私が理想とするフリーゲーム

理想的なフリーゲームとは何か?
それは人によって様々でしょう。

重厚な長編RPG。商業作品では下火となったジャンルのオマージュ作品。ニッチな性癖のノベルゲーム。数分で終わるネタゲーに、「これはひどい」と言いたくなるクソゲー。ジャンルだけでもあまりに多彩です。
または、ゲーム掲載プラットフォームのランキングで首位を取る大ヒット作品。コンテストで大賞を取る実力作。有名実況者にプレイされて何万再生も行く話題作。SNSやイラスト投稿サイトで二次創作が多数投稿される作品。このような外的評価を目標とする人もいるでしょう。
あるいは「評価なんていらないから、ただゲームが完成して公開できればいい」という人もいるでしょう。

これらの価値観を、私は否定しません。
あなたはあなたの理想とする作品を作ってください。

その上で、私が理想とするフリーゲームについて説明しますが……。
その前に、私がフリーゲームのDL数に関して提唱している概念を紹介します。


DL数のうち、最後までプレイした人はどれだけいる?

幸先よく、あなたのゲームが1000DL行ったとしましょう。
そのうち、何人が最後までプレイしたと思いますか

1000人全員がクリアした、と考える人はほとんどいないでしょう。
それでも、100人くらいはクリアしたはず……?
流石に10人くらいってことはないよね?
いや、1人でも満足してもらえばそれでいい、そういう作者もいるでしょう。

甘いです
作品次第では、1000DL達成してもクリア者が1人にも満たないことすらあり得ます。
(もちろん、たけしの挑戦状のような「クリアすることがチャレンジ」という作品を作りたいなら話は別ですが)

私が提唱する、DL数に対するクリア率の推計方法がこちら。

  1. DLしたゲームを起動する壁

  2. グラフィックの壁

  3. システムの理解の壁

  4. ストーリーの理解の壁

  5. プレイ時間による離脱の壁

これらの壁を乗り越えたわずかな人間だけが、最後までプレイ・クリアしたことになります。

起動の壁

意外かもしれませんが、DLされたゲームは全員がプレイするわけではありません
大多数のゲームは起動すらされずHDDに眠るか、タイトル画面だけ見て終了されます。

過去に作ったランキングシステムのあるゲームの場合、DL数に対してランキング参加者数は1/31/5程度。
DLした人のうち、実際にプレイした人は1/3程度しかいないのです。
また、ゲームをプレイする前の壁であることから、ゲームのクオリティは無関係と思われます。

以下、プレイを断念しなかったプレイヤーの割合を生存率と呼ぶことにします。

また、ブラウザゲームの場合、別日に続きからプレイしたり、ゲームが止まって再起動した分もカウントされてしまいます。
特にPLiCy の場合、説明文と同じページにゲーム本体があり、「プレイ前に説明文を読んでプレイするか決める」ということが難しい。
なので、PLiCyのプレイ回数は、実際のプレイ人数から大幅な水増しが行われていると考えて良いでしょう。

尚、今回はフリーゲームの話なのであまり深掘りはしませんが、有償配布作品だと起動の壁は少し低くなるようです。
カネを払ったんだから少しでも楽しみたいとか、興味がある人じゃないとカネを出して買わないとか、そういう理由もあるのですが。
それ以上に、無料配布のゲームがあまりにも投げられやすいというのはありそう。
それでも、数千円する商業作品でも積みゲーをする人がいる以上、生存率はせいぜい1/2程度と思われます。

グラフィックの壁

どんなに面白いゲームでも、グラフィックが汚いとプレイする気は起きない。
逆に、綺麗なグラフィックのゲームは、それだけでDL数が伸びます。

ただ、ごく稀にキャラの立ち絵などのグラフィックを気にしない人もいます。
そういう奇特な人たちが存在する可能性を含めて、生存率の下限値は1/20程度と推計。

逆に、どんなに上手い絵であってもクレームが入ることはあります。
それを考慮すると、上限値は1/2程度か。
ただし、絵が描ける人間がイラスト投稿サイトで宣伝した場合などは、1/2より多くのプレイヤーが満足する可能性はあります。

システムの理解の壁

以前の記事でも書きましたが、作者が思う以上にプレイヤーはシステムを理解しません

特に斬新なシステムほど、プレイヤーは理解しません。
ゲーム内の説明は読まれない。
丁寧なチュートリアルを用意しても、飛ばされる。
「○○機能がない!」というクレームが来たが、その機能はゲーム内に実装されてるし普通に紹介されてる……ということもザラです。

システムの離脱率を下げるには、なるべくありきたりで皆が知ってるシステムにするのが正解。
ツクールのデフォルトシステムをそのまま使ったり、ノベルゲームなどのシンプルなシステムなら生存率は1/2程度に抑えられるでしょう。
そうでない、独創的で革新的なシステムの場合、生存率は1/5〜1/20程度まで生存率は下がることを覚悟してください。

……そんなありきたりなシステムのゲームが面白いかというと、話は別ですが。

ストーリーの理解の壁

そもそもまともに文章が読めて物語を理解できる人間がどれだけいるか、それも問題です。
作品のクオリティや読者の読解力に問題が無くても、物語を満足に楽しめないケースは多数あります。

特に性別や趣味嗜好の壁はどうやっても解決できません。
大多数の男性には女性向け恋愛要素はウケないし、大多数の女性にも男性向け恋愛要素はウケない。
かといって恋愛要素のない作品も、やはり興味を持たない人は多数いるでしょう。

他にもストーリーの理解を妨げる要因は多数あります。
作者の主義思想が受け入れられない、登場人物の価値観があまりに違いすぎる、ファンタジーにおける共通認識を知らない、都会と地方で生活スタイルが異なる、気候の違い(特に雪に関する感情や理解)、年齢や作品が書かれた時代の違いによるジェネレーションギャップ……。
そもそも国や言語が違うから楽しめないのは、ストーリーに特化したゲーム最大の課題といえます。

これらの要素を考えると、どんな文豪でも生存率は1/2程度が限度と思われます。
ましてや文才のない人間なら生存率はよくて1/5、趣味や主義思想が強い作品なら1/20程度まで下がると思われます。

とはいえ、文章を読み飛ばすプレイヤーなら気にならないし、どんな悪文でも主義思想が合うという理由で評価されるかもしれません。
……そんな理由で評価されるのがいいのかは、ともかく。

プレイ時間による離脱の壁

作品に問題がなくても、単純に「プレイ時間が長い」というだけで離脱のリスクがあります。

作者の思う以上に、プレイヤーは些細な理由でプレイを断念します
仮に10分あたり10%の割合で離脱するとして、1時間後の生存率は53.1%、5時間後には4.2%のプレイヤーしか残らないのです。

ただ、これは流石に大雑把すぎる推計。
実際の離脱率は序盤はもっと高く中盤〜終盤の離脱率は低いと思われます。
また、冒頭でのリタイア要因は大抵がここまで書いてきたグラフィック・システム・ストーリーによるもの。
純粋にプレイ時間が原因での離脱は、そこまで多くないかもしれません。

別な離脱要因としては、日をまたいだことによる忘却というのもあります。
プレイ時間が数時間にわたる長編作品は、一気に最後までプレイされることはまずありません。
大抵の場合、何度かのセーブとロードを繰り返して、数日かけてプレイされるでしょう。
そして、一度中断してそのまま忘れられるケースも少なくない
というわけで、中断からの離脱リスクを考えると、1回のセーブもせずに終わるゲームが望ましいです。

どれだけのプレイヤーがクリアしたか推計してみよう

というわけで、実際のところどれだけのプレイヤーが最後までプレイするか、計算してみましょう。

試算その1:非絵師が作った長編RPG

  • 起動の壁:1/3

  • グラフィックの壁:1/20

  • システムの壁:1/5

  • ストーリーの壁:1/5

  • プレイ時間の壁:1/20

これらの壁を全て乗り越える割合:1/30000

なんと!30000DL行っても最後までプレイする人は1人という結果になりました!
実際にはこのような作品は1000DLも行かないでしょうし、クリアした人はほぼゼロと言えるでしょう。
これでは良作かクソゲーかを判断するどころではないです。ゲームとして成立しているかどうかすら怪しい。

試算その2:絵が描ける人間が作った短編ノベル

  • 起動の壁:1/3

  • グラフィックの壁:1/2

  • システムの壁:1/2

  • ストーリーの壁:1/2

  • プレイ時間の壁:1/2

これらの壁を全て乗り越える割合:1/48

なんと!クリア率は2.08%まで上がりました!
これなら100DLでも2人は最後まで読んでもらえるし、1000DLで20人はクリアしてもらえます。やったね!

……普通にゲームを作った場合、どんなにハイクオリティかつ万人受けする内容にしても2%のプレイヤーしか満足させられません
厳しいですが、これがゲーム制作の現実です。


私が理想とするフリーゲーム

お待たせしました。
これらを踏まえた上で、私が理想とするフリーゲームについて説明します。

私が理想とする作品はこれです。

  • 作者に十分な画力がある

  • ジャンルがノベルゲームである

  • 作品規模は10〜30分程度の短編

  • 累計DL数が500〜10000?程度(上限値は未確定)

作者に十分な画力がある

絵が描ける人間は強い

絵が描ける人間は自作品のDL数も伸びるし、作品のクオリティも満足度も上がる。
ゲーム製作者にとって、いや人間として一番重要な能力です。

これについては、先日書いた記事をご覧ください(本日2回め)。

ただ、実のところ「ゲームで使うイラスト」としては、そこまで高い画力は必要ないでしょう。
美大に合格できるだけの画力だとか、Pixivのランキングに入ったりXで万バズするほどの画力は不要。

せいぜいPixivで全年齢対象・一次創作イラストで安定して10いいね・10ブクマ行く程度の画力があれば十分。
これくらい低い目標なら、誰でも達成できるでしょう。
知能や能力や環境に問題がなければ、1〜2年程度絵の練習をすれば身につくはずです。

一応補足しておくと、Pixivは全年齢対象作品よりR-18作品の方が伸びやすいし、二次創作イラストの方がずっと伸びます。
作りたいゲーム同様、描きたい絵も人それぞれなので、無理に全年齢対象一次創作イラストを描くことは強制しませんが……。
ふりーむ等のフリーゲーム掲載プラットフォームでは、性的・暴力的な表現はR-15程度まで制限がかけられています。
また、二次創作作品も掲載見送りになりやすく、元作品で二次創作が許可されてることを示す必要があります。
そんなわけで、事実上全年齢対象・一次創作の作品しか投稿できません。
R-18イラストや二次創作で伸びたとしても、その実力はフリーゲームでは活かせないでしょう。

尚、私はpixivに10年以上投稿したにも関わらず、特殊性癖でしか10いいね達成できず、中には0いいねの作品すらあります
この時点でクリエイターとして、いや人間としてカスなことがわかりますね。

ジャンルがノベルゲームである

これについても、先日書いた記事をご覧ください。

要約すると「ノベルゲームはシステムの不理解によって低評価されることが少ない」「ノベコレに投稿できるメリットが大きい」。

問題点は「文章を読むこと自体好まないユーザーが多くDL数が伸びにくい」「特に海外ユーザーはほとんど楽しめない」。
実はノベルゲームもデメリットは多いのですが……。
それでも余計な要素を剥ぎ取った純粋なゲームとしては、ノベルゲームは究極のゲームだと言えます。

作品規模は10〜30分程度の短編

よく「初心者はまず短編作品を作って作品を完成させるまでの流れを覚えた方がいい」と言われますが……。
10年以上ゲーム制作をしてきた経験から言えば、中級者や上級者であっても短編の方が良いです。

詳しい理由はプレイ時間の壁の項目で説明したので割愛しますが……。
一つ付け加えるとしたら、10〜30分程度の作品は商業作品では出しにくいという理由もあります。
ガラケー時代は10円単位で決済するサービスもありましたが、今のコンテンツは100円・1ドル刻みのものがほとんど。

考えてみてください
10分で終わる作品を100円で売れますか?

10分程度で終わる短編作品は、商業作品に脅かされたり比較されることのないフリゲ界隈最後の楽園だと考えています。

もう一つの理由として、作品は短くコンパクトにまとめた方が良いというのがあります。
作品の性質にもよりますが、内容がとっちらかっていたり、無意味なシーンが多い作品は面白くない。
プレイヤーを作品に引き込む導入、ラストに向けて貼られた伏線、魅力的なラストシーン。
これらをコンパクトにまとめた作品が理想的です。
その対極にあるのが、無意味に文字数の多いだけで内容がスカスカの作品。例えばこの記事ですね。

累計DL数が500〜10000程度

これについては、持論としても具体的な数値が確定していないのですが。

DL数が伸びてほしいという願望は、承認欲求に繋がるので避けたいです。
というか、DL数は伸びないのは気になるものの、伸びた作品はどうでもいい
1000DLを超えたら、もうDL数は関心はないです。

ただ、悲しいことにゲームという媒体はとにかく最後まで遊んでもらうことが困難な媒体です。
先ほどの試算でもわかるように、どんなに面白いゲームであっても最後までプレイするプレイヤーは1/48程度しかいません。
控えめに10人に満足してもらうにしても、500DL程度は必要となります。

実際にはそこまで秀でた画力や文才を身につけるのは困難。
グラフィック生存率・ストーリー離脱率ともに1/3程度が限度と思われます。
この場合、最後までプレイされる割合は1/108程度。
100人にクリアしてもらうには、最低でも1万DLは必要……。

いや、常識的に考えて1万DL行ったフリーゲームは十分に成功した部類。
それでもプレイヤーが足りないということはないはず。
というわけで、理想のフリーゲームのDL数の上限値については、未だに答えが出ていません。

尚、この数値はふりーむ・ノベコレ・その他各種サイトの合計値です。
(PLiCyはプレイ回数が水増しされやすいため要調整)


おまけ:現時点で一番理想に近い自作品

そもそも絵がうまくない時点で、どの作品も門前払いなのですが。
敷いて理想に近い作品を選ぶとしたら、こちらになります。

  • ジャンルはノベルゲーム

  • プレイ時間は1周1分、完全クリアまで5~10分程度

  • ふりーむで500DL・ノベコレで1000DL達成

また、生存率も推計してみるとこんな感じ。

  • 起動の壁:1/3

  • グラフィックの壁:1/5
    キャラデザというかお姉さんの胸に全振りした感じはある

  • システムの壁:1/2

  • ストーリーの壁:1/2~10

  • プレイ時間の壁:1/2

生存率は1/1201/600程度。
DL数を考えると、満足したプレイヤーは2~12人程度と思われます。

この作品最大の強みは、別にストーリーに不満や反発があろうと作者にはノーダメージとkろ。
むしろストーリーに低評価をつけることで完成するとも言える。
ある意味では狙って作ったク○ゲー。でもその割には評判はいい。
まさに自作品最強のゲーム。

……よいこの皆様は、こんな独りよがりなゲームではなく、皆が楽しめるゲームを作りましょうね。




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