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あちょーおじさんの必殺技

ノンノちゃんとコロンちゃんは、あちょーおじさんの門を叩いた。


『空手を教えて下さい!!』ってノンノちゃんが大きな声で叫ぶ。
私も真似して、『おしえてください!!』って叫ぶ。

おじさんがごそごそとおうちから出てきた。
おうちの前に置いてあるドラム缶みたいな物に座って、何かを炙りはじめる。
いい匂いがして、思わず私は『コロンちゃんにもちょうだい』って言ってしまった。
おじさんはちらっと私の方を見て、ぶっきらぼうに手渡してくれた。
あちーぞ、って言いながら。

食べ終わると
じゃあ、必殺技をひとつだけ教えてやる。とあちょ―おじさんは言った。
そして、ノンノちゃんと私の前に立ち、
『まず敵のすぐ近くまで行って、しゃがみ込め。そんで、思いっきり金玉を蹴り上げる。下から上に思いっ切りだ。その後は、振り返らず走って逃げろ。全速力だ。』
ノンノちゃんはうなずいた。
コロンちゃんはまだ小さいから、大人の金玉まで足が届かない。
あちょーおじさんは言った。
『おまえは金玉を握りつぶせ』
コロンちゃんはうなずいた。

よし、やってみろ。とあちょーおじさん。

ノンノちゃんは、あちょーおじさんの金玉めがけて思い切っきり蹴りを入れた。

次の瞬間、おじさんがうずくまった。

ノンノちゃんはびっくりして立ち尽くしている。
私は叫んだ。
『ノンノちゃん、走って!ぜんそくろくだよ!』
ふたりは走った。
振り返らずに。


夕暮れどきの住宅街を
浴衣とエプロンの姉妹が駆け抜ける。

生きてるよね?
ころしてないよね?

ふたりがそう話すのを、通り過ぎてく風だけが聞いてたの。

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