Evidence based 草野球 #5 回転数と回転軸
ピッチャーをやっている人なら誰しも一度は気にしたことがある回転数と回転軸。
今日はこの二つについて書いていきたいと思います。
画像検索で「回転」と調べたら、この画像が出てきました。
文字通りボールの軌道を左右する回転数と回転軸
野球で扱う「回転数」とは、1分間にどれだけボールが回転しているかを示す値です。「回転軸」とは、その回転がどういった方向に回転しているかを示しており、角度で表現されることが多いです。
これは球速よりも、ボールの軌道に大きな影響を与えています。
回転数とマグヌスの力
「ボールは回転のかかっている方向に曲がる」これまでの経験上、この理屈はなんとなくわかると思います。ただ、これにもきちんとした物理的な理由があります。
詳細の説明は省きますが(うまく説明ができませんので・・・)、ボールを曲げるためには、ボールに回転をかける必要があるのです。
例えば、進行方向に対してトップスピンがかかったボールが100km/hで投げられたとしましょう。
このボールには、大きく二つの力が働いています。一つ目は100km/hの向かい風です。二つ目はボールそのものの回転です。今回の例では進行方向に対してのトップスピン方向の回転がかかっていることにしています。
参照 http://kazuhiro.livedoor.biz/archives/26225041.html
図のように、ボールは左から右に進んでいる場合、ボールの上半分では風の向きと回転の向きがぶつかり合っているのがわかります。この場合、ボールの上半分の空気の流れは遅くなり、下半分の比べて相対的に圧力が高くなります。
そして、ボールの下半分では、風の向きと回転の向きが同じであることがわかります。この場合には、ボールの下半分の空気の流れは早くなり、上半分と比べて相対的に圧力が低くなります。
ボールは圧力の低い方へ移動していきますので、進行方向に対して下向きに移動します。これがボールが“落ちる“と言うことです。
(この圧力の低い方へ移動させる力をマグヌス力と言います)
ボールの回転軸
回転軸を考える際には、コマに置き換えるとわかりやすいと思います。
回転軸には大きく分けて3つの要素があります
・横回転:コマの軸が真上を向いている状態(ボールは横へ変化)
・縦回転:コマの軸が真横を向いている状態(ボールは縦に変化)
・ジャイロ回転:コマの軸がボールの進行方向に向いている状態(変化しない)
以上の要素が少しずつ絡まった状態でボールは回転しています。
俗に言う、「ノビのある真っ直ぐ」と言うのは、回転軸が真横に近い角度で、回転数も大きいことを意味しています。
個人的には、ボールが曲がるか曲がらないかは、回転数よりも回転軸にか変わっていると思っています。
私はカーブをよく投げるのですが、回転数よりも回転軸を意識しています。イメージとしては、回転がゆっくりであっても、できる限り回転軸が真横(俗に言う、綺麗なトップスピン)になることを意識しています。
どんな回転でもいいんじゃない?
指導現場では、バックスピンがかかっているから「良いストレート」で、シュート回転しているから「悪いストレート」といった言葉の使われ方をしていますが、正直それは間違っているように思います。
確かに回転効率を考えた場合に、綺麗なバックスピンかつ大きな回転数であれば空振りが取りやすいです。ただし、疲れたりコンディションが悪かったりして、回転数が落ちた場合には、少しのノビしかないボールは長打になるリスクに晒されます。特に軟式野球の場合にはビヨンドバットが主流ですので、より危険です。
それならば、ツーシームのように回転軸の角度を変えることでナチュラルに変化させ、ゴロを打たせると言う選択肢もあります。
今回は筑波大学の川村准教授の著書「打者を打ち取るストレートの秘密」を参考に書かせていただきました。
次回は、今回書ききれていない部分「回転効率」や、そのほかの指標についてと、この記事の実践編として、ツーシームに挑戦した内容について書きたいと思います。
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