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いろはな防災 ~イニシエ少女の災活~ 第07話

《あらすじ 45文字》
いつもは登校ギリギリの桜が朝一来ています。
ゆうべ何かあったらしい。
慌てて声が上ずってます。

・神様のイロハ その2

「花ちゃん、聞いて!!!!」
 いつもは始業ギリギリに登校する桜がめずらしく、私より早く来ていて大興奮状態!
 朝の静寂、切り裂いた。

「どした、慌てて」
 私の問いかけも耳に入らない様子だ。
「ゆうべ寝てたらスゴイことが起きたの。
 あのね、あのね^^;」

「まあ、落ち着いて、深呼吸してからゆっくり話そう、ね」
 そのコトバが聞こえたのか、深呼吸を行い、少し落ち着いてから話を再開。

「あのね、花ちゃん、昨夜寝てたらスゴイことが起こったの」
 リフレイン、さっき聞いたけど、そのまま続けてもらいます。

 ……ここからは桜ちゃんの回想です。
「むにゃ、むにゃ、もう食べられないよ〜」
 マンガの様な寝言をもらします。
 ヨダレを垂らしながら夢見心地の桜ちゃん。
 そんな少女に、

「これこれ、娘よ、目を覚ますがよい〜」
 その声に起きた桜は眠たい目をこすりながら、辺りを見回すと、
「うしー!!」
 眼の前に なんと! 牛が立っていた。
 夢か幻、悪魔か天使か?
 ありえないその存在、桜は一気に目が覚めた。

「はわわ、晩ごはんにうしさん食べて、ごめんなさい〜
 焼き肉だったから、お腹はちきれるまで食べました〜
 さっきも夢で反芻はんすうしてました〜
 命ばかりはお助けください〜」

 昨日の晩ごはんを唱えながら、現れた牛に向かって、土下座して頭の上で手のひらを合わせ、必死、必死に命乞い。

「焼き肉は美味かったかえ〜」
 牛の口から謎の質問。
「はい、チョー美味しかったです
 土佐あかうし だったから、赤身が多くて噛み応え抜群で、とってもジューシーでした
 明日も朝から食べたいと思ってます。
 私は朝から焼き肉行けるタイプです〜」
 命乞いポーズを続けながら、心はチョット焼き肉気分。

「なら良かったぞえ〜
 若いものはイッパイ食べて、運動するのが仕事ぞえ〜」
 おばあちゃん家で言われたセリフが牛頭天王の口から飛び出した。

「はい、分かりました。
 明日、焼き肉大王の食べ放題行ってきます、自転車で!」
 牛に向かって謎の敬礼、その後、桜はハッとして。

「えーと、牛さん食べた事を怒りに来たんじゃないの?」
 恐る恐る顔を上げ、眼の前に立っている牛に問いかける。

「わしは格好は牛だが牛ではないぞえ〜
 牛頭天王ごずてんのうぞえ〜」
「ご、ず、て……
 あー思い出した、昨日花ちゃんとお参りした神様だー」

「思い出したか少女よ。
 昨日そちらが参拝した、天王神社の守り神ぞえ〜」

「その、牛頭天王さまがなぜ現れたのですか?」

「最近はわらわを拝む人が少なくなって、神通力が落ちてきた所に、おぬしらが拝んでくれて力が少し戻ったぞえ〜」

「よかった、神様の力になれて」
 顔に笑みが戻り、ニコッとする。

「そちらの願い事が人々を守る防災に対することだったのが気に入ったぞえ〜」
「いえいえ、その人々の中に私も入っているから〜」
 桜は少し照れてます。

「そうゆう奥ゆかしいトコロは神の好物ぞえ〜」
「で、牛頭天王さまは何で現れたのですか?」
 当然の問に、牛頭天王は
「うむ、お主たちの願いが気に入ったから、守護してやろうと思って現れたぞえ〜」

 思いがけない牛頭天王のコトバ
 ビックリしながら両手を広げて正座でハハー
「ははー、心強いお言葉、ありがとうございますぞえ〜」
 コトバが少し移っている。

「うむ、夜も遅いからしっかり寝て、遅刻はしないようにぞえ〜」
 消えようとした神に向かって、
「あの〜牛頭天王さま、お供えはやっぱり牧草とかですか?」

「牛じゃないと言ってるぞえ〜
 どうしてもならお神酒みきぞえ〜」
 そう言うと牛頭天王は空に消えていった。

「……って事があったの」
 ゆうべの事を一生懸命語ります。

「まあ、まあ、落ち着いて。
 実は私の夢にも牛頭天王さま出てきて、おんなじ事言われたの」
 そう語る花ちゃんに桜は おおー。

「じゃあ、花ちゃんも守護され仲間だね」
 嬉しそうに笑います。
「神様じきじきに守護されるなんて前代未聞、
 名刺に書いても良いかな?」
 テンションMAXの桜はチョット暴走してます。

「それはやめた方がいいと思うな、イタイ人だと思われる」
「そっか、まあ名刺持ってないし」
 あっけらかんと言い放つ。
「それと、牛頭天王さまが出た後、トイレに起きて時計見たら、なんと午前2時だったの。
 丑の刻は鬼が出入りする時間でしょ、神様も幽霊も出る時間は同じなのかな?」
 変なことに詳しいな〜

 偶然だよって言いかけてコトバを飲み込んだ。
 根拠はない。
 ひょっとしたらそうかも知れない…
「そんな事もあるんじゃない」
 濁した返事をした所で始業のベルがなった。
 そして、その日の帰り道。

 いつものように仁淀川を眺めながら他愛もないことを話をしていた。
「そうそう花ちゃん」
 二人の会話が一段落した所で不意に桜の口から、いつもの問いかけ始まった。

「防災グッズって持ってるのよね?」
「ああ、こないだ見せたマスクセットや《スイ菓》ぐらいだけどね」
「あたし、何にも持ってないなー」
 空を見上げ、思案顔。

「私も何か持っておきたいの。
 防災の研究するんだし、それに被災しても長生きしたいし」
 心の内にある切なる望みの一端を見せる。
「いいと思うよ、でもセットを買うより自分で考えて作った方が愛着が出るし、なにより考える事が大切だとおもう。まあ、オトンとオカンの受け売りだけどね」
 そのコトバに大納得。

「よし決めた!今度の休みに100均いって、小桜流防災グッズ作っちゃおー」
「じゃあ、オトンとオカンにどんな物揃えたらいいか聞いとくよ」
 さっきまでの真剣な表情から一変、エイエイオー。
 手を繋いだ二人は
「ぼうさい!ぼうさい!」
 繋いだ手を振りながら夕日に照らされ帰っていった。

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