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「急減圧」による航空事故の一覧

エベレストの山頂よりも遥かに高い高度10000mを飛んでいる飛行機の中で、私達がふつうに呼吸できるのは「与圧装置」によって気圧が保たれているからです。

飛行機はエンジン内部で生成された圧縮空気の一部の抽出・調整し、機内へ流入させています。そのままではパンクしてしまうので、一部の空気をアウトフロー・バルブによって外へ逃がしています。このバルブの開度を調整することで機内の気圧を保っています。

ところが過去に様々な理由により飛行機が損傷し、空気が機外へ流出して機内の気圧が減少してしまう「減圧」というトラブルが発生しました。今回はそんな減圧トラブルの中でも、機体が大きく破損してしまうことによって起こる爆発的な減圧「急減圧」が発生した事故をまとめました。

四川航空8633便事故

2018年5月14日
エアバスA319
減圧の原因:操縦室の窓の破壊

重慶江北国際空港を離陸した8633便は離陸から約40分後、高度30000ftにて副操縦士側のコックピットの窓が破壊し、急減圧が発生しました。

減圧によってコックピット内のコントロール・パネルが損傷。副操縦士の上半身が吸い出されるものの、シートベルトにしていたことで外へ放り出されることはありませんでした。

8633便は緊急事態発生を通報。パネルの損傷でオートパイロットが使用できなかったため、機長の手動操縦によって事故発生から約30分後に成都双流国際空港に緊急着陸しました。

吸い出されかけた副操縦士とCA1名が負傷するも、乗客乗員全員が生還しました。

サウスウエスト航空1380便事故

2018年4月14日
ボーイング737-700
減圧の原因:爆発したエンジンの破片が窓を破壊

サウスウエスト航空1380便はラガーディア空港を離陸して20分後、上昇中に高度32000ft付近で左エンジンが爆発。飛散した部品が客室の左側14列目の窓を破壊し、急減圧が発生しました。

機長は直ちに緊急降下を開始。そのままフィラデルフィア空港への進入を開始し、事故発生から15分後に緊急着陸しました。

この事故により、窓が破壊された14列目の窓側席に座っていた女性が上半身が外に吸い出されたことによる低酸素症で死亡。7名が負傷しました。

アロハ航空243便事故

1988年4月28日
ボーイング737-200
減圧の原因:金属疲労による外壁の破壊

アロハ航空243便はカフルイ空港を離陸後、高度24000ftにて機体の金属疲労によって機体前方の外壁が5.6mに渡って吹き飛び、急減圧が発生しました。

機体前方の通路にいたチーフパーサーが減圧によって機外へ吸い出されてしまい、1名のCAが破片が命中し負傷しました。乗客は全員シートベルトを着用していたため、吸い出されることはありませんでした。

機長は直ちに緊急降下を実施。左エンジンのコントロールに問題があったもののカフルイ空港への緊急着陸に成功しました。

外に吸い出されたチーフパーサーは遺体が見つからず死亡と認定されましたが、重大な損傷だったにも関わらず他の乗客乗員はみな生還しました。

ブリティッシュ・エアウェイズ5390便事故

1990年6月10日
BAC1-11
減圧の原因:操縦室の窓の破壊

バーミンガム空港を離陸した5390便は離陸から約15分後、高度17400ftにてコックピットの機長席側の窓が吹き飛び、急減圧が発生しました。

ベルトを外していた機長が減圧によって操縦桿に引っかかった膝より先がすべて機外へ吸い出されました。コックピット・ドアも破壊され、客室から様々なものがコックピットに吹き込みました。

客室乗務員が機長を支え続ける中、副操縦士の操縦によって5390便はサウサンプトン空港へ向かい、異常発生から約20分後に緊急着陸に成功しました。

吸い出されていた機長は奇跡的に生存しており、機長を支え続けた客室乗務員も負傷していたものの、死者はおらず全員が生還しました。

トルコ航空981便事故

1974年3月3日
ダグラスDC-10
減圧の原因:貨物ドアの破損

オルリー国際空港を離陸した981便は離陸から10分後、高度12000ftにて構造的な欠陥のあった貨物ドアが破壊し、急減圧が発生しました。

急減圧によって日本人乗客6人が座席ごと機外へ吸い出され死亡。減圧によって床が陥没し、床下の操縦系統が損傷して操縦不能に陥りました。

そのまま機体を制御できず、異常発生から1分17秒後、時速796kmの速度で地表に激突。乗客乗員346名が全員死亡しました。

後述のアメリカン航空96便事故と本件は、DC10の構造上の欠陥が原因とされ、欠陥を認識していながら問題を解決せずに業績を優先し、多大な犠牲者を出したダグラス社は厳しい追及を受けました。

ナショナル航空27便事故

1973年11月3日
ダグラスDC-10
減圧の原因:爆発したエンジンの破片が窓を破壊

ナショナル航空27便は、39000ftを巡航中に右側の第3エンジンが爆発。飛散したファン・ブレードの破片が客室の窓を破壊し、急減圧が発生しました。

27便はアルバカーキ国際空港への緊急着陸しましたが、急減圧が発生した開口部に座っていた乗客が機外へ吸いだされてしまい、死亡しました。

アメリカン航空96便事故

1972年6月12日
ダグラスDC-10
減圧の原因:貨物ドアの破損

アメリカン航空96便はデトロイト空港を離陸し巡航高度へ向けて上昇中、構造的な欠陥のあった貨物ドアが破壊し、急減圧が発生しました。

客室は一部の床が減圧によって陥没しましたが、乗客乗員は無事であり、CAは直ちに緊急着陸の準備に入りました。

96便は尾翼の第2エンジンのコントロールが出来ず、減圧による損傷で姿勢制御が困難な状態に陥るものの、第1・3エンジンやコントロール可能な動翼を駆使しながらデトロイト空港へ引き返し、緊急着陸に成功しました。

直ちに緊急脱出が開始され、困難な状況でありながらも乗客乗員67名が全員生還しました。

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