らない。おめでとう、俺。

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