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新陽高校の校長を卒業します。


2016年2月1日より続けてきました札幌新陽高校の校長を、3月末で退任することになりました。あしかけ5年と2ヶ月の校長の仕事となりました。

東京赤坂の小さな焼き鳥屋で

「ゆたか、校長できないか?」

と父から投げかけられてから、「自分にできるのか?」「できないのか??」と何度も何度も自問しました。教員免許もないし、学校で働いた経験もない。そもそも新陽高校って、おじいちゃんが創立したけれど、今ではかなり大変な学校なんでしょ?と何度も悩みました。

実際、前経営陣が閉校を内々で決めてしまったところを、父が見かねて経営を引き継ぎ、立て直しを図ろうとしていたところでした。財務諸表も従業員のアンケートもさんさんたる有様でした。

できるのか?

いろんな人に相談をし、日本で最初の民間人校長でもあったリクルートの大先輩でありテニス仲間でもある藤原和博さんから

「それは、お前の覚悟の問題だな」

とズバッと言われて、覚悟が決まり、それが今日に至ります。

今、僕たちはあれから5年後の世界に立っています。

できなかったこともたくさんありますが、できたこともたくさんあります。そして、なんと言っても、得たことがたくさんありました。

それを一言で言えば、

学校とは、なんて素晴らしいところなのか。

ということに尽きます。

校長室のドアを開け放していたこともあり、よく高校生が訪ねてきてくれました。着任して2ヶ月くらいのときに、2年生の女子生徒が来て「将来はテレビカメラマン(ウーマン)になりたい」と話したので、「じゃあ、映像をつくってみたらいいじゃん。新陽高校の映像を撮ってみてよ」とお願いをして、5万円ほどの一眼レフカメラを買って渡してみました。

それから3ヶ月後、夏休み前の全校集会で、暗幕を張った体育館にみんなで座って、スクリーンに映る2分半の映像を観ました。

映像が終了して画面が真っ暗になった時に、なんとも言えない余韻が残っていたことを覚えています。

生徒が退場してから、教頭のあつお先生がポツリと「生徒たちが体育館でこんなに静かに集中していたのを初めてみました」と話してくれました。

この瞬間から学校全体が変わり始めたのではないかと、今振り返っても思います。生徒がワクワクし始め、先生がイキイキし、学校に躍動感が生まれてきたと思います。

その後も、「出会いと原体験」を大切にして、「本気で挑戦する」ということがどういうことなのかを肌で感じる学校になることを願ってきました。

たくさんの友人知人も新陽高校を訪ねてきてくれて、授業をしてくれたり、生徒の悩みに付き合ってくれたり、感心してくれたりしました。

2018年の2月5日には、東京から赤司さんがやってきてくれました。

札幌新陽高校 校長日誌 2月5日(月)
【同志あり、遠方より来る】
赤司 展子さんが新陽高校に来てくれた。
早稲田の同級生で、三井物産を経てPwCで事業再生を手がけ、社会貢献の一環で双葉郡教育復興ビジョン推進協議会の事務局に来てくれた才女だ。
ちなみに、PwCは、高校生には馴染みが薄い社名だが、ウィキペディアによればこういう会社。
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プライスウォーターハウスクーパース(PricewaterhouseCoopers )は、ロンドンを本拠地とし、世界158カ国に180,000人のスタッフを擁する世界最大級のプロフェッショナルサービスファームである。デロイト トウシュ トーマツ、KPMG、アーンスト・アンド・ヤング(EY)と並び、世界4大会計事務所・総合コンサルティングファーム(Big 4)の一角を占める。対象業務として会計監査、ディールアドバイザリー、ビジネスコンサルティング、税務、法務などを総合的に手掛けている。
略称はPwC。
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まあ、世界的なものすごい会社、ということか。
そんな尊敬する彼女がPwCを辞めて独立するタイミングで札幌入りしたので、懐かしい話を含めて語り合った。
たまたま、校長室にやってきた3年生の和田さんに、「時間あったら、赤司さんに学校の案内してもらえる?」と尋ねたら快諾。
ややしばらく二人で学校をぐるぐる回ってたみたいで、二人とも満足げな表情で校長室に戻ってきたところを写真でパシャリ。
そのあと、三人で、いくつかの映像を見たりした。
福島の双葉郡で教育の大切さに触れたものは、みな、新しい何かを作り出す側に回っている。
今週は大事なミーティングが続くけれど!このタイミングで赤司さんに会うのもなにかの導きだなぁと。
嬉しく楽しい1日だった。

その赤司さんが、新陽高校の次の校長になります。

そして、その赤司さんが最初に会った新陽生の和田ちゃんこそが、上の映像を作った女子高生です。今は釧路公立大の学生で、これから就職活動とのこと。

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(赤司さんと和田ちゃんが帰ってきたところ)


学校って、大人達がいろいろとやっているようだけれど、でも、結局は若者たちの輝きは質も量も圧倒的なのだと大人が認めてあげて、そこに眼差しをきちんと向けていけば、自ずと子ども自らが自分の存在そのもの(Being)である光を認めるのだと知りました。そうして自らの力で光りだす。

そして、学校で自らの輝かせ方を身につけた子どもたちは、未来を照らし続ける存在になるのだとよくわかりました。

「学校とはなんと素晴らしいところなのか」ということを教えてくれた新陽高校の生徒のみんなや、教職員の仲間たちには本当に感謝の気持ちでいっぱいです。ありがとうございました。

4月からは新陽高校の運営母体である学校法人札幌慈恵学園の副理事長・法人本部長として学校経営に専念します。基本的には新陽高校の1Fにある学園本部に詰めています。

また、新校長の赤司さんからは「図書室を楽しくしてほしい」と言っていただいているので、図書室にいる時間を増やそうと思います。

理事長を務める佐賀県の東明館学園、理事を務める愛媛県の今治明徳学園の経営もしながら、他の学校や会社のお手伝いもしながら、そして、世の中の学校がもっとワクワクする存在になるようこれからも努めていきたいと思います。

最後になりますが、ここまで温かく見守ってくださった皆様のお陰です。本当にありがとうございます。引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

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(生徒達がやってきてくれていろいろとお話をさせてもらえたのが嬉しかった。そして、あつお先生にも入ってもらって。何度もこみあげてきそうで大変だった)

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(同じメンバーと赤司さんと。在校生と新旧の校長。みんなよく知っている高校生たちだったので、普段は話さないことを最後だからといろいろと話すことが出来たのが本当に良かった。未来を創る若者たちに出会える職場って本当に素晴らしい。)

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(卒業生達もやってきてくれたのがとても嬉しかった。みんな素敵なお姉さんになっていてこれからの未来が楽しみです。沢山話ができて本当にありがとう。)

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