非日常の日常(1)

 路地裏で少女を拾った。

 何気なくいつもと違う道で帰ろうと思った。
そのほんの少しの気紛れが、俺の退屈で憂鬱だった日常を、じめじめとした梅雨の終わりとともに、騒がしく照りつける夏へと変えていった。


 朝起きて歯を磨く。朝食にはまわりを少し焦がした目玉焼きと香ばしく波うったベーコン。昨夜の残りの味噌汁を温めながらテレビをつける。殺人や強盗など物騒なニュースが後を絶たないが、滅多に外出しない俺には関係ない。しかし今日はその滅多な日で、数少ない友人の家にお呼ばれされている。要件は大方「飯作ってくれ」だと思う。幼い頃から両親が家を留守にしがちだったため、家事全般は習得済みだ。これでいつでも嫁げる。俺もあいつも男だけど。冗談も程々に、天気予報を確認。傘がひっくり返っている。絶好の引きこもり日和じゃないか。

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