パフェ
「あんたが初めてパフェに出会ったときの顔はほんとうに忘れられない、おめめキラッキラさせて、めんこかったなあ」
時々、母が私にする思い出話のひとつです。さも今の私がかわいくないかのような言い方ですが、私は今も昔もこれからも世界一かわいいです。
この人生初のパフェの舞台となったのは、家からそんなに離れていない、小さな喫茶店です。今もあります。小学生になったかならないか、くらいの時に行ったのを最後に10年以上行っていないので、どんなお店だったか、どんなメニューがあったかはほとんど覚えていませんが、窓際のテーブルでハンバーグとチョコレートパフェを母と2人で半分こして食べた記憶がぼんやりと残っています。
今の100倍は偏食だった私が食べられる数少ないものの1つがその喫茶店のパフェでした。家でも保育園でも何も食べたがらない私がおいしそうにパフェを頬張る姿は母にとってはさぞかし嬉しく愛おしかったことでしょう。なんとなく私の中でパフェは少し特別で心躍るもの、というイメージを持つようになったのは、恐らくこの時からかと思われます。
保育園が嫌いだった私は、母と一緒にいられる土日が何よりも楽しみでした。母と一緒に食べるものは何だっておいしいし、一緒に行くところはどこだって楽しくてワクワクしたものです。
いま思えば私が喜びそうなところを頑張って選んで連れて行ってくれてたのかなあ、何も食えない大人にはしたくないもんなあ、美味しいものや楽しいことを沢山知っておくのは大事だなあ、と23年生きてようやく気づいたような気がします。
今の私が目をキラッキラさせて感動できるものって、何だろう、と考えてみたけれど思いつかない。パフェを初めて食べたあの時くらい純粋な心は、私にはもうないのかな、なんか寂しいな。
大人になるって、時に虚しい。
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