ユーモアはセンスではなくスキルでしかないと思う
「あの人は笑いの才能があるよね」
「彼はユーモアのセンスがあるね」
といった言葉をよく耳にする。
でも、人を笑わせることは本当に生まれながらの才能なんだろうか?
たしかに、子どもの頃からクラスの人気者で、いつも笑いをとっている人はいる。だけど、個人的にはデザインやプレゼン、スポーツと同じような一つのスキルなんじゃないかと思う。スキルである以上その背景には理論があり、練習で技術を磨くことができるはず。
ユーモア・笑いのスキルを身につけることができれば、
▶お客さんとの関係が良好となり売上が上がったり
▶上司・同僚とのコミュニケーションが円滑になったり
▶採用やマーケティングがうまくいくようになったり
などなど、仕事面でも様々なメリットがある。
つまり、ユーモアや笑いはビジネスにおける潤滑油であると言えるわけだ。でも、扱い方を間違えると滑ってケガをしたり、炎上してしまう可能性もある(油だけに)
そこでこの記事では、ユーモアのスキルとは何か?についてサラッとまとめてみることにする。
と、ここまで語っているお前は何者だ?
と思っている方もいらっしゃるでしょうから自己紹介させて頂きます。
ダウンタウンの松ちゃんに憧れて、放送作家を目指そうと考えたこともあり、大学では心理学を選考して、卒論でユーモアについて研究をしました。
ユーモアのスキル=○○
ユーモアで人はなぜ笑うのか?
色々な説や理論が展開されているけど、共通点を簡単にまとめると
一見無関係に見える2つ以上の事象の間に共通のコンテキストを見出すこと
であると言われている。
例えば、ダジャレのように言葉の韻を踏んだり、言葉の持つ意味や背景の間に"共通するもの"を発見することで「面白い!」と感じるわけだ。Aha!体験や伏線回収できた時の快感にも似ている。
この事実に基づいて、ユーモアのスキルをビジネスで馴染みのある言葉に置き換えると、洞察力、連想力、創造性、一般化・抽象化能力を組み合わせたようなスキルと言えるだろうか。
経済産業省の「社会人基礎力」と比較してみると、課題発見力・創造力、働きかけ力、発信力、状況把握力あたりと関連がありそう。
実際、よしもと興業さんがこんなワークショップ形式の研修を実施していたり、元芸人さんの研修講師の方も大勢活躍されている。
ユーモアのスキルを身につけることで、ビジネスシーンでも活躍できる可能性がありそうだ。
ユーモアのスキルとウケる・ウケないは別問題
ということで、ユーモアはスキルであり努力次第で高めることができるわけなんですが、スキルを身につけると、ついつい実践で使いたくなるもの。
SPIN話法やPREP法を知った営業マンが、一生懸命に質問をしていたり
セールスコピーを覚えたてのマーケが、そのままキャッチコピーを使ったり
別にダメではないけど、スキルがあるから上手くいくわけではない。コミュニケーションには受け取る相手が存在するので、相手のニーズに応える必要があるわけである。営業やマーケティングと同じだ。
そこで、もうひとつ考えなければいけないテーマが浮かび上がってくる。
人はなぜ笑うのか?
深く考えすぎると哲学的な話になってしまいそうだが、要するに相手が求めているものを知り、それをコンテンツとして提供することが重要だ。
ということで、欲求といえばお馴染み、マズローさんの5段階欲求に合わせて、階層毎に人が求めているであろう笑いをカテゴリー分けしてみる。
マズローの5段階欲求でお笑いネタを分類する
ユーモアのスキルを振りかざしても、相手の求めている欲求階層を読み誤ると、事故になる。(スベッたり、炎上したり)
これについては自分の事故経験談がある。卒論の時に様々なジョークを評価してもらい、統計的に分析するというアンケートを行ったが、下ネタやブラックジョークを不快に感じた人からクレームをもらった。
ということで、相手の求めている"階層"とは何なのか?それぞれの階層に合った笑いの例とともに具体的に見ていくことにする。
🔳生理的欲求
生理的欲求とは、生きていくために必要な、基本的な欲求のこと。
生理的欲求を満たす笑いの例は、ブラックジョークと下ネタだ。
ビジネスにおいて生理的欲求に訴えかけることで笑いをとるのは快く思わない人も多く、セクハラやパワハラなどのリスクを伴うので注意が必要だ。
🔳安全欲求
安全欲求とは、その名の通り安全・安定を求める欲求だ。
安全欲求を満たす笑いは、モノマネ・ダジャレ・オヤジギャグなど誰でもわかりやすいベタな笑いである。わかりやすいが故にスベるリスクも高い。
この階層で安易に笑いを取りすぎると、
「この人大丈夫かな・・・」と信用残高が減る可能性があるので、これまた注意が必要だ。
🔳社会的欲求
社会的欲求は、友人・会社・コミュニティ等の中で受け入れられたいという欲求だ。
社会的欲求は集団への帰属を求めるものであり、社会的欲求を満たす笑いは、いわゆる身内ネタや内輪ウケなど一定のコミュニティの中での共通言語や共通体験を背景にして笑いを起こす。
コミュニティ内での親近感やエンゲージメントを高める効果が期待できるが、逆にコミュニティに馴染んでいない人に対して疎外感を与えてしまう反作用もある。
ここまでの3つの欲求段階における笑いは、親しい同僚や社内ではギリギリ使えそうだけど社外で実践するには色々な意味でリスクが伴う。
そこで、公のビジネスの場で笑いの力を活用するのであれば、次の承認欲求の階層以上で笑いを起こすスキルを身に付ける必要がある。
🔳承認欲求
承認欲求は、他者から尊敬されたい・認められたいという欲求だ。
承認欲求を満たす笑いには、大きく2つのパターンがある。
1つ目はいわゆる自虐ネタと呼ばれるもので、自分を下に見せることで相手に優越感を持たせ笑いを起こす方法である。ただし、自虐ネタは営業マンなどがやると、いかにも相手に媚びを売っているように見えてしまうため、注意が必要だ。
2つ目がいわゆるユーモアである。ユーモアとは何か?には諸説あるが、ここでは主にフリ→オチという流れで構成され、オチがわかった瞬間のAHA体験(「なるほど!」「そういうことか!」)により引き起こされる緊張と緩和による快感を笑いに転化するものと考える。謎掛けなどもこのカテゴリに含まれるだろう。
🔳自己実現欲求
自己実現欲求とは、世界観・人生観にもとづいて「あるべき自分」になりたいという欲求だ。
「自己実現欲求を満たして笑いを起こすってどういうこと?」マズローさんもビックリである。この欲求段階を満たす笑いまで辿り着く頃には、承認欲求で度重なる笑いの実績を積み重ね、「この人は面白い」というキャラ立ち・セルフブランディングができあがっているでしょう。つまり極端な話、何を言ってもウケる「すべらんな~」な状態になっている必要がある。
以上、5段階の欲求階層に笑いを無理やり分類してきたが、実際には複数の欲求段階にまたがるものや判断が微妙なものもあるかと思う。
こうして分類してみると、承認欲求に訴えるユーモアというのが非常にリスクが少なく、リターンが大きい感じがする。
ぜひ、ユーモアのスキルを身につけて、ビジネスに活かしていこう。
【ご注意】
本記事の内容を参考にした結果スベっても、インビジョン並びに石井は一切責任は負いません。
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