フリゲ作者は絵を描こう

面白くてDL数が伸びるフリーゲームを作るのに必要なものは何だ!?

斬新で新鮮なシステム?

耽美で情緒あふれるストーリー?

否!

作者による美しい自作イラスト!!
これこそがフリーゲームでいちばん大事なものだ!!!


というわけで、今回は何故面白いゲームを作るためには作者の画力が必要なのかについて説明していきます。


注意事項

あらかじめ断っておきますが、私は絵が下手です
10年以上Pixivに投稿してきて、この程度の画力しかありません。
それを踏まえた上でお読みください。
あと、できればPixivの方でフォロー・いいね・ブクマしてもらえると嬉しいです。

DL数を伸ばすのに有利

みなさんは、ふりーむやノベルゲームコレクションなどのフリーゲーム掲載サイトで、何を基準にゲームをプレイするか決めますか?
知ってる作者の作品かどうか?
自分が興味のあるジャンルかどうか?
キャッチコピーに惹かれたかどうか?
人によっていろいろな基準はあるでしょう。

ですが、ふりーむやノベコレの新着ページはだいたいこんな感じ。


ふりーむ 新着ゲームページ


ノベコレ 新着ゲームページ

このように、ゲームに関する情報はサムネイル画像とゲーム名、それと作者名しかない。
ふりーむには一行キャッチコピーがある程度。

紹介ページを開いてもらえれば説明は読めるものの、サムネイルをクリックされなければ説明も読まれない。
どんなに魅力的なシステムやストーリーがあったとしても、サムネイルが埋もれていては発見すらされない。
厳しいですが、これがフリーゲーム掲載プラットフォームの現実です。

ユーザーに見つけてもらえる魅力的なサムネイルを作るにはどうすればいいか。
これにはデザインなどの知識も必要ですが……
一番強いのは魅力的な自作イラストを使うこと
特に魅力的な人物画が効果的
男性向けなら美少女、女性向けならイケメンが強いです。
また、棒立ちの立ち絵よりもポーズをつけた方が魅力的に見えます。

尚、イラスト素材を使えばそこそこの見栄えにはなっても、既視感やどこかで見かけたような印象を与えてしまいます。
また、立ち絵の素材は多数出回っていますが、スチルの素材はほとんどない。
作品の顔となるタイトル画面で立ち絵を使うしかないのは、広報上不利。
最近は生成AIという手段もあるのですが、AIを嫌悪するユーザーも少なくないし炎上リスクを抱えることになります。

このように、絵が描ける人間はゲームを手に取ってもらう段階で有利な戦略が取れるのです。
逆に言えば、絵が描けない人は最初からチャンスがない

テキストは読まれない

幸先よく、あなたのゲームがDLされてプレイされたとしましょう。
プレイヤーは、あなたのゲームを楽しんでくれるでしょうか。
残念ながら、その可能性はかなり低いと思われます。

一番の問題点は、プレイヤーはテキストを真面目に読まないこと。
普段からnoteやXなどを見てる人たちには理解できないかもしれませんが、世の中にはあなたの思う以上に文章を読まない人が多数います

文章をまともに読まない人がゲームをプレイするとどうなるか。
オープニングのテキストを読み飛ばすから、何が起きているかわからない。
チュートリアルやシステム説明を読まないから、システムも理解できない。
そんな状況でゲームを理解できるはずもない。
こうしてあなたのゲームは、ゴミ箱にダンクされる……。
悲しいですが、これがテキストを読まない人にとってのゲームです。

余談:日本人の識字率にういて

そもそも、今の日本人の識字率がどの程度なのか。
公式には「日本の識字率は99%」とされていますが、これはいつのデータでどのような基準なのか。
どう考えても、今の日本の識字率がそんなに高いはずがない。
印象論だけで語るのもアレなので、最新のデータを出したいのですが……。

データなんかねぇよ

1948年に調査が行われたのを最後に、日本では識字率調査は行われていません。
2022年に国立国語研究所で調査した結果だと「識字率は80%くらい」「日本人の2割は読み書き能力がないために生活に不自由している」としています。

更に言えば、これは日常生活で使う文章での調査結果。
文学的な文章の面白さや感情表現を読み解ける人は、50%もいないのではないでしょうか。
せっかく書いた美しい物語も、プレイヤーの半分も楽しんでもらえない。
これは作者の技量不足ではなく、プレイヤーの能力が原因なので作者にはどうにもできない。
これがストーリーに特化したゲームの現実です。

私個人としては、文学的に面白いゲームは好きですけどね。

システムは理解されない

「いや待て、文章で説明せずに自然に理解できるシステムならいけるぞ!」
そう思った方もいるでしょう。

ですが、説明を読まず直感的にシステムを理解できる人間もほとんどいません

例えば、1986年に発売された初代ドラゴンクエスト。
当時パソコン向けRPGはあったものの、ファミコンではほとんどRPGは発売されておらず。
信じられない話ですが、RPG自体知名度が低い時代……だったそうです。
いかんせん、私が生まれる前の話なので当時の空気感まではわからん

そんなドラゴンクエスト、開発当初はいきなりフィールドから始まる仕様でした。
開発者は「近くにあるお城や街に入るだろう」「そこで情報を集めて装備を整えるだろう」と考えていました。
ですが、子供を相手にテストプレイをしたところ、城や街をただの背景と認識して入れることに気付かず、何もわからないまま倒れた……そんなケースが多発しました。
それを踏まえた上で、発売時には「玉座の間に閉じ込められて、操作を覚えないと外に出られない」仕様になりました。

流石に現在はプレイヤーのゲームに対する経験値も貯まったので、開発中のドラクエの仕様でもまともに遊べるプレイヤーは多いと思いますが、
それでも初めてゲームを遊ぶ人はいつの世も絶えないし、ゲームの操作が複雑化した今こそ操作に慣れるためのシーンは必要でしょう。
それでいて、丁寧なチュートリアルを用意しても「かったるい」と飛ばされる。

このように、プロのゲーム開発者でも「何も知らないプレイヤーにゲームのシステムを理解してもらう」ことは苦労しています。
ましてや、アマチュアのゲーム製作者に「文章を読まなくても自然に理解できるシステム」なんて作れるでしょうか。
私には、そうとは思えません

文章を読まない、システムも理解できない。
そんな人でも楽しめる娯楽……。

そう、美しいグラフィックによる表現ですね。
美しいグラフィックを堪能するには、知能も教養もいらない。

外注はカネがかかる

「グラフィックの重要さはわかった。でも絵が描けないなら絵師に依頼すればいいのでは?」
そう思う人も多いでしょう。
実際、絵が描ける人間に依頼するのはそれなりに有効です。
私自身、過去に何度か有償依頼した立ち絵を使ってゲームを作ったことがあります。

ですが、これも欠点がいくつかあります。

最大の問題点は、依頼にある程度の費用がかかること
数年前は数千円台前半でも引き受けてくれた絵師はいたのですが……。
Skebやpixivリクエストなどの有償依頼サービスの普及によって、絵師が買い叩かれる時代はもう終わりました。
現在は立ち絵なら安くても1キャラ1万円、全身絵なら2〜4万円が相場。
衣装・表情差分アリならさらに高くなるでしょう。

また、スチルの方もかなりのお値段となります。
あるサイトによると、キャラ1人につき4万円、背景で2〜3万円、1枚につき7万円程度。
キャラ数が増えると値段が上がるようで、2人以上の絡みだとさらに高くなります。

ここで、短編ノベルゲームのイラストを有償依頼するといくらかかるか、試算してみましょう。
キャラクターは2人、スチルはタイトル・前半山場、後半山場、ラストの4枚と仮定。
ノベルゲームとしてはシンプルな構成ですが……。

  • キャラ立ち絵:3万円×2人=6万円

  • スチル:(4万円+2.5万円)×4枚=26万円

総額32万円となります。
尚、依頼価格が税抜なのか税込なのかはわかりませんが、仮に税抜だった場合さらに消費税3.2万円が追加されます。

無償配布のフリーゲームの制作に、そんな費用を出せますか?

アナタが石油王でもない限り、短編ノベルゲームを作るために32万円は出せないと思います。
もちろん、クオリティの高いイラストによってDL数は伸びるかもしれませんが、それでもノベコレで1万DL行くかどうか。
ふりーむに至っては、掲載見送りになるリスクが高く、32万円が水の泡になる可能性すらあります。
無論、スチルの枚数を削る・主人公の立ち絵を消す、立ち絵をタイトル画面に流用するなどのコストカットは可能ですが、その分クオリティは下がる。

そしてもう一つ、これ言うのはタブーなのですが……。
イラストの発注に関するトラブルは日常茶飯事ということ。
納期になっても依頼したイラストが届かない……というのはよくあること。
中には仕事絵そっちのけでゲームをしてたり、前払いの依頼料だけ受け取って逃亡したケースもあるようです。
流石にここまで酷いケースは少ないようですが……。
逆に依頼した側が金を払わないケースもあるので、どっちもどっち。

そんなわけで、現在のフリーゲーム制作において立ち絵を依頼するのは現実的とは言えない。
イラストソフトや液タブや教本を買って、自力で絵を描いた方が遥かに安く済むでしょう。
納期についても、作者の自己責任に抑えることができます。

尚、この項目には絵師やイラストレーターの仕事を批判する意図はありません
むしろ今までの依頼料があまりにも安すぎたのだ……。
そして、双方の合意があったとはいえ、2015〜2017年頃に1キャラ2000円弱で立ち絵を依頼した私はあまりに恥知らずだ。先方さんもイラストの送付が遅れたとはいえ、どうにかしてお詫びと補償をしたい。

絵が描けるゲーム製作者の弱点

最後に、高い画力がある人間がゲーム制作をすると陥りがちな罠について書いておきます。
絵が描けるゲーム製作者がハマりやすい罠、それは掲載プラットフォームの表現規制に引っかかりやすいこと

特にセンシティブなイラスト(性的表現・暴力的表現)で伸びた人は注意。
フリーゲーム夢現のように、R-18作品が投稿できる場所もあるのですが……。
ふりーむやノベコレなど、多くのフリーゲーム掲載プラットフォームではR-18作品が登録できません。
特に、イラストなどのビジュアル面での表現があると、まず通りません。

ですが、ビジュアル面の表現を削って、テキストのみで表現した場合、通ることもあります
例えば男女間のセックスの場合、テキストのみ・具体的な描写なしなら、15歳以上対象にすれば通ることもあります。
流石に効果音を入れたり演出を入れると、通らないかもしれませんが。

ただ、最近は表現規制は厳しくなっており、特にふりーむではテキストのみの描写でも掲載見送りになることがあります。
ふりーむは性的表現は比較的緩いのですが、特に暴力的表現はまず通らないです。
そのため、審査に通るためにビジュアル面の表現を削るというのは、あまり有効ではなくなってきています。
そんなわけで、「表現規制のせいで絵が描けるメリットを活かせない」という問題は、相対的に軽くなりました。


結論

やはり、絵が描ける絵師は強い。
特に健全絵で伸びる人間は強い。

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