withコロナ時代の益田版カタリ場
2020年6月、コロナウイルスと付き合っていく新しい生活様式が各地で試行錯誤される中、島根県益田市の中西中学校で、地域の大人と子どもが語り合う「益田版カタリ場」が実施されました。
益田版カタリ場とは、
・地域の大人と子どもが1対1の対話を通して、これから「どんな大人になりたいか」を考えるライフキャリア教育のモデル授業。キャリア教育だけではなく、地域で気軽に話せる大人を増やす繋がりづくりという狙いもある。
・「認定NPO法人カタリバ」が開発した「カタリ場」プログラムを、2015年より益田市と連携して開発した益田版の対話プログラム
・2020年現在、市内ほぼ全ての小・中・高校で導入されている。
中西中学校カタリ場のダイジェスト動画↓
ソーシャルディスタンスを意識したカタリ場
コロナ禍によって多くの地域行事が中止を余儀なくされている中で、コロナを理由にすべてを中止にしていいのか。今回、教育委員会と学校と協議を重ねて、市内・県内の感染状況を鑑み、しっかり対策を講じた上で、実施する決断をしました。
「ソーシャルディスタンスボード」の開発
3密を回避するために、体育館での実施、定期的な換気、参加者のマスク着用、実施前の参加者の検温実施を徹底。さらに、参加者同士の至近距離での対話を避けるために、新しい取り組みも生まれました。それが、ソーシャルディスタンスボードです。一定のソーシャルディスタンスを担保できるボードを地面に置き、その端と端に座って対話をするという仕組みです。
ソーシャルディスタンスボード表面の活用
このソーシャルディスタンスボード、表は益田市内20地区を旅する「すごろく」ゲームの仕様となっており、ふるさと教育の要素も入っています。初めましての大人と子どもが自己紹介しながら仲良くなれるように、すごろくで回る各地区に「好きな食べ物」や「今ハマっていること」など自己紹介のテーマが書かれています。
ソーシャルディスタンスボード裏面の活用
ソーシャルディスタンスボードは、裏面もあります。表面は最大4人で対話できる仕様になっていますが、裏面はセパレイトして「1対1の対話」用にして使うことが出来ます。表面と同じように端と端に座って語ります。お互いのこれまでの歩みや今のこと、そしてこれからの未来のことについて、本音で語り合われました。
コロナ禍でも、「対話」を諦めてはならない。
カタリ場を受けた生徒の感想をぜひご一読ください。
生徒の感想
生徒の感想を見て感じたこと、それは10代の思春期の多感な時期にこそ、多様な大人と対話する場が必要だということです。普段、学校と家の往復の中で、固まってしまう人間関係。だからこそ、親や先生のタテの関係でも、友達のヨコの関係でもない、利害関係の少ない地域の大人というナナメの関係の大人との関わりが必要です。地域の大人だからこそ言えることがあり、その何でも言える関係の人が1人でもいることは、特に思春期の子どもたちにとっては大きな心の支えになります。
「対話」を諦めない
今回はソーシャルディスタンスを意識したリアルな対話の場を作りましたが、もちろんビデオ通話等のオンラインでの開催も一つの手段です。コロナ禍で人との関わりが確実に薄れてきていますが、「対話」を諦めてはなりません。出来ない理由を見つけてやめるのではなく、必要としている人がいる限り、出来る方法を見つけて、これからも「人との繋がりを紡ぐための対話」を届けていきたいと思います。
例外なくイベントの中止が続く今だからこそ、私たちのトライが、そしてこの記事が、多くの教育関係者や社会教育関係者にとって、コロナと付き合いながら活動していく1つのきっかけや励みになることを切に願っております。
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