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大切なものはすべてとは言わないが結構マンガから学んだ #私を構成する5つマンガ

ドラえもんではのび太がよくマンガばかり読むんじゃない!とママに叱られている。買うお金がなからと本屋でマンガを立ち読みしていると、はたきをもった店主が追い出す。ジャイアンに貸したマンガは帰ってこない。

マンガは読むのに時間もお金もかかるし、膨大な量のマンガから自分の好みを探しだすなんてお気に入りのカフェを探すよりも遥かに難しい。そんな中で実施されている、#私を構成する5つのマンガというnoteの企画。くっそ悩ませるじゃないかあ。まず100個にしぼってから1週間かけて絞ったこの5つ。

1. 【感情の大嵐】 ハチミツとクローバー

現在大人気『3月のライオン』を連載中の羽海野チカ先生の作品。もちろんこの3月のライオンもすっごい好きなのだが、選んだのは前作のハチミツとクローバー。理由は単純で、恋愛マンガの枠に収まらない恋愛マンガだからだ。

登場人物全員片想いというパワーワードが当てはまるこの作品。出会ったのは大学2年生の冬。好きだった子がこの本を好きだったという、いかにも大学生らしい理由から近くの古本屋で全巻2000円で買って会話のネタにするために1日で読んだ。恋愛マンガと言われると分類的にはそうなると思うが、よくある恋愛マンガのようにキュン死にすることは(ほぼ)ない。なによりも魅力的なのは個性豊かな登場人物と感情の描写である。羽海野チカ先生の作品にあるあるなんだけど、登場人物が喋っているコマとコマの間にポエティックなセリフが挿入されていく通称どの言葉を読んだらいいんだ?現象。でも現実ってそうなんだ。ひとつのセリフの裏には色々な感情や想いが巡らされていて、口から出たセリフが本心じゃないときだってある。人間の心は感情によってすぐに天候が変わってしまうくらい不安定。そんな人の心の動きを、恋愛というこれまた感情を揺さぶる行動を通して痛いほど思い知らされる作品。だからといって恋愛だけにとどまらず、仕事や人間関係や過去のしがらみ、または笑えるシーンもたくさんあって、本当に読んでいる間に思いっきり感情を揺さぶられる。

好きだった子の好きなキャラが真山だったので茶髪と縁ありメガネにしたのは良い思い出。(ちなみにそのあと付き合えた)

2. 【意思と覚悟のススメ】 ジョジョの奇妙な冒険 第5部

現在第8部ジョジョリオンを連載中の荒木飛呂彦先生の言わずとしれた名作、ジョジョの奇妙な冒険シリーズ。その中でも私を構成しているのはこの第5部だ。迷ったときは覚悟をもつことの大切さを学ばせてくれた。

そもそもジョジョは嫌いだった。なんか絵はグロいし、メメタアとかよくわからんセリフはあるし、そしてこち亀の次くらいに本屋さんのマンガ棚を占拠している。でも大学のときにジョジョのファンの友だちが3部を貸してくれてそこから少しずつジョジョの世界に足を突っ込んだ。
ジョジョは毎回舞台が違い、今作の舞台はイタリア。ジャンプマンガ得意の色々な特殊能力や戦闘シーンももちろんあるけれど、魅力的なのは敵味方限らず個性的な登場人物とその強いセリフたちだ。そして第5部は意思と覚悟の物語といえるだろう

登場人物は何かしら闇を抱えるイタリアのギャングたち。それぞれ重い過去やしがらみを背負っているが、それでも強い意思と覚悟でもって前に進んでいく様子が本当に読み手の迷いを消してくれる。

「覚悟」とは!! 暗闇の荒野に!! 進むべき道を切り開く事だッ!
そうだな…わたしは「結果」だけを求めてはいない 「結果」だけを求めていると人は近道をしたがるものだ…近道した時 真実を見失うかもしれない。やる気も次第に失せていく。大切なのは『真実に向かおうとする意志』だと思っている。向かおうとする意志さえあれば、たとえ今回は犯人が逃げたとしても、いつかはたどり着くだろう? 向かっているわけだからな…違うかい?

どんな人も嫌な過去だとか重いしがらみはある。それを忘れたりなかったことにするのではなく、あくまでも意思をもって、共に進む覚悟を持つこと。それこそが人を前に進める力になる。これを『言葉』でなく『心』で理解できたとき、きっと恐いものはなくなっているはずだ。

3. 【人は弱く大きい存在】 鋼の錬金術師

どんなマンガにも好き嫌いってのはある。絵だとかセリフだとかストーリーだとか。だからこそ誰かにマンガをオススメするのは悩むが、この荒木弘先生の鋼の錬金術師(通称ハガレン)だけはそのすべてが完璧に近いマンガであると断言できる。ちなみに現在バンクーバーに住んでいるが、周りのカナダ人に聞くと間違いなく好きなマンガの一つとして挙げられる

主人公は義足と義手を片方ずつ抱える兄と、肉体がなく魂で存在している弟の兄弟。そしてこの2人が肉体を取り戻すための旅をする物語。設定だけで重い。本当に。でもそんな兄がある場面で言うセリフがこれ。

立って歩け。前へ進め。あんたには立派な足がついてるじゃないか。

義足の人にこの言葉を言われたら嫌でも立ち上がらなきゃってなるよ…

でもこう言う主人公たち完全じゃない。彼らは1人では生きていけないし、その才能も血の滲むような努力と等価交換したものだ。錬成するという能力はあるけど、何かの犠牲なしには何も生み出せない。そう、特殊な過去や能力をもつ主人公も結局自分たちと同じ人なんだ。そんな彼らの物語からは自分のちっぽけさ、そして自分の強さに向き合うことを同時に学べる。一は全、全は一という考えを理解することで優しさと強さを備えた人にきっとなれる。強く悲しく楽しく優しい物語。

読んだあと、ことあるごとに手をパンっ!っとしたくなるのも間違いなし。

4. 【ゆるい幸せはだらっと続けられない】 ソラニン

実写化もした浅野いにお先生の作品。浅野いにお先生の作品はかなりクセが強いのもあるが、ソラニンはその中でもクセが抑えられている。物語は20代のカップルが主人公の日常系マンガ。その2人と愉快な仲間がうだつの上がらない日常をだらだら生きながらその日常にもがいていくストーリー。作中である事件が起こることによりその日常がガラッと変わっていく。

まあ恋愛マンガといえばそうなんだろうけど、このマンガからは自分に関わってくれる人を想う大事さと幸せを続ける難しさを学んだ。自分の周りの人は常にいてくれるわけではない。いつかいなくなってしまうかもしれない。今のふんわりした日常はいつか崩壊する危険性もはらんでいるということも自覚した方がいい。そうしたら悪いことは起こらず、大切な人とさよならする必要もないかもしれない。

日常にこそ大切のものはある。コロナのこの状況だからこそ、今大切な人がいる人はぜひ読んでほしい。このマンガを読んだ後はきっとその人のことをぎゅっと大切に想えると思う。

5. 【宇宙の話をしよう】 宇宙兄弟

こちらも実写化した、タイトル通り宇宙飛行士の兄弟を主人公とするマンガ。大学時代に出会って、一度売り払ってまた買い直したマンガ。
このマンガの魅力は心に響いて涙するほど力強い言葉たちだ。既刊30巻を超えるこのマンガの序盤で、大好きな言葉がある。主人公のムッタが発する『宇宙の話をしよう』という言葉だ。

宇宙飛行士候補選抜試験中の主人公たちは宇宙船内部と同じような環境を地上で模擬体験し、その中で様々な課題を与えられる。思い通りにミッションは進められず、ストレスからか同じ班員の仲にも亀裂が入り始める。そんな中主人公のムッタが放つこのことばなのだが、単純ながらものすごい力強さがある。目の前のことにだけ囚われるのではなく、想像力を働かせ、広い視野で物事を見よう、という意図なのだ。地上にいるような考え方じゃなく、宇宙にいるってしっかり仮定する、という課題の前提のようなことを言い出すので、最初は仲間から『なにいってるんだコイツ』みたいな反応をされる。その時点でもう視野が狭まっているとも考えられずに。宇宙ではそういう思い込みや勘違いがすぐに死につながるのにも関わらず。

想像するというのは簡単に思えて意外とできない。物事の本質を見抜くには想像は必須だ。マンガの中でムッタは落ちこぼれみたいなイメージがあるけど、個人的には物事を俯瞰して見られる天才だと思う。自分がそんな切羽詰まった状況でムッタみたいなモノの見方ができるかというと絶対にできない自信がある。でも意識するかしないかというのはとても重要だと感じる。意識していると「あ、今自分めっちゃ視野狭いわあ」って俯瞰できることが多々ある。今自分がやっていることのそもそもの意味はなんだろう?この出来事の背景にはなにがあるんだろう?そう考えることを忘れると現代社会ではすぐに情報の波に飲まれて終わる。このムッタの言葉は今の世の中を生きる軸となる言葉になっている。

もちろんムッタの言葉だけでなく、宇宙兄弟の登場人物が放つことばは本当に勇気をくれるものが多い。この宇宙兄弟は自分が今住んでいるバンクーバーの市立図書館にも寄贈されており、自由に読むことができる。当時カナダに来て不安な気持ちでいっぱいだった私は偶然見つけたこのマンガを再読して、とてつもない勇気をもらった。ワーホリ初期を支えてくれたのはこの宇宙兄弟といって間違いない。

マンガから学べないこともある

思えば自分のマンガ人生は物心もつかない頃、元暴走族の親父の所有物だった湘南爆走族から始まっている。そこから読む対象はコロコロやボンボン、ジャンプになり、サブカル系のマンガを漁り、ヤング〇〇、Webマンガ、アメコミ等かなり多くのマンガを読み漁ってきたと思う。それでもひとりの人間としてまだまだだと思うし、できないことの方が多い。何かの実を食べて特殊能力を身につけられることもなければバスケットでダンクすることもできない。マンガは色々教えてくれるけどなにもかも教えてくれるわけじゃない

それでも私はマンガを読むことをきっと一生やめないだろう。結婚しても子どもができても孫ができても余命が近づいても。紙を束ねて出来た物体を開くだけで見たことも聞いたこともない世界にすぐに飛び込めるものなんて、2020年になった今でもマンガ以外に存在しない。今も昔も世界に入り込む所用時間は1秒以下だ。

世の中にはマンガよりも大事なことはいっぱいある。その大事なことを大事に思うことができるように、これからもマンガをいっぱい楽しんでいきたいと思う。

#私を構成する5つのマンガ





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