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いろはな防災 ~イニシエ少女の災活~ 第09話

《あらすじ 54文字》
お天気いいからお出かけしたい。
花ちゃん提案、仁淀川。
流行りにノッてるアクティビティ。
河原の冒険、どうなるの?

・デイキャンのイロハ

 いつもと同じ帰り道。
 仁淀川に沿って歩いてます。
 そろそろ葉桜も終わりかけ、春の終わりが匂います。

「ねえねえ、花ちゃんはGWどうするの?」
「う〜ん、予定はないな〜
 どこ行ってもイッパイだし、後半は天気が崩れるみたいだし。
 おまけにウチは混んでる所嫌いな一族だから、
 行っても本山もとやまの親戚くらいかな〜」

「ふーんそうなんだ、
 あたしの所はお父さんとお母さん、普段が激務だから、家でゴロゴロかな〜
 ゴハンも毎年フル弁当、お母さん冬眠しちゃう。」

 桜に聞いたところ、ご両親2馬力でお務めしてて、毎日夜も遅いらしい。

「ウチは自営業だから、いつでも家にいるし、オトンは料理が趣味だから、毎日違ったもの作ってくれるんだよね。

 そういった所は恵まれてるなー」
 桜の家庭の状態聞いて閃いた。

「ねえねえ、この前から考えていたんだけど、
 私たち二人でデイキャンしない?」
「デイ?キャン?」
 花ちゃんの提案に不思議顔。

「そう、泊まらずにお昼だけのキャンプ。
 ゴハン炊いて、おかず作って、お菓子食べて夕方になったら帰るの。
 この前はオトンが全部やってくれたけど、今度は全部二人でやるの」

「でも、その場所までどうやって行くの?」
「そこは積んでいってもらうよ。
 素人は荷物が多くなりがちってオトンが言ってた。
 きっとオトンも横でデイキャンするよ。
 外でゴハン炊くの大好きだから。
 オカンはきっとビール飲んで昼寝すると思う、きっとね」

「楽しそう♡
 ゴハン炊いた事ないからチャレンジだ!」
 花ちゃんの提案に大賛成。

「じゃあ、オトンとオカンに聞いて、決まり次第連絡するよ」
「うん、待ってるね」

 桜は花ちゃんの提案聞いて嬉しそう。
 今年のGWはいつもと違う予感がしてます。
 花ちゃんはオトンと相談し、決まったコトをライソします。

 場所は仁淀川沿いのキャンプ場、トイレと水道あって駐車場も近い。
 朝8時半集合でスーパー行ってお買い物。
 それまでに料理のレシピを考える、二人に課せられたミッションです。

「花ちゃんレシピどうする?」
「オトンが言うには最初は焼くだけとか煮るだけとかの方がいいって、複雑な工程のレシピは最悪完成しないって」

「じゃあ、ソーセージを焼くくらいしかできないなー」
 花ちゃんピコーン!

「じゃあ、カマンベールとソーセージのアヒージョはどう?
 スキレットにチーズとソーセージ、あとベーコンもいいな。
 炒めてからオリーブオイル入れてアヒっちゃおう!」

「スキレット?」
「鉄のフライパンのこと。
 料理好きのオトンが持ってない理由ないからね。」
 そんな提案に桜は想像。

「いいね、美味しそう。それに決定。
 作るの簡単そうな上、名前もオシャレ、映そう〜」
「それだけじゃ寂しいから、長ネギに豚バラ巻いて直火で炙るのもイイね。
 山賊気分でかじっちゃお」
「それも決定、大賛成」
 ホクホク顔の桜ちゃん、さっそくお腹が減ってきた。

「あとは、お菓子と飲み物ね。オトンとオカンにおねだりしとく」
「オカンはそれにビールでしょ」
 そのコトバ聞いて、わっはっは。

「あと、桜さま、その日ウチに泊まらない?
 お父さんとお母さん、桜が居ないと少しでも休めるじゃない。」

「いいの?嬉しい、泊まらせて」
「部屋も桜仕様にしとくって、オトンが言ってた」
「お礼言ってて、花ちゃん家は第二の故郷だよ」
 歓喜の桜、嬉しい花ちゃん、二人のライソはまだまだ続きます。

 デイキャン当日待ち合わせ。
 桜が合流、サネアクで買い物してからキャンプ場。
 ちょっと古めのキャンプ場、その分料金500円。
 コスパに優れた遊び場です。

「今日はちょっと曇り空だね。」
 花ちゃんに向かって残念顔。

「いやいや、この位がちょうどだよ。
 晴天だと暑いからタープ張ったりメンドウくさい。
 でも、日焼け止めは塗っとこう、スキンケアは若いうちから」
 そう言うと、二人はぬりぬり、ベッタベタ。

「お米は家で洗って吸水させてるから、後は炊くだけになってる」
「吸水させるとどんなイイ事があるの?」
 桜の疑問に答えます。

「水がお米の中まで浸透してふっくら炊けるの。
 それに野外だと焦げにくくなる。
 お水も多めに入れると尚良しだね。
 炊飯器より蒸気が逃げるから。
 硬いお米は食べられないけど、柔らかいのは食べれるじゃん」
 花ちゃんの答えは100点です。
 今の時間は10時半、チョット早いが炊き始め。

「最初は直火は調整難しいから、最初はカセットコンロがイイって」
 メスティンにお米を移して、お水の量を調整します。
 花ちゃんはカバンの中からゴソゴソと何やら紙を引き出します。

「オトンから野外炊飯虎の巻を貰ったんだ」
 1.お米はじっくり吸水する事
 2.炊飯時お水は多めに入れる事
 3.沸騰するまでは蓋を開けかき混ぜる事
 4.沸騰したら蓋をしてとろ火にする事
 5.途中不安なら蓋を開けて確認する事
 6.炊きあがりはもう少し位の所で止める事、
   焦げ付くと片付け大変
 オトンからのメモを仰々しく読み上げます。

「へー蓋を開けていてもイイんだ。
 でも、赤子泣いても蓋取るなって言うよね?」
 昭和からの言い伝えに疑問を持ちます。

「うん、今のお米は品種改良されて、昔のお米より吸水がイイんだって。」
 花ちゃんの回答に桜は納得。

「じゃあ、炊いてみようか。
 文章じゃ伝えきれないから、炊飯開始したらオトンに呼んでって言われてる」

「炊飯器なら、お水はお米の上数ミリでイイらしいけど、メスティンは中蓋無くて蒸発量が多いから1センチ弱くらいでやろうよ」
「このくらいかな?」
 初めての野外炊飯、桜は恐る恐る水を入れます。

「だいたいでイイよ。さっきも言ったけど柔らかいゴハンは食べれるから」
 気持ち多めのお水を入れて、カセットコンロで沸かします。

「ねえ、花ちゃん、何でかき混ぜるの?」
「うん、メスティンは薄いから焦げ付きやすいんだって」
 グルグル、グルグル、割り箸使ってかき混ぜます。

「湧いてきた、蓋をして、とろ火にして、石をのせって」
「石はなんで乗せるの?」
「蓋は軽いから吹きこぼれるのを防ぐためだよ。
 じゃあ、オトン呼んでくるね」

 花ちゃんはチョット離れた所のオトンを呼びに。
 すぐにオトンを連れて帰ってきた。

「花ちゃん大変、湯気がイッパイ出てる。
 爆発する〜」
 大慌てな桜を見て、花ちゃんとオトンは大爆笑。

「大丈夫だよ〜
 蒸気が出るって事はお水がまだイッパイ残ってるって事」
 二人の説明にホットした。

「爆発させたら、炊飯テロを起こした犯人としてFBIに追われちゃうかと思いましたよ〜」
 おちゃらけ答えで、さらに大笑い。

「蒸気が出なくなったら、蓋を開けてお米の状態を見て」
 オトンのコトバに耐熱手袋した桜が確認。
「なんか、まだ柔らかそう」
「いや、蒸らしタイムがあるから、ここでは90点位がちょうどだよ」
「じゃあ、オトン今何点なの?」
「91点かな?」

 そのコトバに大慌て炊飯中止。
「はわわ、後どうしたらイイの?」
 テンパリ桜を見た花ちゃんが解説します。
「蓋して、逆さにして、底をポンポン叩いて」
 その通りの行動しながら、
「何で叩くの?」
「炊けたゴハンの隙間を開けて、ふっくらさせてるの」
 ふーんな桜に花ちゃんコトバ。

「これで完成、桜ちゃん炊飯初体験おめでとう」
 二人で桜にパチパチパチ、本人、照れながらもガッツポーズ。

「次はおかずに取り掛かろう。おー」
 気勢を上げた二人はアヒージョとネギ豚バラの準備を開始。
 アヒージョの準備は簡単なので、ネギ豚バラの準備から。

「桜ちゃん見て見て、この長ネギ3本で100円だったんだよ」
 買い物しない桜でも3本100円!安さに驚嘆。

「近所の産直市で売ってたの、山本さんの野菜は安いね〜」
 生産者さんとも顔見知り、おばちゃんモードで話します。
 長ネギに豚バラくるくる巻いて、塩コショウをたっぷりと。

 お次の料理はアヒージョです。
 熱々にしたスキレット、チーズとソーセージ、ブロックベーコン乗せまして、岩塩入れたらオリーブオイル、地獄の様に熱します。
「豚バラはオトンの焚き火台でやらせてもらおう」

 お隣の両親ゾーンに移動です。
 そんなこんなで完成します。

 ゴハンを盛るのはシエラカップ、おしゃれゴハンが完成です。
「出来たね花ちゃん、こうして見るとばえメシだね〜」
 スマホで撮影した桜はウインスタグラムにアップロード。

「じゃあ、食べよう、いただきます。」
 もぐもぐ、むしゃむしゃ、食べ尽くす、高校1年生の胃袋は無尽蔵。
 食欲いつもの2割増、綺麗さっぱり食べました。

「ごちそうさま、もう食べれない」
「キレイに食べたわね。
 えっ、ゴハン3合あったのに全部食べたの!!」
 ほろ酔いオカンが驚愕します。

「まあいいわ。コーヒーのむ?」
 オカンの申し出に二人の返事は
「いただきまーす」

 コーヒー飲んでまったりタイム。
「茜ちゃんは今晩とまるのよね?」
 はいと答える腹パンパンの桜ちゃん。

「うれしいわ、もううちの娘認定しちゃう」
 酔っているから、饒舌です。
「二人のお部屋も仕上げてあるから」
 さも自分がしたような口ぶりですが、全部作業はオトンです。

「ねえ、茜ちゃんのご両親、仕事が忙しいのよね?
 だったら、ウチは構わないからいつでも泊まりにおいでなさい」
 意外なコトバに喜ぶ桜。

「お母さんまだ若いのよね?」
「はい、たしか30後半位だったような。」
「じゃあ、ウチにいっぱい泊まりに来たら、弟か妹できるかもね」
 オカンは桜に向かってウインクする。
 すぐには理解してない桜に向かって、

「お父さんとお母さんはラブラブでしょ♡」
 オカンのコトバを理解して、いやーんと体をくねくねさせます。
 花ちゃん、横でグロッキー、さすがにお米を食べすぎた。

 静かな時間は過ぎるの早い。
 そろそろ夕方、片付けて、来たときよりもキレイにします。
 オトンのお家で一日終わり。

 花ちゃんのお部屋にベット2台、横にくっつけ、お話出来ます。
 大喜びの桜ちゃん、双子の姉妹ができた気分。

「花ちゃん、ありがとう。こんなにしてくれて」
「いいよ、あたしも嬉しい、お姉ちゃん居なくなってから、少し寂しかったけど、桜いるとスゴく楽しい」
 二人は見合ってニコニコします。

「ニャー」
 見計らったようによつばが登場。
「ごめん、ごめん、寂しいなんて言って。
 よつばが居ると寂しくないよ」
 そのコトバを聞いてベットにジャンプ。
 布団をムギュムギュ寝る準備。
 二人の真ん中に陣取って、今夜は三人で夢をみます。

 桜の夢は花ちゃんと二人にベビーカー、生まれたばかりの赤ちゃんとゆっくり散歩をしています。
 季節は春から初夏に向かい、暖かな風の午後でした。

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