参考人呼出簿

内部告発が社会を健全化する

 先日、ニュースサイトに〈マンパワー社員の内部告発「東京都の外郭団体委託の企業説明会で、サクラの学生」〉と題する記事を書いたところ、大きな反響がありました。

 そこで、以前、パチンコ業界誌『PiDEA』(ピデア)に内部告発について書いた記事を改めて公開します(加筆済み)。内部告発とスクープの関係、内部告発者の心情など、報道の裏側もかいま見られると思います。

 なお、私が経営する版元「インシデンツ」のホームページでも、内部告発(公益通報)を受けつけるフォームがあります。貴重な情報をお持ちの方は、ぜひ利用してください。

警視庁が領収証を偽造して裏ガネづくり

 我々、ジャーナリストがスクープを飛ばすとき、その裏に必ず内部告発者がいる。彼ら彼女らの協力なくして、組織ぐるみで隠ぺいされた不正を追及することはできない。

 逆説的ともいえるが、もともと内部告発者は組織に忠誠を誓っていた人物である。だからこそ、組織の秘密を知る立場にもつける。そういう人物が内部告発へ走る理由は、「組織から裏切られた」と感じるからだ。

 1993年当時、警視庁赤坂署防犯課に勤務していたX氏。現在、「防犯課」は「生活安全課」へ改組されているが、風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)を所管する部署である。

 X氏は、赤坂署防犯課の裏ガネづくりを取材していた筆者に対し、以下のような証言をしてくれた。もちろん、それまでに信頼関係を築いたうえでの話だ。

「架空の参考人(目撃者など)を呼び出し、旅費や日当を支払ったこととして、税金から裏ガネをつくっていました。裏ガネは防犯課警察官らの飲み代に使われました。毎年、本庁(警視庁)から赤坂署へ領収証を偽造するよう指示があり、警察官らが他人名義で、『¥10,000』『情報提供謝礼として』などと書いていました。これらは、本庁が裏ガネをつくるために使います」

 筆者は、あらかじめ赤坂署防犯課が架空の参考人へ旅費や日当を支払っていたという証拠書類である「参考人呼出簿」のコピーを入手していた。そして、不正をはたらいた当事者から証言を得ようと努力していた。X氏が取材に応じたことで、赤坂署防犯課の裏ガネづくりばかりか、本庁の裏ガネづくりも明らかとなった。

参考人呼出簿

架空の事件、住所、氏名などが記入された参考人呼出簿。
赤坂署防犯課の裏ガネづくりをはじめとする警察の不正経理については、筆者が編著者となった『おまわりさんは税金ドロボウ』(メディアワークス)を一読いただきたい。

ここから先は

2,306字

¥ 100

大きなスクープを期待する読者には、大きなサポートを期待したい!