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2020年5月の記事一覧

JOY (豆の木 No.24を読む)

JOY (豆の木 No.24を読む)

巷間新型コロナ肺炎禍関連の話題ばかり取り沙汰されている。先日政府は緊急事態宣言を解除し、経済を回すため束の間の平穏を装おうとしている。しかし果たしてぼくらは来たるべき第二波、第三波を堪えるだけの力を、気力を残しているだろうか?そんなモヤモヤを抱えるぼくの元に「豆の木」がやってきた。「よお、久しぶり。」と言われたような気がした。俳人は句を詠まねば、句会に参加しなければ弱ってしまう回遊魚である。そんな

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「ほてるのブルース」(おおさわほてる句集「気配」を読む)

「ほてるのブルース」(おおさわほてる句集「気配」を読む)

新型コロナ肺炎で世界が沈殿する直前、ぼくは京都の土を踏んでいた。句友かつじの誘いで船団の会京都駅前句会に参加するためだ。久しぶりの京都駅で待っていたのはかつじとおおさわほてるその人であった。挨拶もそこそこに近くの王将で軽く乾杯して自己紹介する。
かつじは「こいつアパートで亀と暮らしてんねん。」と教えてくれる。ほてるさんは日野草城の名句で知られる京都の有名ホテルに勤めるホテルマンだ。風船アートもやっ

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「路地」(「アメリカ・アメリカ」中上健次を読む)

「路地」(「アメリカ・アメリカ」中上健次を読む)

先日ある画像に目が釘付けとなった。そこには作家中上健次とボブ・マーリーがフレンドリーな雰囲気で並んでいる。見れば80年の週刊誌の対談企画で撮ったものらしい。にこやかな健次に比べ、レンズを指差し何かを主張しようとするマーリー。彼らの微妙な温度差に何時迄も見飽きない画像であった。この画像をコメント付きでタイムラインにアップすると奇特な方からコメントをいただき、健次の「アメリカ・アメリカ」にこの時の対談

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「線路」(つくえの部屋 5号を読む)

「線路」(つくえの部屋 5号を読む)

およそ歴史はゆく先の知れぬ線路に似ている。俳句もその例に漏れず日々生まれる佳句、秀句、駄句や凡句、問題句が俳句史という線路を通り、遠く芭蕉の時代から連綿と未来へと続いているのだ。この線路を支える枕木や砂利が結社であり俳人なのだろう。こう書くと気分を害されるかもしれないがしかし、線路を支える枕木や砂利の質こそが重要である事は鉄道オタクや専門家の長口上を聞くまでもない。俳句史は蕉門や広大なるホトトギス

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「光明」(オルガン21号を読む)

「光明」(オルガン21号を読む)

「光明」 (オルガン21号を読む)

ゴールデンウィークが明け、初夏の声を聞くようになっても依然コロナ肺炎禍の影響で息を潜める毎日である。何より長期に渡る経済活動の停滞は長く禍根を残す事となる事が予見され、溜息ばかりの毎日を過ごしている。そんな連休明けにオルガン21号が届いたのだ。なんと表紙が変わっている。面白いものでこれだけの事でも随分気分が変わるものだ。

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「ルドンの目」眞鍋呉夫

斧磨といふ名の在の野分かな 眞鍋呉夫

幻想世界を描く画家と呼ばれるオディロン・ルドン。代表作とも言える初期石板画集「夢の中で」のモノクロ世界には目玉の気球や一つ目の怪物、人の頭部を持つ隠花植物などが多く描かれているが、陰鬱な画風の中にもその表情にはどこかユーモアがあり、抑圧から来る潜在恐怖や否定の二語を感じさせない。幼少期に里子に出され思春期の入口まで寂しい田舎で内向を深めてゆくルドン。その

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「胎音」山中智恵子

青人草あまた殺してしづまりし天皇制の終を視なむ 山中智恵子『夢之記』

女流前衛歌人の一と呼ばれ、短歌の上で深い古典教養と幻想世界との混交に成功した山中智恵子をして「現代の巫女」と言うはけだし名言である。彼女の歌は難解なのではない。山中という綾のように精妙な修辞を持つ依代により蘇ったおそろしく古い胎音。それは軽々と分解解釈すべきものではない。ぼくらは山中智恵子の胎音に触れ、身の内に起こる音色に

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「漂泊」安東次男

春寒や棄民にとほき夕ごころ 安東次男「花筧後」

優れた文筆家であり、芭蕉研究の大家でもあった安東は「流火艸堂」という俳号を持つ。「流火」とは地上低く飛ぶ箒星を意味し、草庵に仰ぐ箒星に寒さの訪れを感じるという猿蓑、奥の細道などの漂白の境地を号にする程芭蕉をリスペクトしていたことは想像に難くない。若く「寒雷」に投句を始め楸邨に師事するも戦争で中断。戦後教育者となり詩作に励む。後に豊富な知見で芭蕉

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「ゴシック」塚本邦雄

こころざしくづれて廿歳雪の上を群靑の風過ぎし痕あり 塚本邦雄

絢爛華麗の中に剣呑を秘め、流麗かつ多作を誇る塚本邦雄は前衛短歌三雄の一とされ、晩年まで衰えぬ創作意欲は人を超えた歌神の存在を感じさせる程であった。ぼくは彼の歌格をゴシック建築の傑作ケルン大聖堂に重ねてしまう。強い直線と揺らがぬアーチで構成された歌体には荘厳なるクワイアのような美辞こそが相応しい。塚本の一首は無数の詠の累積から成るゴ

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「健次の國」森澄雄

西国の畦曼珠沙華曼珠沙華 森澄雄

このゴールデンウィークはコロナ肺炎という緊急事態に自宅で逼塞する毎日となっている。せっかくなので本棚の整理をしていると、手垢の染みて擦り切れた中上健次が驚くほど出てくるではないか。枯木灘、十九歳の地図、岬、蛇婬、、荒れた高校時代に読んでいた物でその後の苦しい時代にも辛うじて捨てずに生き残ったのだと焼けたページをめくりながら暫し感慨に耽っていた。それだけに数年

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「ふるさとの風」窪田空穂

つばくらめ飛ぶかと見れば消え去りて空あをあをとはるかなるかな 窪田空穂

生命の歓びあふれる皐月五月の使者であるつばくらめ(つばめ)。それは融通無碍なる風の形をして時にギラリと殺気を放つ鋒のように、時に細波に返る朝日の煌めきのように美しい。鉄幹の「明星」で研鑽するも鉄幹の壮と晶子の奔について行けず脱会。しかし自然主義的見地から来る静なる抒情は後進に多くを残したと言えよう。掲句に空穂はどこのつば

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「ショービンガーの形代」

「ショービンガーの形代」

水野孝彦著「世界のジュエリーアーティスト」。著者は娘が学んでいたヒコ・みづのジュエリーカレッジの学校長さんです。娘は現在アクセサリーデザイナーなんですが、この本は卒業後ぼくが強奪しました。なにより素晴らしいのは普段なかなかお目に掛かれない世界各国の著名なコンテンポラリージュエリーアーティストの作品が一堂に会していること。(掲載物の多くは水野さんの私的コレクションです。)
その内容の多くはぼくらの常

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「自在の人」津田清子

命綱たるみて海女の自在境 津田清子

津田清子の句は好きなものが多い。代表句とされる
虹二重神も恋愛したまへり
眞處女や西瓜を喰めば鋼の香
のどこか晶子を思わせる決然と「見たまま」の浅さではなく「感じたまま」の不格好な塊感がここにあるからだ。「写生とは」という、もううんざりするような御題目ではなく直感を掴み取る事は女性のほうが古来長けているのではないか?“Don’t think. feel!

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「よろこび」長塚節

人の家にさへづる雀ガラス戸の外に来て鳴け病むひとのために 長塚節

数多くの功績を残した正岡子規の後継者の一人長塚節。郷里で神経症の療養中に読んだ新聞「日本」の「歌詠みに与ふる書」に激しく共感し根岸子規庵に押し掛け入門。この時長塚は子規の殆どの作を誦じて見せたという。アララギ創刊にも関わり、子規の元で万葉研究に励み、その詠は次第に万葉調を帯びるようになって行く。子規の没後もアララギで万葉研究を

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