春の日に

風の強い晴れの日に桜並木を歩いていた。独りで、ゆっくり、音楽が流れていないのにイヤホンは耳に付いている。さっきプレイリストが終了したみたい。黄色いパーカーを着てポケットに手を突っ込んで歩く。晴れているのに風が冷たい。僕には休日も平日も無い。

頭の中にいつもねっとりと纏わり付いているものとずっと喋っていた。不安は彼が連れてくる。僕は純粋で、彼に唆されるとすっかり言いなりになってしまう。物心ついた当初から彼とよく喋っていた気がする。空に飛んでいった風船の行先を案じて泣いていた。だから、すぐに飛んでいってしまうほど柔な存在は苦手。僕が側についていなきゃと思う。フラフラと歩道と車道を遊びながら歩いている児童を見ると、心配になり僕がついていなきゃと思う。

ポケットの中には数片の桜の花弁が入っていた。手をポケットから出した時に分かった。彼が話しかけてくる。「血だね。」

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