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変形があると運動や仕事はもうできませんか?

S.長く付き合っていく症状

50代女性,介護士で訪問介護を主として働いている方で
長年変形性股関節症による股関節の痛みと
それを庇う事で反り腰になり
腰痛を引き起こしている方でした。

変形性股関節症により関節の隙間が狭くなっている様子。

お話を伺っていたところ
レントゲンで撮った写真や日常生活,歩き方などから
進行期から末期にかけての状態で
手術も適応レベルの状態でした。

O.変形以外にもさまざまな問題

歩き方では股関節が内側に回り(内旋位と言います)
大腰筋や大臀筋の収縮や筋活動が少ない状態でした。
検査をすると骨盤を支える上でとても大切な
中臀筋の弱化が見られました。
さらに運動不足や肥満の影響もあり
かなりの腹直筋や腹斜筋の弱化が見られました。
その結果それらの弱さを庇うために
右側の起立筋が腰方形筋,さらには太ももの内側の内転筋が
過度の緊張を起こしていてそれが痛みとして出ていました。

A.現状は手術なしでも大丈夫。ただし…

上記の点から
施術としては股関節の内旋や筋力の問題など
長年の蓄積でかなりの可動域制限と筋力の弱化が起こっていたため
完治は難しいことをお伝えしました。
ただ現状よりも状態を大幅に改善し
変形がありながらもお仕事を続けていくことは
十分可能であることもお伝えした上で
施術を行うことにしました。
ただしどこかのタイミングで
痛みが急激に強くなり
手術が必要となる日が来るかもしれない
ということがお伝えしました。

P.股関節の痛みで大事なポイントは3つ

施術に関しては本当に様々なことをしました。
その中で行ったことは大きく分けて次の3つです。

1.股関節の可動域の確保

2.骨盤前傾の改善と腹筋群の強化

3.股関節周囲筋群(特に中臀筋)の強化


まずは現状の可動域を維持すべく
股関節の可動域運動を行いました。
元々股関節の内旋位が強く
そのまま外旋方向に股関節を誘導したところで
却って痛みが強くなったり変形を助長するだけと感じたため
股関節に牽引をかけた状態で
筋肉に緊張を起こさせない程度に
軽くモビリゼーションを行なっていきました。
そうすることで今ある可動域の確保や
立った時に関節面でストレスが過度にかからないようにしていきました。

次に骨盤の前傾の改善が急務でしたので
その部分に着手しました。
これは骨盤の前傾が強まると
股関節部分で設置面が強まり負担が大きくなります。
そうすると中臀筋の出力も弱まり
その結果この方のように太ももの内側
内転筋が過剰に緊張して痛みを起こすというような
状態を作っていました。

股関節の内旋歩行パターン


そのためにもまず骨盤の前傾を改善して
体幹の中でも特に腹筋群をより強化していきました。
よくある例なのですが
「体感が弱いから腹筋を鍛えなさい!」
と言われて腹筋をしたら
逆に腰や背中が痛くなったと言うことが聞かれます。
それで改善する人もいますが
こういった変形性のものを伴う例では
それだけではうまくいきません。
きちんと全体を見ながらバランスをうまく調整する必要があります。
ただ骨盤の調整と腹筋の強化を行っただけでも
かなり立位と歩行の安定性が出て
腰の張り感と股関節の違和感は減ったという
お話が聞けました。

正しい歩行パターン。体幹と股関節周囲の筋力の重要性がわかる。


最後に3つの中では一番大切な
股関節周囲の筋肉の強化を行いました。
なぜ変形性股関節症の方は
膝が内側を向く内旋位を取りやすいのか。
それは変形性股関節症の方が元々
発育性股関節形成不全という股関節の
病気を幼い頃に持っていた方が多くなるとされています。

股関節がきちんと成長しないため
いわゆる「ハマり」が浅い状態になってしまいます。
そこでその浅さを解消するために
体は内側に股関節を捻って
股関節を安定させようとするのです。

股関節の中間位と内旋位に伴う安定性の変化

そういった背景から無理に股関節を開こうと矯正するのではなく
そもそも股関節の浅いせいで安定性が悪くなっていることが原因なので
股関節をガシッと固めてあげる筋トレをリハビリで行いました。
股関節が安定することで変に内旋しなくても
自分自身の筋肉というバンドで
股関節を締めてあげるようなイメージです。
方法としては片方の足で立って頂き
左右の骨盤を上下させるというシンプルな動きです。
この運動の結果歩行がより安定して
自然と腰が反ることも少なくなりました。


左支持脚側の骨盤を上げた状態
左側の骨盤が下がり,反対に右側が上がっているのがわかる。

これらにより比較的状態が安定したため
11回の施術後は様子を見ていただいて
状態の経過観察を行なっていただくことになりました。

変形性股関節症の症状は人それぞれですが
比較的同じような経過を辿る人が多いと言われています。
今回紹介させて頂いた運動も
比較的どの方にも合う方が多いと思われます。
こちらの記事を読んで頂いた方や周りの方にも
同じような症状をお持ちの方もいるかもしれません。
ぜひこちらの記事を参考にして頂いて
症状の軽減に繋げてみてくださいね。

また自分の体がどのようになっているのか
実際に相談したい方いらっしゃいましたら
ぜひコメント欄からお気軽にメッセージくださいね。

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