関大 春季リーグ振り返り~関西学生野球2022~

 「課題」の4月、「収穫」の5月。この一言で言い表せられるだろう。苦戦が続いた前半戦から4連勝と勢いに乗った後半戦まで、関大の今シーズンの戦いを振り返りたい。

第1節(4/2~4) VS京大

於:わかさスタジアム京都
1回戦 2-4LOSE
2回戦 4-2WIN
3回戦 2-4LOSE
1勝2敗 勝ち点0

 昨秋のリーグ戦を制し、連覇がかかるシーズンとなった関大。開幕節の相手は難敵・京大。そんな京大に予想以上に苦しめられる。
 開幕戦の先発マウンドを託されたのは鷲尾(④登美ヶ丘)。5回を2失点にまとめるも、打線の援護がなく1点ビハインドのまま終盤へ。すると、8回に3番手の宮崎(④東海大大阪仰星)が京大打線につかまり2失点。打線は9回に1点を返すも反撃が遅く、まさかの黒星スタートとなった。
 翌日の2戦目。先発マウンドには定本(④三重)が上がる。しかし、勢いがついた京大打線を定本も止められず、初回に先制点を献上してしまう。1点を追う関大は2回、相手のエラーで同点に追いつく。さらに、定本が外野の間を深く破る適時三塁打を放ち勝ち越しに成功。続く岑(③広陵)もタイムリーで続き、この回3得点。5回にも追加点を挙げた関大がリードをそのまま守り切り、今季初勝利を挙げた。
 運命の第3戦。関大は京大の奇襲に遭う。京大の先発マウンドを託されたのは、正捕手の愛澤(④宇都宮)。アンダーハンドから投じられる「魔球」に関大打線は苦しめられる。すると、関大先発・鷲尾が粘り切れず3回までに3失点。関大は終盤に2点を返すも8回に追加点を献上し万事休す。京大から40年ぶりに勝ち点を落とす事態となってしまった。

打線が上手く機能しなかった関大。特に4番を任された口分田(④近江兄弟社)で打線にブレーキがかかってしまったのが痛かった。

第2節(4/9・10) VS近大

於:マイネットスタジアム皇子山
1回戦 1-2LOSE
2回戦 2-4LOSE
0勝2敗 勝ち点0

 リーグ連覇に向けて、もう勝ち点を落とせない関大だったが、「タレント軍団」近大相手になかなか自分たちの野球が出来なかった2試合となった。
 サウスポーの辰己(④米子松蔭)が先発した1回戦。5回に有馬の二塁打からチャンスを作ると、内野ゴロに相手のエラーが重なり先制する。しかし直後、犠牲フライで同点に追いつかれてしまう。反撃したい打線だったが、近大の先発・久保(④関大北陽)の前に終わってみれば散発2安打。6回に勝ち越し点を献上すると、粘投した投手陣に応えられずに惜敗。打線がなかなか噛み合わない。
 2戦目も打線が振るわなかった。打線の不振に投手陣も粘り切れず5回までに4点を失う展開に。9回に上神(④佐久長聖)、有馬の連続タイムリーで2点を返すも反撃遅し。近大相手に連敗を喫し、開幕2週目にして早くも優勝争いから事実上の離脱となってしまった。

 開幕節では出場しなかった中井颯(③報徳学園)の復帰によって、京大戦から好調だった上神・有馬を4・5番に据えたことで打線に厚みが増したかのように思えたが、その前後を打つ打者陣の調子が上がらず、ランナーが出ても点が入らない悪循環が続いていた。

第4節1回戦(4/23) VS関学

於:阪神甲子園球場
1-2LOSE

 聖地・甲子園で行われた伝統の「関関戦」第1ラウンド。打線の援護がなかなか無い中、粘投を続ける投手陣は、辰己・金丸(②神港橘)・鷲尾が登板し3人で2失点と試合を作る。しかし、この日も打線が低調。4回に上神のタイムリー内野安打で先制するも、追加点が奪えずこの日も結局4安打。関関戦は1-0で勝てるような甘い試合ではない。8回に許した2点も投手陣が与えた点数というよりは繋がらない打線への見返りと捉えていいだろう。これで4連敗。関関戦での勝ち点奪取どころか、リーグ戦「最下位」の可能性も浮上してきた。
 翌日行われる予定だった2戦目は、雨天のため中止に。この雨は、関大にとっては「恵みの雨」だったかもしれない。

第5節(4/30・5/1) VS立命

於:ほっともっとフィールド神戸
5×-4WIN
8-2WIN
2勝0敗 勝ち点1

 事実上の「最下位決定戦」ともいわれた立命戦。ここで勝ち点を取らなければ、最下位が現実化するといっても過言ではなかった試合で、関大が奮起した。雨天で1日スライドして迎えた1戦目。今季初めて1戦目のマウンドを託された定本は4回3失点とピリッとしない内容だったが、打線も反撃に転じ3回に2得点。8回に立命に追加点を奪われ、万事休すかと思えたが、最終回にドラマは待っていた。2点を追う関大は「スーパー1年生」下井田(①報徳学園)が二塁打を放つと、続く代打・小河(④大社)の一塁線を破る適時三塁打で1点差に。さらに代打・富山(②大阪偕星)の振り逃げで同点に追いつく。代打攻勢が続き、谷元(④関大北陽)の犠打で1死2塁。一打サヨナラのチャンスで打席には岑。この試合4本目となるヒットは、値千金のサヨナラタイムリーに。土壇場で2点差をひっくり返した関大が開幕節以来の勝利を挙げた。この勝利が5月の快進撃につながったのは間違いない。
 今季初の勝ち点奪取へ。この日の関大は打線が面白いように繋がった。前半は前日に続き、1点ビハインドの展開に。しかし、7回に関大打線が目覚める。この日も口火を切ったのは、下井田だった。ライトへのヒットで出塁すると、佐藤(②愛工大名電)がしっかり送って1死2塁。そして、久保田(②明秀日立)・石原水(④栄徳)の代打陣がきっちりと見極めて1死満塁。一打同点、逆転の絶好機で前日殊勲のサヨナラ打を放った岑は三振に倒れるも、なおも2死満塁のチャンス。打席には関関戦からスタメンに抜擢されている髙田幸(③伊川谷北)。振り抜いた打球はライトの頭を超す適時二塁打となり、走者3人が生還。関大が逆転に成功する。これだけで終わらなかったのがこの日の関大。続く中井颯にもタイムリーが飛び出し、3点差に。さらには四死球を挟んでこの回2度目の打席となった下井田にもタイムリーが飛び出し、一挙7得点。これまでの不振ぶりが嘘だったかのように打線が繋がり、試合を一気に決めた。残り3回を茶谷(③西宮東)が無失点でまとめてゲームセット。2連勝で今季初の勝ち点を手にした。

 点がようやく線になった関大打線。この時点で獲得出来る最大勝ち点は3。Aクラスでフィニッシュする可能性も大いに出てきた。

第6(4)節2・3回戦(5/7・10) VS関学

於:大阪市南港中央野球場
3-1WIN
4-2WIN
2勝1敗 勝ち点2

 関関戦での勝ち点奪取へもう1戦も負けられない関大。前週の立命戦から勢いに乗った関大はもうどこにも止められない。そんな印象を抱いた2戦になった。
 辰己が先発マウンドに上がった2回戦。初回から打線が辰己を援護する。先頭の岑がヒットで出塁すると、続く髙田幸・中井颯の犠打にいずれも相手のエラーが重なり、いきなり無死満塁に。ここで、頼れる4番・上神がきっちりレフトへ弾き返し、関大が幸先よく先制する。その後のチャンスは得点に結びつけられなかったが、同点に追いつかれた3回に中井颯の適時二塁打で勝ち越しに成功する。6回にも下井田のタイムリー内野安打で追加点を挙げると、5回から救援した金丸が関学打線をわずか1安打に封じ込め逃げ切り勝ち。投打が噛み合った関大が関関戦の対戦成績をタイにした。
 中2日で行われた関関戦第3ラウンド。先発を託されたのは鷲尾。開幕戦以来の先発マウンドだったが、4回を1失点にまとめる。打線は3回、ノーヒットで1死2・3塁のチャンスを作ると、髙田幸の内野ゴロの間に3塁ランナーが生還し、同点。さらに続く中井颯のレフトゴロの間に勝ち越しのランナーがホームへ。この日も、あっさりとリードする展開に持ち込む。しかし、簡単にはいかないのが関関戦。6回にワイルドピッチで同点に追いつかれてしまう。そんな中、打線が投手陣を再び援護する。直後の7回、1死から下井田がヒットで出塁すると、続く佐藤は犠打。2死2塁と一打勝ち越しの場面を作ると、関大・早瀬監督は代打に石原水を起用。この起用にしっかりと応え、打球はレフト前に。2塁ランナーの下井田が激走し一気にホームへ。微妙なタイミングだったが、相手捕手の落球がありホームイン。関大が勝ち越しに成功する。9回にも追加点を挙げた関大は、3番手の定本がノビのある直球を軸に3回2/3を1安打に抑える好投。7~9回をパーフェクトに抑え込み、勝利。

 今季2つ目の勝ち点は絶体絶命の場面から手にした貴重な関関戦での勝ち点でもあった。

第7節(5/14~16) VS同大

於:大阪市南港中央野球場
0-2LOSE
7-0WIN
0-7LOSE
1勝2敗 勝ち点0

 5月に入り好調の関大。今季最後の対戦相手は2011年以来のリーグ優勝が目前に迫る同大。そんな好敵手から勝ち点を奪い、優勝争いをかき乱したい一戦だった。
 投手戦が予想された1回戦。予想通りに、関大・辰己、同大・髙橋(④豊田西)の白熱した投げ合いが続いた。そんな中、2回にスクイズで先制したのは同大。関大はランナーを出すものの、後続が続かず得点には至らない。早いペースで進んで気付けばあっという間に8回の攻防へ。7回から関大は定本にスイッチ。関関戦同様、キレ味抜群の直球を軸に同大打線を手玉にとっていたが、一球に泣く結果となってしまった。同大・松井(③東邦)が弾き返した打球は、高く上がりそのままライトスタンドへ。貴重な1点が同大に刻まれ、万事休す。終わってみれば散発4安打と同大投手陣に完璧に抑え込まれた結果になってしまった。
 負ければシーズン終了。勝てば勝ち点へ望みが繋がる大事な2回戦は、サウスポー・金丸の独壇場になった。勝って4つ目の勝ち点を奪取したい相手に、5回までになんと11奪三振。リーグ記録の1試合23奪三振に迫る勢いで同大打線に手も足も出させない。打線は4回に下井田が先制タイムリーを放ち、さらには相手のエラーでもう1点。2点リードで後半戦へ。6回以降も金丸の勢いは止まらなかった。150キロ台の直球とキレ味抜群の変化球を中心に打者に的を絞らせず最終的には17奪三振。打線は8回、内田峻(④大手前高松)、佐藤、金丸の3連続タイムリーなどで一挙5得点のビッグイニング。終わってみれば10安打7得点の猛攻で、金丸のリーグ戦初完投・初完封勝利に花を添えた。
 勝っても負けてもこの試合が今シーズンのラストゲームになった運命の3戦目。先発の定本は3回に先制点を与えるも、以降は同大打線を封じ込め、5回1失点。今季1番といっていい内容で降板。味方の反撃を待つ。しかし、同大・髙橋を前に2塁すら踏めない苦しい展開に。野球に流れはつきものである。7回に辰己が集中打を浴び、5失点。代わった茶谷も流れを食い止めることが出来ず、この回だけで6失点。この日は打線の援護がむなしく、2安打完封負け。最終戦を勝利で飾ることは出来なかったが、今季好調の同大との差は明確になったはずだ。

 今季の同大の快進撃を見る限り、2連敗の可能性も十分あった関大だが、1つ勝てたという事実は来シーズンに大いに生かしてもらいたい。

個人的関大賞

最優秀選手賞

辰己晴野(④米子松蔭)
今季最も成長した選手の1人。高い制球力とキレ味鋭い直球・変化球は、さらに磨きがかかれば秋は無双状態になりそう。

優秀選手賞

金丸夢斗(②神港橘)
今季最終登板となった同大2回戦の17奪三振にあらわれるように、欲しいところで三振を取れるピッチャーに成長。まだまだ伸びしろは十分。

岑幸之祐(③広陵)
全試合で1番を任され、序盤は不振も中盤から後半にかけて打ちまくり、3割近い打率でフィニッシュ。1シーズン通してレギュラーを張り続けた自信を糧に、秋へ。

新人選手賞

下井田悠人(①報徳学園)
立命1回戦で放ったリーグ戦初ヒットは逆転サヨナラ勝利のお膳立てに。長打も打てる強打のサードはチーム2位タイの5打点をマーク。成長続けるスーパー1年生から目が離せない。

総括

13試合6勝7敗 勝ち点2
 
 5カードあるうち3カードで勝ち点を落とし、勝ちよりも負けの方が多いという事実は素直に受け入れるべきだが、序盤の関大の戦いぶりを振り返れば、よくここまで持ち直したなという印象である。キーになったのは、やはり立命との1回戦だろう。最終回に2点差を逆転した底力は、秋のリーグ戦を制するためにも必要不可欠である。岑・髙田幸ら旧チームでは出場機会に恵まれなかった選手たちが試合に出続けて、結果を出し続けたことは今後に大きく生きるはずだ。そして、下井田・佐藤ら下級生の活躍も目立った。リーグ優勝のためには、下級生の頑張りも必要である。立命・関学との試合では、秋に期待せざるを得ないくらいの好内容の試合が続いた。秋季リーグ連覇へ。そして、「秋の関大」の名を全国へ。大学昇格100周年の節目の年での全国大会出場の夢は、秋に続く。

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