連載小説 歩行遊歩道をゆく②

 足早に、歩く、男の、背中が見えるようだ。彼は、どこに向かって、歩いてゆくのだろう。沈黙のままだ。風が、ひとつ、吹く。歩いていれば、楽になれる、と、思って、歩くのかもしれない。どこまでも、歩いてみるけれども、行き先は、今も、わからないでいるようだった。
 風が、ひとつ、問いかけたようだった。おまえは、どこに行くのかと、訊いたのだった。男は黙ったままだった。男には、口がついていないのかもしれなかった。夕暮時、烏が鳴いた。烏の黒光りする羽根が、太陽の光を散らした。私はどこへゆくのだろうか。男は、声もなく、そう問うた。

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