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いろはな防災 ~イニシエ少女の災活~ 第06話

《あらすじ 57文字》
春のうららは眠たいデス。
仁淀レポートの担当教員決まります。
花ちゃんが下校途中でサプライズ、桜の驚く顔が見ものです。

・神様のイロハ その1

 うう、やっと一日が終わる。
 春の午後はお腹いっぱいで、睡魔との戦いが苛烈だ。
 今日もなんとか眠らずに済んだ。
 仁淀学園は生活態度には厳しいからな〜

 そんな事を思いながら下校前のHRが終わりかけ、担任の小林先生から

「あと、宮花と小桜、HRが終わったら波月はつき先生の所に出頭するように」

 ふざけた感じで、お声が掛かり。

 波月はつき先生は2年生の数学担当で、会話をしたことのない先生の一人。

 HRが終わるやいなや、桜が私の席に来て、
「花ちゃん何だろうね。知らない先生だからドキドキするよ〜
 まあ、怒られることは無いとは思うけど……」
 そんな桜のニコニコした心配顔をよそに、心あたりは無い事もない。

「まあ、行ってみればわかるでしょ」
 そう言いながら、二人して職員室へと向かった。

 波月先生は「仁淀学園の最終兵器」と二つ名で呼ばれている。
 その理由は会えばわかるらしい。

 職員室に入り、波月先生の机に近づく。
 先生の名前は机にポールで名札が立っているので、一目瞭然。
 スーパーみたい。


波月はつき先生、1年A組宮花と小桜参りました。」
 大きく、はっきりとした声で問いかけると、
 机に向かっていた先生が振り返った。

 そこにはアフリカ系日本人、名前は「波月はつきリサリサ」
 ちっちゃい顔にスラッとした四肢、シェイプされた体、編み込まれたアスタイル、アフリカ系のいいとこ取りに、混ざった温和な日本人の表情。
 私達の考えるアフリカのお姫様な感じ。

 田舎は白人さんすら居ないから、宇宙人を見た感じがする。
 リサリサ先生の青い目で見据えられたら魂抜かれちゃう。
「宮花さん、小桜さん、自由研究の担当、私になったから」
 思った通り、そうだろうとは思ってました。

「テーマは防災についてらしいけど、私もテレビで見るくらいしか知らないの」
 私たちを含め、被災したことが無い人はそうでしょうね。
「はい、私たちも同じです。」
 桜が口火を切った。

「でも、南海トラフ地震は必ず来るって言われてるし、
 私達も死にたくないから少しでも知識をつけて被災生活を生き抜けれたらって思ってます」

「そうね〜私も独身で死にたくないし…」
 リサリサ先生も物憂げな表情で少し考え、
「分かったわ、一緒に勉強しましょう。
 私も防災詳しくないの。
 両親は東京にいるから、現在起きている群発地震やくると言われている首都直下型地震も心配だし。

 そう考えたら、とんだ所に首都作ってくれたわね、家康め!」
 なんでだろう、美貌のリサリサ先生の口から発せられると、うらみごともアイラブユーに聞こえる。
 そんなこと考えると顔を赤くなってしまう。

「あら、宮花さん顔が赤いわよ、熱でもあるのかしら」
「いえ、職員室が少し暑いような、そうでも無いような…」
 とっさに、適当な返事をしてしまった。

 リサリサ先生は特に気にした感じもなく、少し考えて
「いいわ、いっしょに勉強させてくれない?
 高知に住むなら防災の知識は必須だし、教員だから生徒の安全を守る必要もあるしね。
 なにしろ長生きして孫を甘やかせたいしね♡」
 その言葉を聞くと桜が嬉しそうな表情で、

「じゃあ、仁淀レポートは宮花&小桜Withリサリサ先生だね」
 そう言うと、右手を出してハイタッチボーズ。
 するとリサリサ先生もそれにめがけてハイタッチ。
 ほころぶ笑顔が夕日に映る。

 自由研究を進めるにあたっての打ち合わせを少しして、桜と一緒に下校となりました。

 いつものように仁淀川の堤防をいっしょに
 帰っていると、

「ねえねえ、花ちゃん防災グッズって持ってる?」
 突然の問いかけに、
「えーと、マスクとかはカバンに入れてるし、
 お水とお菓子はいつも持ってる。
「そうなんだ、私何も持ってないな〜」

「ウチのオカンが提唱の、お水とお菓子で《スイ菓》を持ってる。
 それが持ってたら一晩持つという理由から」
 感嘆の表情をした桜を見ながら続ける。

「お菓子は普段買えない高いのも《スイ菓》用なら買えるの」
「いいな、わたしも高いお菓子食べたい」
 桜の答えはいつも無邪気。

「仁淀学園は教科書ダブレットだからカバン軽いし、《スイ菓》と水筒持ってるからお水は最大1リットルある。
 水筒も少なくなったら学校で入れてる」

「そういや、花ちゃん水飲み場の機械から入れてるの見た!」
「お水は命の源だから、いつでもたっぷり持ってるよ」
 桜が少し考えて、

「アタシも持とう、《スイ菓》もマスクも!
 花ちゃん何を持ったら良いか教えて」
 手を合わせ、アタシを拝む桜を見て、
「おぬしは愛いやつじゃのう」
 同時に髪の毛を両手でワシャワシャ。
「やめてー、お殿様!」
 ほんとにこちらの心の組み方上手、
 そのあと顔を見合わせて大笑い、
 学校帰りは毎日大笑いしてるな〜
 桜といっしょだと楽しいな〜

「あっ、そうそう」
 花ちゃん、思い出したかのように桜に向かって、
「こないだウチで防災の神様の話したよね。」
「うん、ないの神、ないちゃん!」

「桜はないちゃんって呼んでるの!かわいい♡」
「今朝も地震がおきませんようにって拝んできた。
 お母さんも宝くじが当たりますようにって拝んでた」
「宝くじは違うんじゃないかな?」
 花ちゃん、少し呆れ顔。

「で、防災の神様がどうしたの?」
「あの後もう少し調べてたら他にも神様発見ー」
 ほーといった顔をした桜に向かって話を続け、

「牛頭天王といって、京都の八坂神社に祀られてるの。
 平安時代に京都で疫病が流行った時に、兵庫県の広峯神社からもらってきた神様だって」
「疫病の神様だと地震とは関係無いんじゃ…」
「桜はそう言うと思ったよ」

「その頃、地震も頻発していて、それも同時に封じる為に一緒に祀ったんじゃないっていうのが最近の研究の結果だそうだ」
「おー防災の神様イッパイ発見ー」
 桜はチョー驚き顔で嬉しそう。
「また、スサノオノミコトとも同一視されているから防災の神様っていっても違うことはないと思うよ。

 スサノオノミコトって覚えてる?」
「たしか、琴で地震を起こす神様だよね。」
 一休さんみたいに、指で頭クリクリしながら思い出しのポーズ。
「そうだよ、えらいえらい」
 頭をナデナデ、嬉しそう。
 ちょうど赤信号で帰宅ストップ。

「そうそう、これが牛頭天王」
 花ちゃん、タブレットを取り出し、画像を見せた。
「うしー!!」
 牛頭天王の姿を見た桜は大びっくり。
「やったー、思った通りの反応」
 信号が青になり帰宅再開。
「えっ、でも他の神様って人間の格好してるじゃない。なんで牛さんなの?」
 当然の疑問だね。

「それはねインドから密教伝来で入って来た神様らしい、調べたら膨大な量なので詳しくはスルーね」
「へーこんな神様いるんだー知らなかった」
 なっとく顔の桜ちゃん。

「神様だったらどっかに祀られているの?
 行けたらお参りいきたいな」
 桜の言葉に花ちゃん、しめしめ。
 釣り針に食いついてきたな。
 いつも曲がる交差点に来た所、

「ちょっとだけ、遠回りしない?」
「いいけどなんで?」
 桜の問に答えます。
「ひ、み、つ」
「えーなになに、おしえてよ?」
 反応も思った通り。

「さっきの祀られている所の話だけど、
 天王神社って言う神社があって、そこに祀られているよ」
「初めて聞いた、牛さんだから牧場のちかくだったりして」
 今のは狙いボケだな、その後だらだら少し歩くと、

「桜ちゃん、ストップです」
 急な制止にビックリしたしてます。
「なあに、花ちゃん急に」
 訝しげな顔をした桜ちゃん。

「少し上むいて、右を見て」
 言われた通りの仕草をトレース。
「じゃじゃーん、ここが天王神社です」
「えー、こんな近くにあったんだ」
 驚き顔で固まっている桜に向かって、

「牛頭天王調べてたら発見しちゃった。
 ゴリゴリマップだと高知県にはここだけでーす。」
 大きなジェスチャーで桜にプレゼン、どうだ!
「さっきからのお話は大いなるフリだったの?」
「えへへ、ビックリさせようと思って」
 鼻の下を人差し指でこする昭和ムーブを披露して、

「西バイパス作る時に整備されたからキレイになって公園みたいだよ、実は登校まえにロケハンしてきた」
「えーずるい、アタシも一緒に行きたかった」
 ちょっと怒った桜さん。
「ごめん、ごめん、でも今から一緒にお参りしよう」
 花ちゃんのコトバで機嫌も治り、一緒にお参り開始です。

 鳥居の前で一礼し、参道の真ん中は神様の道なので、人は両端通ります。
 拝殿のまえで、一礼して、お賽銭を静かに投げ入れ、鈴を鳴らして二礼二拍手。
 お祈りしてから一礼します。
「花ちゃん何お願いしたの?」
「地震が起きても死にませんようにと…」
「と…なに?」
 素朴な質問に
「桜とずっと友達でいれますように…だよ」
 花ちゃん、恥ずかしそうに続けます。
「実はあたしも そうなんだ♡」
 二人は見つめ合ってニッコニコ。

 後ろに回り込んだら貫禄のある建物。
「こっちが本殿なんだ」
「ほん、でん?」
 疑問を持ってる桜ちゃん。
「知らないの?
 さっき拝んだ所が拝殿といって、神官さんが祭典を行ったり、参拝者が拝んだりする建物で、本殿は神様がいる建物のコト。
 拝殿は人の為の建物で、本殿は神様の為の建物ってトコロかな」
「へー、花ちゃん物知り、スゴイスゴイ!」

「小さい時から色んな神社行ってるから、自然と覚えちゃった」
 本心から人を褒めれる桜えらいな〜、見習わなくちゃな〜
 横から本殿に一礼し、そこから左を見るとバイパス沿いの町並みを一望できる。

「バイパスの降り口あるから、仁淀川みえないねー」
 そう言いながら桜は、夕日が眩しいらしく、手で目を少し隠している。 その姿を後ろから見ると、ふわふわの髪の毛が夕日に焼かれてキラキラしている。
 まるで金髪みたい、キレイだな〜。 少しの間、桜と花ちゃん、手をつないで仁淀川に沈む夕日を見つめてました。

 続く…

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